読みやすい文章 二つのポイント ―名文家が教えてくれた極意―

2023年7月1日

 みなさんこんにちは。「かく企画」社員の仮面ライターです。私は昔、新聞の記事を書いていました。その時に、デスクという文章をチェックする人に教えてもらったことをご紹介します。

 たった二つのポイントを意識するだけで文章が良くなりました。たった二つです。

 記事を書く記者だけではなく、企画書や報告書を書く人にもお勧めの内容となっています。

漫然と記事を書いていた時代

 新聞社の記者になるためには、筆記試験をパスしなければなりません。筆記試験には作文がありました。採用される前、現役記者の人に言われたことがあります。

 「作文の文章がうまいかどうかは見ていない。そんなことは期待していない。作文からどんな人かを見ている」

 と言うわけで、私の場合は文章が下手なまま採用されたのではないかと思います。どんな人に見えたかはわかりませんが、考えると怖いのでやめておきます。

 実際に入社してみると、文章の書き方には苦労しました。「人の文章を読め」と言われますが勘所がわかりませんでした。

 新人記者が最も多く書く文章は、警察が発表した事件と事故についてです。これは、ほぼ定型文があります。私の場合は、その定型文の書き方ですらなかなか覚えられませんでした。

「名文家」と出会う

 社内で「名文家」で知られている人が私にとって2人目のデスクになりました。この方は現在、退職しています。退職後はフリーのライターとして著作がいくつもあり、時々テレビにも出る有名人です。

 幸運なことに、この人に文章の書き方を教えてもらうことが出来ました。

ひらがなと余白

 私が原稿(※デスクが監修する前は新聞社では原稿と言います)をデスクに渡すと、大画面に映し出します。新聞記事の一行当たりの文字数は決められているのですが、編集用の画面でそれよりも倍くらいの文字数に設定し、私の原稿を見ました。

 その時にデスクが見ていたのが、ひらがなを使っているかということと、余白があるかということでした。

 漢字は少ない文字数でひらがなよりも情報を伝えることが出来る便利な文字です。ただ、漢字が多くなると、文章を少し離して見たときに、原稿が黒っぽくなります。

 また、改行をする時、一行の下の方まで書くと、原稿全体が長い帯のようになります。

 私が教わったデスクは、ひらがなをなるべく使うように文章を直していました。そして、改行を適宜入れて、文章を切り、同時に余白が出来るようにしていました。

 今回のブログでは、私が出会ったデスクの順番に「極意」を紹介します。後で紹介するポイントよりも、こちらの方がやや上級編です。

 漢字で書いている事柄をひらがなで書くと、どうしても行数が増えてしまうという欠点があります。完全に行数を同じにすることは難しいのですが、行数の制限が緩やかであれば是非、このポイントを実践してみて下さい。そして、慣れてくると、それほど行数を増やすことなく、読みやすい文章が書けるようになります。

伝説の事件記者が教えてくれた極意

 二つ目のポイントです。こちらの方がすぐに身につけられるかと思います。

 私は二カ所目の赴任地で伝説の事件記者だった人がデスクでした。見た目は怖く、言葉も怖い。でも、部下思いの人でした。デスクより上の人が細かいことを言ってきたり、記者がミスをしたりしても、すべて責任を負ってくれる人でした。

 この「怖い」デスクに教わったことは次のことです。

一文は短く

 文章が短い方が読みやすく、読者の頭に入りやすいと言われました。「私は遅刻したが、上司に怒られなかった」と書くよりは、「私は遅刻した。だが、上司に怒られなかった」と、意識的に文章を二つに分けるように言われました。

 また、情報が多い一文は、思い切って文章を分けてしまうように言われました。

 例文です。

 「日本のプロ野球では二軍に当たるアメリカ大リーグのマイナーリーグの中で最も上位に位置するトリプルAのチームでプレーする日本人選手が昨夜、3日連続で1試合に複数安打を打つマルチヒットを放った」

 こんな文章を書いたら、間違えなく怒鳴られました。書き直してみます。

 「アメリカ大リーグには、日本のプロ野球で二軍に相当するマイナーリーグがある。そのマイナーリーグはいくつかのレベルに分かれている。その最も上位に位置するトリプルAで日本選手が活躍した。その選手は昨夜、3日連続でマルチヒットを記録。マルチヒットとは、1試合に複数安打を打つことである」

おまけ ―読者がひいてしまう文章はNG―

 読みやすい文章のポイント二つは上記に紹介した通りです。

 もう一つ、「怖い」デスクに何度も注意されたポイントも紹介します。

修飾語を適当に使うと「ひく」

 「雨が降っていた。そこにかわいそうな子猫が捨てられていた」

このような文章を書くと、またしても雷が落ちました。

 「適当に修飾語を使って自分が文章に酔っているような書き方をすると読者の気持ちがひく」と、厳しく指導されました。どこが良くないと思いますか?

 注意されたのは、「かわいそう」「美しい」などの修飾語を使うなら、具体的にどういうことかを書くという点です。

 上記の例であれば以下のように書き直します。

 「土砂降りの冷たい雨が降っていた。その雨に打たれながら、生後間もない捨て猫が震えていた」

 ほんのちょっとの言葉を足すだけで、「かわいそう」という根拠がわかります。

まとめ

 今回ご紹介したのは、私の文章が良くなった助言です。人によっては違うことを注意して書いているかも知れません。実際に、紹介した2点以外にもポイントはあります。

 ただ、あれやこれやと意識するより、まずはこの2点を実践することをオススメしたいと思います。

 今日の私の文章が読みやすければ良いのですが……。

働き方

Posted by かく企画