死の瀬戸際に立った友人の言葉
「かく企画」社員の仮面ライターです。私は社長と2人で、「学歴も会社も頼れない時代にどうやって生き延びるか」というテーマで文章を書いています。私たちの経験や取り組んでいることが、独立やフリーランスを目指す人の役に立つことを願ってブログをアップしています。
この前、30年以上ぶりに中学校の同級生2人に会いました。久しぶりに一緒に過ごす時間は、文字通りあっという間に過ぎました。長い時間、会うことがなかった友だちから教えてもらったことを今日はお話ししたいと思います。
独立していた キャプテンと補欠の友人
2人は野球部のチームメートでした。キャプテンでエースだった友人は飲食店を経営しています。補欠だった友人は大工をしています。ちなみに、私も補欠でした。
3人で久しぶりに会った少し前に同窓会がありました。SNSのつながりを頼りにみんなが声を掛け合い、卒業以来の大きな同窓会になったそうです。その日、私は残念ながら行けなかったのですが、大工の友だちと時々連絡をとっていたので、今回3人で「プチ同窓会」をすることが出来ました。
大工の友人と待ち合わせて、キャプテンが経営する店に行きました。すでにお客さんがいて、忙しそうだったので、2人でビールを飲みながら、店が空くのを待ちました。
ところが、次から次へとお客さんが来ます。キャプテンとは話が出来ません。得意料理を出してもらった後は外で少し時間をつぶし、閉店時間ごろに再び訪れました。彼が作る料理のおいしさにびっくりすると同時に、手際よく厨房で働く姿や、やわらかい接客に感心してしまいました。
大工の友人が携わった建物の写真も見せてもらいました。とても立派な建物。夏と冬の厳しい気温に耐えられる体と、正確な仕事の賜だと納得しました。
2人とも、50代目前とは思えないほど二の腕が太く、自分の貧弱なそれとは違いました。そんな2人ですが、少し前に大変な経験をしていました。
大病と大けがを負った2人
キャプテンは数年間に大病を患いました。死んでもおかしくないという状況に陥り、今もいつ再発するかわからない体なのです。かっこよくて体軀がしっかりしている彼がそんなことになるとは想像がつきません。
一時はかなりの期間、店を休業せざるを得ませんでした。さらに、新型コロナウイルスの影響は彼の店にもおそってきました。
大工の友人は、少し前に現場で転落して大けがをしていました。写真を見せられた時、一瞬で目を背けてしまいました。腕がバッサリと切り裂かれ、見たことがないような写真でした。傷痕はいまだに痛々しいのですが、彼は笑ってその箇所を見せました。
けがをした当時の話を聞いていると、ちょっと間違えたら命にもかかわる事故で、命が助かって本当に良かったと思いました。
すぐに金を稼げなかったとしても
話題は野球の話になりました。私は、記者だった頃に、高校野球の試合を取材した話をしました。
「歳をとってからは涙腺が緩くなって、負けたチームの選手に話を聞いていると、声が詰まってしまって困ったよ」
そう私が言うと、2人は深くうなずいていました。2人は高校でも野球を続けたので、グラウンドで球を追いかけたり、県予選で敗退したりした日を思いだしたのかもしれません。そして、私の近況を2人に話しました。
20年近く記者をしてきたけれど、不本意ながらその職ではなくなったこと。今は、不慣れなビジネス部門にいることを説明しました。2人はじっと話を聞いていました。年収が大幅に下がったことや、これからもっと厳しくなりそうなこと。家族と離れた生活。
大工の友人が言いました。
「大丈夫だよ。お前、行きたい大学にもちゃんと合格したじゃん」
彼の記憶違いで、希望の大学には不合格でした。
「あれ、そうだったけ?! まぁ、入社するのが難しい新聞社に入っただけですごいよ。いつもなんとかしてきてるから大丈夫、大丈夫」
根拠が希薄な励ましです。
帰りは、キャプテンが遅い時間にもかかわらず、車で送ってくれました。私は車中、この「かく企画」でやっていることや、小説を書いていることを話しました。
いろいろなものを失って、夢みたいなことをやっている場合ではないかもしれない。これでいいのかわからないけれど、やりたいことをやっている、と私は話しました。
キャプテンが言いました。
「俺が、もしこの前の病気で死んだとしたら、残された家族は大変かもしれないけれど、それは、家族のためにも良かったことなんだと思う。
コロナで店を閉じなければいけなくなったとしたら、それは、別の仕事をした方が俺のためだってことなんだと思う。
今、お前が新しいことをして、すぐに金を稼げなかったとしても、それは、その新しい仕事で今はお金を稼がない方が良いってことなんだと思う」
30年以上ぶりの再開。2人が生きていてくれて心の底から良かったと思いました。そして、私と話してくれたことを感謝してもしきれませんでした。
組織に頼らないで生きてきた2人から大切なことを教えてもらいました。
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