
選挙報道の独自の戦いとは
こんにちは。仮面ライターです。
いくぶん時期がずれた話題になりますが、自民党総裁選で石破茂氏の後継に高市早苗氏が決まりました。女性初の首相がやっと日本に誕生しました。
ところで、選挙報道で「独自の戦い」という言葉を目にしたことはありませんか。今回は、この「独自の戦い」について書きたいと思います。
独自の戦いをしている候補者とは
ずばり、当選見込みがないとマスコミが判断している場合です。
しかし、そのとおりに書くわけにはいかず、「独自の戦い」という表現にとどめているというわけです。どうして、そのとおりに書けないのか。
一つには、「当選見込みがない」と報道してしまうと、有権者のなかには「なんだ、この人当選しないのか。だったらほかの人に入れよう」と考えてしまうからです。
もしくは、「自分がおしている人がダメなら投票に行かない」と、思うかもしれません。
マスコミは選挙を公正に報道することになっています。でも、個人的には「それは建前だよなぁ」と思っています。
独自の戦いをしているわけではないことは、読者、視聴者もわかっているはずです。
しかし、マスコミ内部では泡沫候補扱いしていても、名前を出さないわけにはいかず、このような苦しい表現を編み出したのだと想像します。
都知事選などであまりにも多くの泡沫候補がいる場合は別です。告示日や投票日前日の候補者一覧以外では、一人一人の名前を出さない場合がしばしばあります。
選挙情勢をマスコミはどうやって判断しているのか
新聞社、通信社、テレビ局は、どのように開票前に情勢を判断しているのでしょうか。そしてその精度は?
読者の中には、突然、報道機関から自動音声の電話がかかってきたという経験がある方はいませんか?
私は、自分が勤めているところとは別の新聞社から電話がかかってきたことがあります。マスコミで働いているのに返答して良いものか迷い、電話を切りましたが、その後も何度かかかってきました。
また、市役所など期日前投票の会場で出口調査をすることがあります。腕章をつけた人が声をかけて、対面で質問をします。
さらに取材による情勢把握もします。どの地域、団体の票を固めているか。底堅い票を持っている公明党や共産党には、選対幹部に話を聞くこともあります。
警察も情勢を把握?
警察への取材もします。「警察?」と思われかもしれません。警察は選挙情勢をかなりしっかり把握しています。
その手法をこっそり教えてもらったことがあります。
一つは、陣営の事務所に来ている人の車を調べる。車から所有者を割り出すのです。
選挙は世知辛いもので、前回はA候補を応援していた人が、あっさり裏切ってB候補に乗り換えることもざらです。
その人が地域の有力者であれば、かなりの票が動くことになります。
もう一つは立て看板です。
町を歩いていると、人の名前が書かれた縦長の看板を目にしたことはありませんか?
私は警察が立て看板を確認しているなんて知りませんでした。
立て看板の多くは、民家や店舗前に許可をもらって置かれています。
ということは、看板があるところの住人や店舗経営者は、立て看板の名前の主を支持しているというわけです。
立て看板の設置場所を見ながら、前回と同様の選挙になるのかを判断しているという話でした。
こぼれ話ですが、保守分裂の熾烈な市長選を取材したときのことです。警察署の中堅幹部の一人から投票日前、携帯電話に連絡がありました。
「答え合わせするか」
最初は何を言っているのかわかりませんでした。言われた場所に行って話を聞くと、お互いの見立てについて情報交換をしようとのことでした。
通常、警察は簡単に自分たちの情報を明かしてくれません。ちょっと気味が悪いので質問しました。
「どうして私なんですか?」
その警察官曰く、私がその選挙の肝となる人たちに接触していたからだそうです。私は選挙の取材がおもしろくて、毎日、多方面の人たちから話を聞いていただけでした。
警察の見立てを聞き取ってデスクに報告すると、めずらしく褒められました。
ただこの思い出には落ちがあります。
私とその警察官が予想していた候補者が落選したのです。絶対に間違いないと自信を持っていたのに……。
ある団体の票が選挙前日に「密約」で動いたことを、私も警察の人も把握していなかったのが敗因です。
開票翌日に、その警察官の上司である副署長に面会すると、こう言われました。
「二人そろって見立てが外れるとは。しっかり仕事せんかい」
なんでも知っている副署長。お互い様ですが、上司には報告していたというわけです。
教訓ですが、安心材料がそろっても、取材は最後の最後まで続けて、確認すべきです。
マスコミはSNS選挙を読み切れない?
選挙の情勢調査は、国政選挙であればかなりの金額を使ってマスコミは調べます。大手新聞社であれば、系列テレビ局と組んで、億単位の費用を使うと聞いたことがあります。億単位の真偽が本当であるかはわかりませんが。
情勢調査の精度ですが、超接戦選挙でない限り、ほぼ完璧です。少なくとも、国政の小選挙区であれば事前予想が外れることはほとんどなかったと記憶しています。(比例区は仕組みが複雑なので、すべてを当てるのは難しいのです)
ただ、昨今のSNSを使った空中戦はマスコミを悩ませています。都知事選で次点となった候補者があそこまでのびるとは予想できなかったと聞きます。
米国の大手マスコミが初めてトランプ氏が当選したときに、情勢を読み誤った要因の一つにSNSがあげられます。
私は報道部門から離れて久しいので、現在、マスコミがSNSの影響をどこまでの精度で把握しているかはわかりません。
SNSのキーワードによる、ネット上の「ホット度合い」は調べられます。それが票に結びつくのかを見極めるのは結構難しいと思います。
少数の人が複数アカウントを使って情報を拡散したり、反応し合ったりする世界。今後の選挙報道の課題だと言えます。
SNSが選挙を変えた
SNSで自由に情報を交換して選挙に興味を持つ人が増えることは良いことです。
このサイトの読者は情報リテラシーが高い方が多いようなので心配ないのですが、自分に届くSNS情報をどれだけ疑って読み解くか。それが最大の課題だと思います。
虚偽情報はさらに巧妙になっています。エコチェンバー現象などSNS特有の問題もあります。
先日、20代の人から、とある政党について意見を求められました。「良いことを言ってると思うんだけどどう思います?」
政党の支持は人それぞれ。簡単に良い悪いと言ってしまって良いのか逡巡しました。聞いてみると、ネットの情報を見たとのこと。
少なくとも、その政党のホームページを見ること、そして、街頭演説をしていたら聴いてみることを進めました。
自分自身の考えは、選挙に限らず、時間をかけていろいろな情報とつきあわせて作っていくものです。
「どこでもいいんだけど、新聞は読んだ方が良いよ」
最後に、私はためらいながらそう付け加えました。







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