人生の棚卸しにお勧め  ー「35歳のチェックリスト」ー

 こんにちは、「かく企画」社長の藤田です。かつてとある新聞社に勤めていましたが、2021年退職。現在はフリーランスのライターとして活動しています。1978年生まれの午年、44歳です。

 先日、本棚を整理していると、ある1冊の本を見つけました。

 齋藤孝「35歳のチェックリスト」(ちくま新書)

 35歳を人生のターニングポイントとして、一度自分という人間の資産価値を再確認する「心の棚卸し」をしてみませんか、と提案している本です。

 初版発行が2014年。私が35歳になる年でした。当時、思うところがあって書店で購入。この本を読んで、少しではありますが自分の歩んできた道に自信が付いたのを覚えています。おそらく私の人生の中での思い出に残る1冊になると思っています。

 一昔前の本ですが、今読み返しても色あせておらず、現在35歳を迎えようとしている人にとっても参考になると思います。

 そして何より、学歴も会社も頼れない時代に生き残るための考え方が満載です。

 そこで今回は、この本のごく一部を紹介してみたいと思います。

35歳は「第2の人生のスタート」

 著者の齋藤孝さんは明治大の教授。テレビの情報番組でコメンテーターとしても活躍されており、知っている人もいるのではないかと思います。

 私は一度、仕事の関係で齋藤教授の講演を聴く機会がありました。柔和な表情とは裏腹に、立て板に水の講演で驚いた覚えがあります。

 この本では、35歳は「第2 の人生のスタートと言うべき不思議な年齢」と定義。「来し方を振り返り、明日からの生き方を見つめ直す最大のチャンス」と訴えています。

 そして、仕事や結婚、心身に関する「具体的な諸問題」について、具体的な「問い」を投げかけることを勧めています。例えば、以下のような感じです。

・仕事…今の組織で上を目指すのか、独立や起業を考えるのか

・結婚…するか、しないか。子どもを持つことをどう考えるか

・心身…体力の衰えを感じ始める中で、心身両面をどう整えるか

 「35歳の“今”の意識を変えることで、悔いのない人生を送ることができる」。齋藤さんはこのように提唱しています。

35歳がチェックするべき項目

 ここからは、この本で書かれている35歳の「チェック項目」のうち、印象に残ったフレーズやブログのテーマに関係する項目の一部を紹介したいと思います。数ある中のほんとうにごく一部ですので、実際に本を手に取って確認してもらえればと思います。

賞味期限切れポイントを知ろう

 印象的だったフレーズの一つとして「賞味期限切れポイント」という言葉がありました。かつては自分の価値を高めてくれたものの、今では過去の遺物となっている要素を指します。

 この本では、賞味期限切れポイントの代表として「学歴」を挙げています。確かに、新卒で就職する際はいざしらず、30過ぎてからの昇進、転職で学歴がものを言うことはまずありません。「へえ、そうなんだ。すごいねー」で終わりです。

 それよりも大切なのは、社会に出て今まで何をしてきたか。今現在の自分の価値をいい形で出していくことに力を注ぐべき、と唱えています。

 学歴に限らず、仕事でもそう。「前の会社ではこんなやり方はしなかった」「おれはこんな花形部署にいた」「あの会社に勤めていたころ、こんなに活躍した」など、過去の栄光にすがるのは、みっともないのかもしれません。

 当ブログでも、成功例だけでなく失敗したことなども積極的に取り上げたいと思います。

仕事と自分との関係性

 「20年後の自分の働く姿をイメージできますか?」「今、転職を考えていますか?」。この本では、仕事に関してこのような質問を投げかけてきます。

 この本が発行された9年前、すでに自分の将来像が見えにくい時代となっていました。終身雇用、年功序列、定期昇給というなどの旧来の仕組みが瓦解し始めた頃です。

 この不安定な世の中で、「仕事に求めるもの」を書き出してみることを勧めています。具体的には、収入、待遇、やりがい、職場の将来性、自分自身の向上や自己実現、社会貢献など。このうち、何に満足を感じるか、順番を付けることで、仕事と自分自身の関係が見えてくる、としています。

 この作業を行うことで、今の会社で頑張っていくのか、転職するのか、独立・開業するのか、これまでとは全く違う道に進むのか、といった道筋が見えてきます。

ビジネス体力

 上司を見て「なんで自分よりタフなんだ」と思うことはありませんでしょうか。

 体力的な低下を強く自覚するのが、35歳くらい。にもかかわらず、40歳代、50歳代の人のパワフルさに驚かされることがあると思います。

 この本によると、社会人として仕事をする上では、運動能力とは異なる「ビジネス体力」というのが存在するそうです。経験に基づいた知恵や情報適応能力で、コストパフォーマンスよく仕事をこなす力のことです。

