本音を引き出すインタビュー術③

新聞記者

 こんにちは仮面ライターです。今回もインタビューについても話です。敏腕記者でなかった私がこういう話を書くのは恥ずかしい限りですが、失敗ばかりしていた記者だから書いていると思って読んでいただけると幸いです。

応用編1:脱線した話を「本筋」にする

 どれだけ準備をしても、話が予定していたテーマから大きく脱線してしまうことはあります。しかし、その脱線の中にこそ、相手が今一番熱量を持っているテーマが隠されていることも少なくありません。

 頭ごなしに話を元に戻すのではなく、脱線話をまずは聞いてみる。もしかすると、それが本筋になるかもしれません。

  • 相手の熱量が高い脱線の場合:「今の〇〇というお話、一見すると今回のテーマとは違うように思えますが、実は根底にある『〇〇を大切にする』という姿勢において、完全に繋がっていますね」。相手の脱線話を肯定し、インタビューのメインテーマ(軸)と結びつけることで、記事の深みを増す材料にします。
  • 単純に話が逸れすぎてしまった場合:「非常に興味深いお話で引き込まれてしまいました。今の『〇〇』という視点を踏まえた上で、あえて先ほどの〇〇の話に戻すと、見え方が変わってきそうなのですが……」。「面白かった」という敬意を払いつつ、相手の今の視野(脱線によって広がった視点)を維持したまま、元の質問へ戻します。

 他社の記者と囲み取材をしていると、脱線した瞬間に「それはちょっと関係ないので」とばっさり、切ってしまう勇者がいました。私は、話が脱線したのを修正できずに、(本人には申しわけないのですが)どうでもいい話を聞くハメになったことはしょっちゅうです。

 最長で二時間、関係ない話をきいたことがあります。その取材は、一人暮らしの高齢の方へのインタビューで自宅にお邪魔しました。なんど修正しても話は脱線しました。最終的に記事は書けたのですが、夜遅くまでの取材となり、ヘトヘトでした。

応用編2:「答えない相手」の防壁を崩す

 インタビューの現場は、常に好意的な対話ばかりとは限りません。時には不祥事の疑いがある政治家や、当局の調査を受けた企業経営者など、「本当のことを語りたくない」「追及をかわしたい」という強い防衛心理を持った相手と対峙することもあります。

 こうした相手は、直球の質問に対して「イエス」とも「ノー」とも言わず、論点をずらしたり、曖昧な言葉でお茶を濁したりして、正面から答えようとしません。

 そんな「答えない相手」の防壁に風穴を開けるのが、「復唱+沈黙」という方法です。

 例えば、「当局から事情聴取を受けましたね」という問いに対し、相手が「現在は適切な対応を進めている段階です」などと、答えにならない回答で逃げようとしたとします。その際、記者はあえて次のように動きます。

  • ステップ1:相手の言葉をそのまま「復唱」する:「……現在は、適切な対応を進めている段階、ですか」
  • ステップ2:そのまま「沈黙」を維持する :感情を交えず、相手が口にした「答えになっていない答え」をそのまま鏡のように突き返し、あえてそこに決定的な「沈黙の空白」を作ります。

 目的は、一撃で白状させることではありません。人間は、自分が発した不誠実な言葉や誤魔化しの言葉をそのまま復唱され、その後に重い沈黙が続くと、心理的な耐え切れなさから勝手に次の言葉を重ねて自滅していくことが少なからずあるのです。

 言い訳を重ねるうちに、矛盾や新たな事実のヒントがこぼれ落ちることがあります。

 また、仮に相手が徹底して口を閉ざしたとしても、この「復唱+沈黙」の瞬間に見せる相手の表情の歪み、手の仕草、一瞬の目線の泳ぎといった非言語情報は、取材者を有利にさせます。

 動揺のサインを見逃さず観察することで、「今、どの話題に最も触れられたくないのか」という相手の弱点を見つけるきっかけになります。そうすると、次の質問をする記者が有利になりことがあります。

まとめ

 インタビューの本質は、あらかじめ用意した質問シートの空欄を埋めていく作業ではありません。客観的な準備と、当日の丁寧な対話を通じて、相手の頭の中にあった断片的な思考を、1本の「記事(企画)」として一緒に編み上げていく共同作業です。

 「楽しかった」という表面的な雑談の記憶ではなく、「自分でも気づいていなかった言葉を引き出してもらえた」という驚きを相手に残せたとき、そのインタビューは必ず、読者の心を動かす熱量を持った原稿になります。

 次に誰かの話を聞くときは、ぜひ手元にいくつかの引き出しを忍ばせて、相手の言葉の奥にある本音に耳を澄ませてみてください。

 昔の私を知っている人が読んだら、笑うだろうなぁ。あぁ、恥ずかしい。

新聞記者

Posted by kamenw