自動車免許の筆記で落ちた私が合格した試験
「かく企画」社員の仮面ライターです。学歴も会社も頼れない時代、フリーになったり独立したりするために、資格試験を受ける人は多いのではないでしょうか。
試験嫌いの私が2022年に受験した体験について、お話したいと思います。試験は、「ITパスポート試験」です。
とにかく試験が苦手
私は試験が嫌いです。試験勉強が苦手です。多くの人は、「そんなの当たり前」と言われるかもしれません。ところが、職場には、全国的に有名な高校や大学を卒業した人たちがいて、試験勉強が好きだという人たちに出会いました。その理由を聞くと、「合否という目的がはっきりしている点が良い」と、言っていました。
そういう人たちと私は真反対。大学生の時に合宿で運転免許を取りに行った時のことですが、自分でも呆れてしまった経験があります。公道での教習に入る前の試験で、実技である運転はパスしたのに、ペーパー試験で1問足らず、落ちました。
その教習所では、年に1、2人、大学生が落ちるとのことですが、その1人に自分がなってしまったのです。言い訳ですが、まったく教本など読まずに受けに行ったのが原因です。
実技で落ちると補講があり、運転ができるのですが、私の場合は数日後の再テストの申込みをするだけ。受付の女性が福島弁で言いました。
「大学生が落ちちゃいけないんだよ」
まったくもっておっしゃるとおりでした。
国家試験を無料で受けられるという罠
そんな私が今回試験を受けたのは「ITパスポート試験」。
国家資格で受験料の7500円を勤め先が払うというので気楽に応募しました。しかも、(値段は教えてもらえませんでしたが)教材も自己負担なしでした。ITパスのホームページには次のような説明が書かれています。
ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。
具体的には、新しい技術(AI、ビッグデータ、IoT など)や新しい手法(アジャイルなど)の概要に関する知識をはじめ、経営全般(経営戦略、マーケティング、財務、法務など)の知識、IT(セキュリティ、ネットワークなど)の知識、プロジェクトマネジメントの知識など幅広い分野の総合的知識を問う試験です。
ITを正しく理解し、業務に効果的にITを利活用することのできる“IT力”が身につきます。iパスは、2009年の開始以来、多くの方に受験されており、社会人やこれから社会人となる学生など幅広い層から支持されています。
企業では、社員の人材育成に幅広く活用されており、採用活動におけるエントリーシートへの記入を求める動きが広がるなど、多くの企業で積極的に活用されています。 大学や高校では、iパスのシラバスに沿った授業を行う学校もあり、合格支援のため対策講座を開設する学校も増えています。
以上、ホームページから抜粋
過去問題を見ておけば良かった
この試験の名前と概要を知り、現在の仕事に役立ちそうだと判断しました。試験料と教材費を勤め先が出すというので挑戦した、というせこい考えもありました。
実際に自学を進めると、試験のための試験であることに気が付きました。いくつかの分野に分かれていますが、自分の仕事の分野は当然ながら知っている事項が多くありました。
私の仕事がこの試験に向いていなかったのですが、そもそも、この試験が仕事に生かされる人がいるのか、想像がつきません。
試験のための自学は、想定よりも覚えることが多く、小説を書くことや、かく企画のブログを書くことと比べると、気持ちは乗りませんでした。
過去問題を先に見ておけば、申込みはしなかったと思います。
ただ、教材も含めて申し込んでしまい、勤務先の人事部に聞くと、受験はして欲しいとのことでした。仕方がないので、受験しました。
試験時間を残して退出
試験当日。会場に行くと、40、50代と見られる人が1割くらいいました。多くは20代か30代でした。
試験は、一人ひとりに与えられたパソコンに向かって選択方式で回答していきます。計算を用いる問題は、なるべく飛ばして、記憶に頼る問題を優先しました。計算問題は、ずるずる時間をかけてしまうからです。
最後の問題まで終わり、時計を見ると30分以上はまだ時間があります。2回やり直しました。これ以上やっても改善はないと判断し、試験時間15分を残して退出。私が最初に部屋を出ました。
なんとなくだめだろうと思っていましたが暫定の点数では合格。ずいぶん日にちが過ぎて、合格証が送られてきた時には合格した実感は薄れていました。
まとめ ー資格試験にすがろうとする自分が不安ー
今回の受験で得たものは、アプリを使った勉強法で日常の「隙間時間」を活かすという経験です。費用はかかりますが、勉強方法が多様化していることを実感しました。また、勤め先の費用で申し込んでしまったので、途中で中止できなかったのは、結果的には良かったのかもしれません。
ただ、合格は仕事の査定には使われないので、不合格でも別に問題ないとのことでした。終盤は、無駄なプレッシャーを感じずに、淡々と出来る範囲の自学を続けられました。
昔の職場で一緒だった現職記者の知り合いは、これまでにこの試験を2回受けて、不合格でした。2回目からは自費なのですが、3回目の受験も考えているといいます。
新聞社の経営は先行き不安で、記者職では退職しても食べていけない、というのが理由です。確かに、記者のままだったら、私もそういう思いに駆られていたかもしれません。
今回、私は時間にとても恵まれていました。仕事が閑散期だったので自学時間を確保することが出来たのが合格要因です。
手帳を見ると、4月上旬に自学を初めて、7月下旬に受験。教材を作った企業の担当者によると、3ヶ月の短期で終わらせた方が記憶の点で良いと助言がありました。
1ヶ月長かったのは、模擬問題の回答結果から、そのままでは落ちると判断したからです。もっと延長したい思いもありましたが、申込みの空席がありませんでした。また、この自学をこれ以上続けるのは、時間がもったいないという点もあります。
この4ヶ月間は、アプリで隙間時間に模擬問題を解く毎日。時間を空けると、覚えたことが頭からすぐにこぼれ落ちていきました。終盤は、紙に用語や図を書いて覚えました。
前述の元同僚の記者は、多忙な中でほとんど自学をする時間がなかったと言います。頭脳は、圧倒的に私より明晰な人ですが、さすがに現場の記者を続けながらの自学は大変なことだと思います。
ただ、そこまでする価値のある試験だったかは疑問です。国家資格にも関わらず、試験のための試験という感じが拭えません。勝手な推測ですが、10年後にはなくなっているかもしれません。資格試験の合格は、仕事でのステップアップといいますが、今のところ、何も効果がありません。
この試験に関わっている人には大変失礼ですが、多くの問題は調べればわかるというものでした。もちろん、一度知識を頭に入れないと、そういう分野や概念があることを知ることは出来ません。試験にかかる時間など、費用対効果から受験は考えたほうが良いのでしょう。
今回の受験を振り返ると、記者職を外れ、新しい仕事への不安がありました。もし、不合格だったら、また受験したかもしれません。資格試験に飛びついた自分の精神状態の方が今となっては不安だと気が付きました。
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