私を世捨て人にした YouTubeチャンネルに感謝

2023年4月2日

 社員の仮面ライターです。私は、あるYouTuberと出会ってから、「世捨て人」になってしまいました。今回は、そのYoutubeと出会った記者時代の話をしたいと思います。

 私はスマートフォンを持つようになったのがとても遅かった方だと思います。スマートフォンを買った後、YouTubeチャンネルの音をイヤフォンで聞きながら、夜に時々、散歩をするようになりました。その時に出会ったのが、江波戸武士さんという方のYouTubeチャンネルでした。

 私のYouTubeのアカウントをみると、2015年にチャンネル登録をしています。確か、スマートフォンを購入したのはその頃ですので、YouTubeを見るようになってからずっと見ています。

原稿が読まれずに不採用 糸が切れてしまった

 江波戸さんのYouTubeチャンネル「心にやさしいえばっち」などによると、ご本人は1975年生まれ。様々な職業に挑戦したけど、「これだ」というものと出会えず、心が病んでいったそうです。

 33歳で渡米し、心理学を大学院まで学び、修士号を取られたという方です。悩んでいる人の力になろうと、カウンセリングをされていると自己紹介しています。

 江波戸さんのチャンネルが良いところは、心理学という学問を前面に出さずに、やさしく前向きになる話をしてくださるところです。準備した原稿を読んでいると思われる、少し棒読みのような話し方にやさしさも感じます。

 江波戸さんのYouTubeチャンネルに出会った頃、私は、タフな仕事なのに、なかなか日の目を見ないという経済事件や企業の税務不祥事を取材する記者でした。(警察の事件しか担当したことがない上司は、税務を学ぶ気もないので、私が見つけてきた話に興味を示しませんでした。)

 警察が扱う刑事事件は、マスコミに広報されるので、捜査について説明を聞くことが出来ます。もちろん、なんでもかんでも警察側が話してくれるわけではありませんが。

 国税局や税務署は取材には答えないということになっていました。ですから、細かい手口の公権力による裏付けという取材が出来ないため、刑事事件の記事とは様相が違ってきます。簡単に言うと、なんとなく記事がぼわっとしているのです。

 私の場合、最初に組んだデスクは、同じ担当をしたことがあり、勉強熱心でもあったので、取材の仕方、記事の書き方にも熟知していました。当然、記事掲載を見送られるなんて事はありませんでした。

 その次に担当になったデスクは大変でした。「この原稿の発表はいつなの」とか、「『国税局によると』という書き方で手口をはっきり書いて」と聞いていきました。報道発表はなく、国税局が取材に答えないので、「国税局によると」という書き方が出来ないと説明しました。しかし、何度も同じことを言われました。おそらく、興味がまったくなかったのだと思います。

 同じ分野を担当するライバル社の記者も大変そうでした。

 「社会部は警察担当が主流で出世していくから、税金のネタなんて下だと思ってるんですよ。『どうせ人は死んでないだろ』と言われて、俺が取材した特ダネを小さくしか掲載してもらえませんでした」

 ある夜、ライバル社の記者と2人で酒を飲んだ時にそう話してくれました。

 朝から晩まで仕事をして、休みの日も人に会いに行く。確証を得るため、幾人にも嫌がられながら話を固める。そうして見つけた話を載せてもらえないと、記者としてはとてもつらいです。

 自分の中で糸が切れたのは、私の書いたものに目も通していないのに、「原稿を掲載しない」とデスクが言った時でした。当時の編集用のコンピューターシステムでは、私が書いた原稿を他人が見た記録が残るようになっていました。同僚の記者が、私の原稿が完全に放置されていると私に教えてくれたのです。

江波戸さんとの出会い 小さなことはどうでもよくなった

 そんな時に、江波戸さんのYouTubeチャンネルを聞くようになりました。

 たまに早く帰ると、寝る少し前に家の周りを20、30分歩きながら、江波戸さんのお話を聞きました。冬の日には、一つの話が終わると凍える指で次の動画を探しました。

 半年くらいすると、自分が世捨て人みたいになっていくように思いました。小さな事を気にしなくなっていくからです。だけど、自分に自信が持てるようになりました。

 そうは言っても、デスクが原稿をちらりとも読んでいないことがわかった時は爆発しました。その翌日は、正午前に家を出て、取材には向かいませんでした。ちょっと高めの回転ずし屋に一人で入り、ビールと日本酒を飲みました。緊急取材で呼び出されたら、その時に考えようと思いました。

 その後、異動で別の部署に行き、40代になって久しぶりにパワハラを受けて、自分でもびっくりするくらいまいってしまいました。でも、江波戸さんから学んだ考え方で、以前よりは早く復活することが出来ました。

 それからも記者職を外されたり、年収が大幅に減らされたりしました。それなのに、なぜかそれほど悲観的にならなくなっています。

 やりたいことを実現するには時間がかかります。現実は面倒なことやバカらしいことがたくさんありますが、時々へこみながらも、出来るだけ早く回復して、生きていけるようになってきたように思います。また、いつか大波が来るかもしれませんが、なんとかなるでしょう。

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Posted by かく企画