フリーランスも予算を立てよう ー後編・無駄遣いの検証法ー

2023年3月30日

 「かく企画」社長の藤田がフリーランスの仕事で実践している予算の立て方についての後編。以前の記事では、自分なりにエクセルで作った予算の表を披露いたしました。

https://kaku-kikaku.com/budget1

 今回は、私がフリーランスの仕事で実践している予算の組み方、チェックの仕方の具体例を紹介します。実際の売上額など「生の数字」が出てきますが、特にやましいこともなく、隠す必要もないのでそのまま公開いたします。

エクセルを使った表を利用

 以下は、私が予算を立てるのに利用しているエクセルの表です。1カ月につき一つのシートを利用し、費目ごとの予算額、実際に使った額、予算額と使用額との差を表示しています。7枚目のシートには、6カ月分の合計額を表示しています。

 それでは、実際にどのようにして予算を立てているか、順を追って説明します。

予算の立て方 ー初回ー

 予算は月ごとに編成します。

 まず、収益の予算額を策定します。目標額として高めに設定しても結構ですし、現実路線で稼げそうな額を設定してもよいです。

 そして、経費の予算額を策定します。「新聞図書費」「水道光熱費」「通信費」などの費目を設定。費目ごとに予算額を計上していきます。

 家賃や保険料などの毎月固定のものや、車検費用など支出時期が決まっているものは、比較的設定するのが簡単だと思います。水道光熱費など季節によって変動のあるものは、夏や冬は多めに、春や秋は少なめに計上しています。

 費目は多すぎると管理が大変になりますが、逆に少なすぎても無駄遣いの検証ができにくくなります。私は15種類+その他で分類するようにしています。自宅でライターをする場合、水道光熱費、新聞図書費、通信費あたりは必須となると思います。

 経費は収益を超えない、いわゆる黒字予算が原則ですが、創業間もない頃や、やむを得ない事情があるときは赤字予算を組んでもいいと思います。ただし、手元に現金や預貯金などの流動資産がないと破産します。

 以下は、私が実際に組んだ2022年7月の予算です。売上目標22万円に対し、経費を15万円計上。7万円の利益を見込みましたが、さて結果は…。

毎月の予算額と使用額を比較する

 売上と費用は毎月、エクセルのシートに入力していきます。エクセルシートには、予算額と使用額の差が表示されます。この差額を毎月費目ごとチェックするのが大切です。

 上の図の「当月発生」が実際にかかった額です。売上は、目標22万円に対し、28万円を達成。一方の経費は、予算額15万円に対し使ったのは約9万円で、6万円弱少なくてすみました。

 この月はかなり優秀な月だったので、例として挙げています。もちろん、目標未達だった月、大赤字になってしまった月のほうが多いです。

使用額が予算額をオーバーしていた場合

 もし使用額が予算額をオーバーしていた場合、主に以下の三つの原因が考えられます。

①イレギュラーな出費があった

②無駄な出費があった

③予算を立てる見通しが甘かった

 ①の場合、本当に必要な経費ならやむを得ません。

 ②の場合はお金の使い方を改善し、支出を削減する必要があります。

 ③の場合は、次に予算を組むときには予算額を増やす必要があります。

 一番いけないのは、予算オーバーの理由が分からないことです。理由が分からないままでは、知らぬうちに出費がかさんでいきます。お金が減る原因を突き詰めることが、経費の節減につながります。

使用額が予算額に大幅に達しなかった場合

 実際に使ったお金が少なく、予算額と大幅な差が発生した場合も手放しで喜んではいけません。このときも、なぜ差が発生したかを分析する必要があります。

 使用額と予算額に大幅な差が生まれたということは、実際に使う額を見通せなかったということですから、反省すべきことです。費目ごとに、本当に必要な金額をきちんと理解することが望ましいのです。

半年経過したら

6カ月分の予算と使用額の比較

 半年経過したら、あらためて6カ月分の予算合計額と使用額を比べます。ここでも大きな差があった場合、何が原因だったのかを分析し、削減できる経費はカットするようにします。

 上の図は、2022年度上半期(1月~6月)の予算額と実績(当月発生)をまとめたものです。売上目標109万円に対し、実績は約99万5千円で、9万5千円の未達。

 費用も20万円近く多くかかり、特に①旅費交通費②消耗品費③水道光熱費④車両費が予算の1.5倍以上オーバーしています。原因を分析したところ、①遠方への取材の増加②カメラの購入③電気代・ガス代の高騰④車の予期せぬ修理―が原因でした。②は事業への投資なので前向きな出費、④は予期せぬ事故的出費なのでやむを得ませんが、①③は予算編成が甘かったことが原因でした。

 また、支払手数料が予算より2万円ほど少なく済んでいます。これは、クラウドソーシングサービス「ランサーズ」経由の仕事が減ったのが主な原因。ランサーズを使うと、報酬の20%を手数料としてピンハネ徴収されるので、ランサーズの仕事が減ると手数料支出も減るのです。

次の半年分の予算編成

 半年分の分析が終わったら、次の半年間の目標収益額と予定経費額を設定し、月ごとに予算編成します。予定経費は、前期の使用実績や経費カットを反映させて設定します。

 赤字が続くようだとそのうち事業が破綻しますので、2回目以降の予算は特段の事情がない限り黒字予算を編成するのが望ましいです。もし赤字になるようなら、売上を増やす、または経費を削る、あるいはその両方を行うことが求められます。

 先ほどの上半期の実績を踏まえ、下半期では以下のように予算を組んでみました。旅費交通費、水道光熱費を手厚く計上し、事務用品費、支払手数料などの削れるところをなるべく節約するように編成しました。

フリーランスも予算を組もう!

 以後、半年ごとに予算の編成、業務の実施、使用額のチェック、経費の見直しを繰り返していきます。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の「PDCAサイクル」によって、お金の無駄遣いを防ぎ、使うべきところ使うように努力しています。

 会社を経営している人や、きちんとしている自営業者・フリーランスは、私のような方法ではなくもっと厳密に管理していると思います。

 しかし、どれだけ売上があるか、どれだけ経費がかかっているかを把握していない経営者、自営業者は意外と多くいると思います。前編でも書きましたが、私が会社で勤めていたころ、そのような人間に多く出会ってきましたし、今でも出会うことがあります。

 繰り返しになりますが、自分のお金を本気で心配してくれる人は、はっきり言って自分しかいません。「自ら営む」自営業者である以上、できるところからお金を管理することをおすすめします。