【取材初心者必見】「5W1H」より簡単に質問を深掘りできる「1W1S」

取材のときに、もっと質問を深掘りしたい

「どうして」と「具体的には」を意識して質問してみてはどうでしょう

 こんにちは、社長の藤田です。地方新聞社で記者職と営業職に従事した後、2021年から現在に至るまでフリーライターとして活動しています。

 取材において質問を深掘りすると、具体的で中身のある原稿や記事を書き上げることができます。とはいっても、取材経験の浅いうちは用意した質問を投げかけるのに精一杯で、質問を深掘りする余裕はないし、どのように深掘りすれば良いか分からないという人が多いのではないでしょうか。

 そんな皆さまにお勧めなキーワードが「どうして」と「具体的には」。取材中にこの二つを意識し続けることで、少しずつ質問を深掘りすることができるようになります。

 私は2002年に地方新聞社に入社して以降、通算で16年取材していますが、いまだにこの二つを意識しながら取材をしています。

 今回は、深掘り取材に有効な「どうして」と「具体的には」について考察します。

取材中級者向けの「5W1H」

 本題に入る前に、5W1Hについておさらいします。

 5W1Hとは、文章を書くときに意識するべき枠組みのことです。国語や英語の授業で聞いたことがある人も多いと思います。

・いつ(When)
・どこで(Where)
・誰が(Who)
・何を(What)
・どうして(Why)
・どのように(How)

 さらに、誰に(Whom)を付け足して、6W1Hとすることもあります。

 この枠組みは文章だけでなく、インタビューなどの取材においても意識するべきと言われています。取材対象者から返ってきた答えに対し、いつ、どこで、誰が、何を、などを問い返すことで、さらに質問を深掘りする、という手法です。

 しかしこの方法は、取材にこなれた中級者向け。おそらく取材に慣れていない多くの人にとって、六つ(Whomを入れると七つ)の要素を意識しながら質問を返す余裕はないと思います。

取材初心者向けの「1W1S」

 そんな取材初心者に意識してほしいのが「どうして」と「具体的には」の二つです。二つの言葉の頭文字を取り「1W1S」と呼ぶことにします。

・どうして(Why)

・具体的には(Specific)

 「どうして」は、言うまでもなく理由を尋ねる言葉で、物事を判断した根拠や行動に至った考え方など、主に取材対象者の内面に迫る役割を持ちます。

 これに対して「具体的には」は、取材対象者のイベントを掘り下げる言葉。「イベント」の語源はラテン語のex(外)とvenire(来る)だと言われています。出来事だけでなく、その人を取り巻く環境全般を詳しく聞き出すことができます。

「どうして」と「具体的には」の使用例

 分かりやすい例として、文学部英文学科で勉強をしている学生へのインタビューを想定したいと思います。

インタビュアー
インタビュアー

どうして英文学科を選んだのですか

学生
学生

中学、高校と英語に興味があったからです

 お察しの通り、これでは記事になりません。そこで、「なぜ」をたたみかけます。

インタビュアー
インタビュアー

なぜ英語に興味を持ったのですか

学生
学生

中学校のときに出会ったALT(英語指導助手)の先生と話をしていて、楽しかったからです

 さらに「具体的には」で深掘りをしてみましょう。

インタビュアー
インタビュアー

そのときのことを具体的に話してもらえますか

学生
学生

何年も前のことなので、詳しく覚えていないんですが…(30秒ほど沈黙)、確か英語の授業で先生に指されたんですけど、答えられないことがあって。その日の授業終わりにALTのジョーンズさんが慰めも兼ねて簡単な英単語を使って話してくれたんです。あ、難しい英単語を覚えなくても会話って楽しめるんだなと思って。そこから自信が付いてテストの点数が上がっていきました。高校でもESS部に入ったんですよ

 「どうして」「具体的には」を繰り返すことで、いつ=英語の授業、誰=ALTの先生といった要素を引き出すことに成功しました。ここまで聞けば、記事として成立しますね。

取材で注意する点

 「どうして」と「具体的には」を使って取材をする際の注意点に触れます。

沈黙を恐れない

 前述の例でもそうでしたが、「どうして」「具体的には」と掘り下げた際、取材相手が回答を考え込んで黙り込む場合がよくあります。沈黙すると言うことは、相手がそれだけ問いに真摯に向き合ってくれているということ。沈黙を恐れず、相手の考えがまとまるのを少し待ってみてはいかがでしょうか。

 このことについては、別の文章でも書いてありますのでご参照下さい。

たいした話が出なかったら別の質問に

 「どうして」「具体的には」を使ったとしても、具体的な話が出ない場合は当然あります。そんなときは無理に聞き出さず、話を変えたり別の質問項目に移ったりしたほうがよいです。

 インタビューでは、いろいろな質問項目を用意しているはずです。別の質問で掘り下げることができれば、十分記事として成立させることができます。

詰問調にならないように

 取材対象者は繰り返し質問されていると、詰問されているような気分になってきます。警察による取り調べを受けているような感じです。相手を萎縮させたり、怒ったりさせないよう、あまり前のめりにならないようにしましょう。

 私がフリーライターになってある企業に取材した際、記者時代と同じような感じで「どうして」「具体的には」をたたみかけていました。取材先からは何も言われなかったのですが、同行している仕事の依頼主の方から「詰めるような取材をしますね」と言われたことがあります。無意識のうちでしたが、もっとソフトに取材するべきだったと反省をした次第です。

まとめ

 今回は「どうして」と「具体的には」を意識して質問すると、深掘り取材ができるという話でした。

取材初心者向けの「1W1S」

・どうして(Why)…主に取材対象者の内面に迫る

・具体的には(Specific)…主に取材対象者の外面を掘り下げる

 最初は緊張することも多いかと思いますが、人の話をじっくり聞くというのは記者やライターに認められた特権です。大いに楽しみましょう。