BookTuberに直木賞を

2023年7月1日

 みなさん、こんにちは。「かく企画」社員の仮面ライターです。日々、この仮面を取る日が来ることを信じて、スキルアップに励んでいます。

 突然ですが、私は小説を読むのも書くのも好きです。以前、書く話を紹介したので、今回は、小説にまつわる話として、BookTuber(ブックチューバー)について書きたいと思います。

ブックチューバーとの出会い 

知らない方もいらっしゃるかもしれませんので、ブックチューバーについて説明します。ブックチューバーというのは、本の紹介をするYouTuberのことです。

 私は北欧のミステリーが好きなのですが、日本やアメリカ、イギリスの作家に比べると、あまり書籍の情報がないと感じていました。

 新しい本と出会いたくて、Amazonのサイトで調べたり、英語で「Scandinavian Mystery」という語句で検索したりしていました。

 そんな時に、YouTubeの検索で見つけたのが、「ミステリー文学の本棚」というYouTube動画です。本の紹介をしているのは、「あべしぃ」さんという男性で、2019年にこの動画を始められたようで、これまでに300本を超える動画(2023年4月時点)を配信しています。

ラジオのような「ミステリー文学の本棚」

 「ミステリー文学の本棚」を最初見た時は、北欧ミステリーの情報だけを探して、さっと通り過ぎそうになりました。

 ところが、「あべしぃ」さんの声が良くて、ラジオのように聞き続けました。画面を見ると、画像や仕掛けがおしゃれで、もう一つ見てみようかな、と惹き込まれていったのを覚えています。

 私は、「ミステリー文学の本棚」と出会って、他のブックチューバーの方の動画も見るようになりました。それぞれに好きなポイントがあるのですが、「あべしぃ」さんの動画が好きなところは、ネタバレを避けながらミステリー作品の魅力を紹介する妙技です。

 これ、かなり難しいことだと思います。ミステリーは、話の展開を知ってしまうと、読む時に楽しさはダウンしてしまいます。その課題を乗り越えながら、動画で語りかけている「あべしぃ」さんに感心してしまいます。

「あべしぃ」さんの世界をちょっと紹介

 「ミステリー文学の本棚」の動画に以下のような説明が書かれています。

―「読書歴を問わず多くの人に、ミステリー小説や読書の魅力を伝えたい」をコンセプトに日々チャンネルと運営しております! このチャンネルでは、ネタバレなしの書評動画をはじめ、読書に関するお悩み相談や1ヶ月間におよぶ超長期企画など、様々な企画動画を配信中!」―

 「あべしぃ」さんの動画には、毎月恒例の「読んで良かったミステリー小説ランキング」や、ひたすら読み続ける長期間のチャレンジ企画などがあります。「ミステリー文学の本棚」の再生リストを見ると、おもしろそうな企画が並んでいます。

 私は散歩をしながら、ラジオのように話を聞いています。一方、画像が好きなシリーズが「田舎暮らし+ミステリー小説好きの日常」。センスが良くて、気に入っています。このシリーズの時は、自分の部屋でじっくり画面を見ています。

 最初は、北欧ミステリーの情報収集で出会った動画でしたが、だんだん他の要素でも楽しいと思うようになり、定期的に見ています。何よりも、本を読む時間をおもしろく伝えることについては、「あべしぃ」さんの動画が最高です。

 物静かで優しそうな「あべしぃ」さんですが、チャンネル登録者数が1万人を超える時のライブでは、情熱がほとばしっている様子が伝わってきて、感動しました。

本が売れない時代 ブックチューバーこそが光なのでは

 話をちょっと変えます。

 YouTube全般に言えることですが、特定の分野が好きで詳しい人によるコンテンツ(動画やブログ)は、テレビ番組にあまりないエンターテイメントだと、あらためて思います。

 元記者だった私としては、第三者的な視点こそが重要だと考えていた時期がありました。当事者が一方的に語る・伝える内容には限界があると思っていたからです。

 実際は、そんなことはないYouTubeが多く、発信当事者がおもしろい話をどんどん紹介しています。

 例えば、元プロ野球選手たちのYoutubeが好例です。おそらく、少なくない元プロ野球選手がYouTubeに参戦し、競争原理が働いているからでしょう。

 一方、テレビのバラエティー番組に似たような動画では、YouTuberの人たちの行き過ぎた行動が時々、問題になります。しかし、少なくとも、ブックチューバーや元スポーツ選手などが、人を不快にしたり、傷つけたりした話は、あまり聞きません。(※知らないだけかもしれませんが)。

 内容をうまくコントロールしながら、おもしろいコンテンツが発信されているYouTubeは、テレビにとって、ますます強敵になっていくのではないでしょうか。

 話を戻します。

 「ミステリー文学の本棚」に限らず、ブックチューバーさんたちの功績は大きいと思います。

 私の場合は、北欧ミステリーに偏っていた読書が、国内作品にも目が向くようになりました。強く意識しているわけではないですが、世間がどういう作品を待っているのかを知るきっかけになり、「自称小説家」として励みになったり、気分転換になったりしています。

 また、これまで以上に本屋に行くことが楽しくなりましたし、書籍の購入が増えました。

 文学賞の存在理由は、文学のレベル向上という目的もありますが、出版業界のためという話を聞いたことがあります。有名な文学賞に選ばれた作品を買う人は、多くはないけれど、今でもいらっしゃるのではないでしょうか。

 私がここで提案しても小さな声ですが、優れたブックチューバーさんに、「文学賞」ならぬ、「ブックチューバー賞」をぜひ差し上げてほしいと思います。

 末筆ですが、サムネイルの画像は、「あべしぃ」さん側の許可をいただいて掲載しております。

サイト紹介

Posted by かく企画