もはや学級崩壊 記者をクビになったライターが選ぶジャニーズ会見の問題点3選

 こんにちは、社長の藤田です。元新聞記者で、現在はフリーライターをしています。

 ジャニーズ事務所創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害が問題となっています。ジャニーズ事務所は、2023年9月7日、10月2日の2回にわたり会見を開きました。

 2回目の会見では、タレントのマネジメントを行う新会社の名前をファンクラブで公募するという、被害者の心情を無視するような計画を表明。「新しいアイドルユニットの名前を決めるんじゃないんだから…」と開いた口が塞がりませんでした。

 しかし、それ以上に開いた口が塞がらなかったのは、会見に出席したマスコミのレベルの低さです。的を射た質問は少なく、自分の主義主張を好き勝手に述べるなど、まるで学級崩壊の幼稚園の様相でした。

 私はかつて小さな地方新聞社で記者として働き、一応日本のジャーナリズムの末席を汚していました。しかしその末席ですらクビになり、最終的に会社を去る選択をしました。そんな自分にジャーナリズムを語る資格はないのは十分承知です。

 しかし今回のマスコミのレベルの低さは甚だ目に余りましたので、今回はあえてジャニーズ会見について考察したいと思います。質問の仕方や会見に臨む姿勢など3つの問題点を、記者経験を交えながら書いていきます。

問題点1 質問が長すぎる

 まず、マスコミ側の質問が長すぎます。自分の私見や思いをつらつら述べたり、ジャニーズ側の東山紀之、井ノ原快彦の両氏に説教を垂れたりと、質問が冗長になり何を聞きたいのかがさっぱり分かりませんでした。

 ネット上でも「記者の質問長すぎ」「何が言いたいのか分からない」といった声が多かったようです。

 私も地方紙の記者をしていて、知事や市長の会見にしばしば出席していました。そこで質問をぶつける際、つい長くしゃべってしまうと、上司や先輩から「もっと端的に話せ」「何が言いたいのかさっぱり分からん」と怒られたものでした。

 そもそも記者会見は、相手に課題や問題点をぶつけ、その課題や問題点にどのように対処していくのかを引き出すのが目的。自説を述べたりつるし上げをしたりするのが目的ではありません。

 課題や問題点を明確にし、納得のいく答えを引き出すためには、相手や視聴者に分かりやすい、簡潔明瞭な質問にする必要があります。

問題点2 質問に大局観がない

 何が聞きたいのか分からないダメ質問は論外として、そうでない“普通の”質問についても不十分と言わざるを得ません。

 質問は、被害者への補償問題や東山氏によるパワハラ疑惑に集中していました。言うまでもありませんが、被害者に対する補償はこの問題の肝となる部分であり、決して軽視できるものではありません。ただ、他にも聞かなければならない重要な事柄があったはずです。

 何せ今回の問題は、国連をも動かすほどの事態なのです。国連人権理事会の作業部会が日本で調査を行い、日本記者クラブで会見。「事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」という見解を示しました。

 企業、マスコミが放置したことで、世界の物笑いの種になっている深刻な事態ですが、私が聞いた限り世界からの冷ややかな視線について切り込んだ質問はありませんでした。補償や喜多川氏、東山氏の質問だけでなく、もっとマクロな視点からの質問もするべきだったと思います。

問題点3 ルールを守らない

 問題点の三つ目は、出席者がルールを守らなかった点です。

 とはいえ、記者会見において、記者は会見の主催者から提示されたルールを必ずしも守る必要はないと思っています。相手が会見を不十分なまま打ち切ろうとしたり、不誠実な回答に終始したりしているならば、ルールを破ってでも答えを引き出す必要があるでしょう。

 しかし今回は、ジャニーズ側も時間を十分取っていて、ある程度答えようとする姿勢が見えています。答えの中身にしても、一部東山氏にはぐらかすような姿勢が見えたものの、井ノ原氏の回答は誠実そのものだと思います。

 よって、主催者側から提示されたルールを守り、ある程度秩序を持った会見をすることが、視聴者や読者の利益につながるのです。

 ところが残念ながら、会見では秩序は保たれませんでした。「質問は1人1問」と言われているのに何度も質問をする、自分の主義主張を延々と述べる、指名されていないのに勝手に不規則にしゃべる。

 挙げ句の果てには、自分の意見に賛同するよう取材陣に挙手を促す記者もいました。自分をアイドルか何かと勘違いしているのではないでしょうか。

 冒頭に述べたとおり、まるで学級崩壊の幼稚園。情報を得る視聴者・読者が置き去りにされた会見でした。

まとめ

 会見の問題点、そして会見で取るべき姿勢についてまとめました。

まとめ

①質問が長すぎる→相手のため視聴者のため、簡潔に分かりやすく

②質問に大局観がない→ミクロな問題だけでなく、マクロな視点も持つ

③ルールを守らない→相手が不誠実の場合はルール破りもOK。それ以外は秩序を持って

 9月、10月の二つの会見とも、多くのテレビ局が生中継し、ネットで動画配信するメディアもありました。会見をそのままメディアで流すことは、多くの人たちが生の情報を受けることにつながり、意義のあることだと思います。

 しかし、こと今回の会見に関しては、生中継すること自体マイナスではないでしょうか。自己主張の激しい記者のカオスな独演会を垂れ流されては、視聴者もたまったものではありません。

 日本のマスコミやジャーナリズムは、中央、地方問わずまだまだ捨てたものではないと思います。新聞を読んでいてもテレビを見ていても、面白い記事や特集に出会える機会はしばしばあります。

 ただ、今回のジャニーズの問題に関しては、日本のマスコミに期待できることは何一つありません。3回目の会見があったとしても、中継は辞めるべきです。

 少なくとも、私が会見を見ることは、もうありません。

補足

 その後、ジャニーズ事務所側が質疑応答の際に特定の記者を指名しないようにする「NGリスト」があることが一部メディアで報道されました。真偽のほどはまだ分かりませんが、あってはならないことだと思います。取材する側もされる側も、程度が低いとしか言いようがありません。

新聞記者

Posted by かく企画