インタビューなどの取材で言ってはいけない愚問5選

フリーランス

 こんにちは、社長の藤田です。2002年から14年間、地方新聞社で記者職に従事。2021年からフリーライターとして活動しています。

 今回は、通算16年間で数多くの人たちを取材してきた経験を元に、インタビューなどの取材で意味をなさない「愚問」の例を挙げてみたいと思います。

 取材相手のキャリアや人となり、成功の秘訣などを限られた時間で掘り下げるのは、案外難しいものです。特に取材に慣れていないうちは、取材にとまどうことも多いと思います。

 最初のうちは、上手に質問をしようと無理に気負う必要はありません。取材に不慣れであっても、これから挙げる愚問をしないように心掛けるだけで、効率良く話を聞くことができます。自信を持っていただければ幸いです。

「現在の状況を教えて下さい」

 インタビューの口火を切る言葉として使われる質問ですが、はっきり言って取材されている側からすれば迷惑なだけ。漠然としすぎて、何をどう答えて良いかイメージが湧かないからです。

 例えば社長などの経営者に対するインタビューの場合、会社の経営状況を尋ねているのか、人手不足やリクルーティングなどの労務状況に対する質問なのか、後継者選びの進捗状況を探っているのか、いかようにも捉えることができます。それゆえに、聞かれた方は何を答えて良いか分からず、答えに窮してしまうこととなるのです。

 似た質問として「最近どうですか」というのがありますが、もってのほかです。

 「コロナ禍の中苦しい経営状態をどのようにして乗り切ったのか」「どのような工夫で人手不足を解消したのか」など、なるべく具体的な質問をすることが求められます。

(例)「コロナ禍で業界各社苦戦する中、御社は新たにECサイトを立ち上げて販路拡大を図っています。その取り組みについて、成果、課題両面をお聞かせ下さい」

「あなたにとって、○○はどういう位置づけですか」

 「あなたにとって仕事とはどういうものですか」「家族とはどのような存在ですか」「研究とは何ですか」などの質問です。

 そもそもインタビューによって、取材対象にとって仕事は何なのか、家族とは何なのか、研究とは何なのかを明らかにしようとしているのです。それを一足飛びで尋ねるというのは、何とも虫が良すぎると言わざるを得ません。

 いろんな切り口の質問を投げかけていき、それを「どうして」「具体的には」で掘り下げていくことで、仕事は何なのか、家族とは何なのか、研究とは何なのかを明らかにしていきましょう。

「仕事は楽しいですか」

 おそらくほとんどの取材対象者は「はい」「いいえ」とだけ答え、そこで会話を終えるでしょう。「最初はそうでもありませんでしたが、だんだんと楽しくなってきました」などと話を続ける人がいれば、よほど取材されることに慣れている人か、コミュニケーション能力の高い人です。

 質問された側が自由に答えを返すことができる質問を「オープンクエンション」というのに対し、イエス・ノーなど解答が限られる質問を「クローズドクエスチョン」と言います。

 クローズドクエスチョンは会話が続かなくなりますので、事実確認以外では極力使わず、できるかぎりオープンクエスチョンで質問するのが賢明です。

(例)「仕事をしていて楽しいと思うのはどんなときですか」

「あなたの人生を色に例えると」

 エモーショナルな文体でたまに見かける「例えると」シリーズ。一見ひねった質問っぽいのですが、はっきり言ってほとんどの読者は「そんなことどうでもよい」と思っています。

 ①と同様、質問が漠然としすぎています。問いかけられた取材対象者もどう答えて良いか分からいでしょう。このような質問は極力避けるべきです。

「最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします」

 この質問もたまに聞きます。プロ野球のヒーローインタビューなど、聴衆がいてリアルタイムで流れるインタビューならいいのですが、記事の取材なら全く不要な質問です。

 そもそもインタビュー記事は聞いた順に書いていくのではなく、構成の組み立てによって順番を前後させます。最初の質問の答えを最後に持ってくることもありますし、最後に聞いたことを文章の冒頭に置くこともあります。

 また、①④と同様、質問が漠然としすぎています。具体的な質問を考えてはいかがでしょうか。

(例)「SNSでのフォロワーが急増していますが、どのように受け止めていますか」

(例)「新作商品に対する反響も大きいようですが、愛用してくれているお客さんにはどのような気持ちをお持ちですか」

まとめ

 今回は、インタビューなどの取材で意味をなさない「愚問」の例を挙げてみました。まとめとして、愚問の例とその理由、代替質問の一例をおさらいします。

①現在の状況を教えて下さい…漠然としすぎていて、答えられない。

(例)「コロナ禍で業界各社苦戦する中、御社は新たにECサイトを立ち上げて販路拡大を図っています。その取り組みについて、成果、課題両面をお聞かせ下さい」

②あなたにとって、○○はどういう位置づけですか…そもそもそれを取材で掘り下げようとしている

③仕事は楽しいですか…会話を途絶えさせるクローズドクエスチョンは極力避ける

(例)「仕事をしていて楽しいと思うのはどんなときですか」

④あなたの人生を色に例えると…そんなことどうでもよい

⑤最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします…最後に来るとは限らない

(例)「SNSでのフォロワーが急増していますが、どのように受け止めていますか」「新作商品に対する反響も大きいようですが、愛用してくれているお客さんにはどのような気持ちをお持ちですか」

 いずれも、取材を受ける側にとっては答えに困る質問です。取材する側も特に面白い答えを引き出せるとは思えませんので、やめましょう。