新聞記者は特別な方法で取材をしているのか
こんにちは。「会社にも学歴にも頼らずに生きていく」と言いながら、まだ会社員をしている仮面ライターです。独立してフリーランスとして生きていくため、スキルアップを日々意識している毎日です。
私は以前、新聞記者をしていました。今も時々聞かれることがあります。それは、「記者は普通の人には出来ない方法で取材しているのか」ということです。
結論から言うと、答えはNOです。
今回は、記者が調べる時に、「普通の人」とは違う点について考えてみたいと思います。
「あの人がどこにいるか、記者だからわかるでしょ?」
ある時、知り合いと話をしていた時に言われました。
昔、一緒に働いていたあの人と久しぶりに3人で会いたい。でも、連絡先がわからないから、あなた調べてよ。記者だから、特別な方法があるでしょ
そんなことを言われても、記者は特別な手段を持ち合わせているわけではありません。行方不明のその人は、人間関係を一度リセットしたくて、行き先をほとんどの人に知らせずに消えてしまったのでした。私には知らせていたので、その人に連絡し、事情を説明。「ずいぶん時間がたったし、あの人だったら連絡先を教えても構わない」と言ってくれました。
これまでのことを伏せたままで、「連絡先がわかりました」と依頼者に伝えたので、「さすが新聞記者だ」と、誤解がさらに膨らんでしまいました。
考えられる合法な手段を尽くすだけ
新聞記者だからといって、市役所で住所を教えてもらえるわけではありません。社内に特別なデータベースがあるわけでもありません。
ふた昔であれば、電話帳に住所と電話番号が載っている可能性が高かったかもしれません。住んでいるところが大方わかっていれば、調べられたかもしれません。ところが、今は電話帳に自分の電話番号を記載する人は減っています。電話帳調べはほとんどあてになりません。
今であればSNSを調べるという方法があります。これも、普通の人と同じ。根気強く、手にある情報を元に探すしかありません。同姓同名なんていくらでもいますし、本名を名乗っていないということもあります。小さな情報をかき集めて、「これかな」というところまで行けば良い方です。
普通の人と違うと思うのは、必要があれば必死になって探すことが出来る点です(「必死になって探さなくてはならない」という方が正確な表現ですが)。
昔、経済事件の鍵となる人物を探したことがあります。わかっているのは、名字とある小さな会社で役員をしていたという事実だけ。会社に聞きたいところですが、その会社自体が怪しいので、事情を知るキーマンを探しているという状況でした。
「日経テレコン」という有料データベースに名前を入力し、役員をしていた会社と同じ業種に絞ってさらに調べました。
ちなみに、日経テレコンは、新聞や雑誌の記事や企業業績、人物プロフィールなどを調べられる会員制のデータベースサービスです。サービスレベルにもよると思いますが、値段が個人で払うには高いため、この点では新聞記者が「特別」なのかもしれません。ただ、ビジネスのデータベースですから、企業経営者でもない人を探すことは不可能です。
この経済事件での取材では、複数の候補者が出てきたので、片っ端から電話や訪問をしました。「ハズレ」が続きました。2週間くらい人探しをしていると、「あそこに聞いてみたらいい」と言う人に出会いました。しかし、次の人もわからず、また別の人に。そういうことを繰り返しているうちに、キーマンにたどり着くことが出来ました。
「足で稼ぐ」という言葉は本当
上記の経済事件は、比較的ラッキーだったかもしれません。上手くいったと思われる点は、実際に訪問をした点です。あまりにも候補者が多いので、最初の2日間は電話をしました。
電話での会話だと、本人につないでもらうことは出来ませんでした。そこで、遠方の候補者については後から考えることにして、まずは近くから当たっていきました。
会社を退職して遠方に引っ越しをし、そして、新たなビジネスをするという可能性は低いと考えたからです。
訪問ですから時間がかかりました。不在の時は時間をずらして再度行きました。少なくとも、名刺を出すことで、いい加減な対応をされるということはなくなりました。
「あそこに聞いてみたら」と言ってくれた方は、「不正を明るみにするためならば」と、何とか力になろうとしてくれました。
もっと良い取材の仕方があったのかもしれませんが、当時の私には、手にある情報を元に直に当たるということしかひねり出せませんでした。
唯一の違いは「しつこさ」?
記者が他の人たちと違うとしたら、「しつこい」というだけだと思います。でも、記者でなくても、仕事で誰かを探さなければならない職種であれば、必死になるのではないでしょうか?
例えば、営業職の人であれば、クライアント企業のキーマンが誰なのかというのは、仕事を取る上で死活問題でしょう。そのために、日中にアポイントをとって担当者に会って話をしたり、夜には接待をしたりするのだと思います。
記者も情報交換やネタを取るために、捜査関係者や官僚、政治家と飲食をします。でも、そういう組織に頼った取材では情報を取れない時、ただただ、断片情報を集めて、「会いたい人」に近づいていくのです。
もう一つ、「しつこい」以外の点は、躊躇しないということです。人権侵害や違法な取材は出来ませんし、取材自体が終わってしまうような方法は取れません。ですが、それ以外であれば、「失礼かな」とか「聞きにくいな」とか「恥ずかしいな」というような感情は捨てます。
私は、最後の最後まで記者の仕事に慣れず、被害者の家族に当時のことを聞いたり、悪いことをしたと思われる人に質問をしたりするのが苦手でした。そんな私でも、仕事となると他の記者よりはつっこみが弱かったとはいえ、力を振り絞って取材をしました。
時には、心の底から「許せない」と、力が入ったこともありました。そういう取材は、記者としては危ういのだろうと思いますが……。
まとめ
・記者は普通の人には出来ない方法で取材しているわけではない
・合法的は手段を使って取材をしている
・調べる上でのしつこさと躊躇しない点が、普通の人より良くも悪くも上回っている
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