こんな時代でも 一度は会社に身を置くほうが良い理由
学歴も会社も頼れない時代、会社などに所属せず、個人が業務委託という形で多方面から仕事を請け負う「フリーランス」という働き方が注目されているようです。政府も「ウィズコロナ、ポストコロナの新しい働き方として、フリーランスなどの新たな働き方への期待が高まっている」としています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/portal/new_workstyle/index.html
さらに、フリーランスを保護するための法整備も検討されており、役務提供を受けてから60日以内に報酬を支払う義務、依頼主によるハラスメント対策などが検討されています。
マスコミ報道などでは、ひとくくりにして「フリーランス保護新法」と呼ばれています。2022年の臨時国会では法案提出が見送られましたが、2023年の通常国会に提出されるかどうかが注目されます。
フリーランスという働き方が社会で認知されつつある昨今、大学や専門学校、高校を出た後の進路として、会社での勤務を経ずにフリーランスになるという選択肢も出てくるかと思います。
しかし、会社を退職してフリーランスのライターとして働いている「かく企画」社長・藤田としては、いきなりフリーランスになるのではなく、ある程度会社に身を置いてから独立することをお勧めします。
今回は、会社に頼れない時代でも会社に一度は身を置くほうがよい理由について、私なりの考えをつづってみたいと思います。
会社はいろんなことを無償で教えてくれる
会社に頼れない時代とはいえ、会社に所属するとさまざまなスキルを無償で身に付けることができます。
確かに、会社の上司や先輩にはいろいろな教え方をする人がいます。「こんなこともできないのか」と面倒くさそうに教えてくれる人、姑小姑(しゅうとこじゅうと)のように細々と小言を言う人、「まあ、何とかなるよ」と言って放置する人、そもそも間違ったことなのに時間を掛けて教える人、パワハラ気質の人、などなど。
会社に勤めている人の中には「うちの上司が仕事を教えるのが下手」などと思っている人もいるかもしれませんが、仕事をしていると、知らず知らずのうちに教えられたことが役に立っていると感じることがままあります。
私の場合、勤め先で記者として働いていたころ、記事の書き方、取材対象者との向き合い方、写真の撮り方などについて、さまざまな先輩から(ときには後輩からも)教えていただきました。この当時の教えがなければ、現在のようにフリーのライターとして仕事はできていないと思います。
最後の5年間は営業の仕事でしたが、ここでもお金に関する知識をはじめ、交渉の仕方や会議の運営方法などを教わることができました。お金の知識がなければ、自分で事業を営むフリーランスに踏み出すことはできませんでした。残念ながら仕事を好きになることはできませんでしたが、当時の諸先輩方には感謝しかありません。
フリーランスでは誰も何も教えてくれない
対するフリーランスですが、仕事の仕方について会社のように手取り足取り教えてくれることは、残念ながらほとんどありません。
私自身、とある会社から広告原稿の取材と執筆を請け負っています。もう仕事を始めて1年以上になるのですが、初稿を提出した後、いまだに真っ赤に修正が入れられた原稿が返ってくることがよくあります。
こちらもなるべく完全な原稿を書きたいので、どこがどう悪いのか、どのように書けば良いのかを尋ねますが、明確な答えは返ってきません。「私たちが良いように直すので、あなたは取材して下地となる文章を書けばよいのです」と言われているかのようです。
フリーランスの仕事は、基本的に「できる」前提で発注が来ます。ライティングだと記事の書き方について丁寧に説明されることは少なく、記事のテーマやテイストが指示されるだけで「後は任せますので、納期までによろしく!」という形がほとんどです。
そして万一仕事ができなければ、報酬をもらうことができません。もし仕事の不履行によりクライアントに不利益を与えた場合、損害賠償を請求される可能性もあります。
会社で仕事に失敗した場合、ボーナスの査定などの人事考課が悪くなることがあっても、基本給は普通に支払われます。そもそも会社が社員に罰金を科すことは労働基準法違反です。
労働基準法第十六条(賠償予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
「オンラインサロン」などで仕事を教えてくれることも
ウェブ上でさまざまな人との交流やモノのやり取りができる現在、オンラインサロンなどのインターネット上で展開されている会員制のコミュニティー、ウェビナーと呼ばれるウェブ上のセミナーなどを利用して仕事のスキルを上げる方法もあるようです。
ただ、仕事をしながらのトレーニングでないので、どうしても一般論に終始しがちです。中には全く身に付かない「ぼったくり」もあるとのこと。無料でこまごまと教えてくれる会社の先輩とは大違いです。
私自身、オンラインサロンやウェビナーがどのようなものなのか、興味はあるのですが、参加したことはありません。今のところ「はぐれライター」として、人知れず仕事を行っています。
会社勤めを「遠回り」にするか、「肥やし」にするかは自分次第
以上、新卒でフリーランスになることの弊害について述べてきました。
将来、起業や独立の意思がある人にとって、会社に頼れないという思いが強いほど、企業に就職することは遠回りで、無意味だと思うかもしれません。
しかし、会社での在籍を人生の「遠回り」とするか、今後の仕事の「肥やし」にするかは、自分次第ではないでしょうか。
会社に頼れない時代、必ずしも、会社に長く居続ける必要はありません。それでも会社は、自分がやりたい仕事の基礎技術を身に付けるためにはうってつけの学校だと、私は思います。
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