 年を取っても仕事に旺盛な人は、このコスパよく仕事をする力が身に付いており、精力的に仕事に打ち込める、とのことです。

三色ボールペン活用法

 ちなみに、同じ章では、効率よく仕事をするための「三色ボールペン活用法」を提唱しています。

 赤…すごく大事なこと

 青…まあまあ大事なこと

 緑…自分が面白いとおもうこと

 この活用法は、私もこの本を読む前から自分なりに実践していました。今でも、取材ノートでは次のように色分けしています。

 赤…取材相手の発言で重要なポイント(線を引いていることが多い)

 青…取材日時、予定など、事務的に重要な事柄

 緑…自分の考え、取材時に浮かんだ質問事項

 そして、35歳から自分の時間を有意義に使うため、「緑の時間」、つまりプライベートタイムを大事にしようと提案しています。

まとめ ー頑張ることを決意 結局は退職ー

 最後にまとめとして、この本を読み始めた理由と、読んでからの自分について振り返ってみたいと思います。本の紹介はこれで終わりですので、関心のない方は、この後については読まなくても結構です。

さまざまな不安が混ざる34歳

 34歳のころ、私はとある新聞社で記者として勤めていました。社内でも忙しい部署で、仕事に追われて毎日くたくた。怒られることもしょっちゅうでした。それでも、仕事自体は楽しく、仲間にも恵まれたので続けることができました。

 しかし、たまの休みになると、次のような思いが浮かんでくるのです。

「自分は本当にこのままでよいのだろうか…」

 仕事がうまくできない不安と、このまま馬車馬のように働き続けるのかという不安。当時未婚でしたので(妻と出会う直前くらいだったと思います)、このまま独身で老い朽ちる不安…。いろんな不安が混ざっていたと思います。

 そんな折、たまたま書店でこの本を見つけ、購入しました。

「自分はこのままでいい」と気付く

 読んでみて「自分はこのままでいいんだ」という感想を持ちました。本の内容自体が自分の考えに近かったからです。

 例えば「昔の友達と次第に距離ができるのは自然なこと」「思い通りにならないことはあきらめる」など。上記の三色ボールペン活用法も含め、自分がすでに取り入れていることもいくつかあり、「分かる、分かる」と一人うなずきながら読んだ記憶があります。

 会社についても、このまま仕事を続けたいと思っていたので、今の会社で頑張っていこうと決意を新たにしたのを覚えています。

結局は退職する

 その後、私は記者職から離れ、営業の仕事に就くことになりました。詳しいいきさつについては別の文章で書いてありますので、ここでは省きます。

 そして最終的に、会社を辞めるという選択をすることになりました。

 2014年にこの本を読み、仕事を続けると決意を新たにしたにもかかわらず、7年後に辞めてしまうとは、何とも因果なものです。

チェックが甘かったと痛感

 会社を辞めた今、あらためてこの本を読み返すと、自分はできていると思っていて、実はできていかったことが多かったなあと痛感します。以下に一例を挙げてみます。

・仕事の量が増えると、ワクワクしますか?

・後輩のフォローができていますか?

・他部署の上役と雑談できますか?

・突然の異動や転職を、前向きに受け止めていますか?

 読んだ当初は「できる」と思っていましたが、しかし、いざ突然の異動(というより仕事の内容が180度違うので、転職といった方が正確)に出くわすと、全く実践できませんでした。仕事量の増加におびえ、後輩もそっちのけ。萎縮して、他部署の上役との雑談どころではありませんでした。

 自分の想像を超えた異動であったのは確かですが、チェックが甘かったと言わざるを得ません。

自分に必要な「45歳のチェックリスト」

 という訳で、フリーライターとして働いています。

 知的好奇心がくすぐられる仕事はやはり楽しく、最近では蓄えができるくらいの稼ぎができつつかります。

 それでも、夕日を見ながら、ふと「自分はこのままでよいのだろうか」と迷いが頭をよぎることがたまにあります。

 「四十にして惑わず」という言葉から、かけ離れてしまっている私の人生。

 「45歳のチェックリスト」が、どうやら私には必要なようです。

働き方

Posted by かく企画