転職先にあなたの席はありません ―その理由と体験談―
転職先への出勤初日。意気揚々と新しい職場に向かったものの、オフィスには自分の席はなかった…
こんな経験をした方、それなりにいらっしゃるのではないでしょうか。
「いやいや、さすがにそのようなことはないだろう」。転職の経験がない方はそのように思われるかもしれません。
しかし私は、転職先に自分の席がないことは、さほど珍しいことではないと思います。たとえ席があったとしても、居場所がないことがあります。
そんな状況下では、構ってもらえないという前提で動くこと。自ら席を用意したり、仕事を探したりするなど、主体的に振る舞っていくしかありません。
こんにちは、社長の藤田です。今回は、転職先での自分の座席、居場所について考えたいと思います。
席がない、居場所がないことは転職に限らず、社内異動の際にもあり得ること。私の経験についても言及します。
転職先に自分の席がない理由
転職先に自分の席がない理由や背景はいろいろ考えられますが、今回は以下の5点について説明します。
・新卒者に比べ影が薄い
・一人でできると思われている
・転職者を相手にする暇がない
・よそ者への警戒
・どう接すれば良いか分からない
会社に所属している方にとっては、転職者に対するイメージとして、どれも心当たりがあるのではないでしょうか。
新卒者に比べ影が薄い
今なお終身雇用が根強く残る日本企業において、転職者というのは影が薄い存在です。
新卒社員の入社は通常4月1日ですが、転職者はそうとは限りません。周囲の人から「あれ、いつの間にいたんだ?」と思われている人も多いはず。
席を用意するのを忘れられても、仕方がないかもしれません。
一人でできると思われている
数日前まで学生だった新卒社員。人によっては、アルバイトなどの勤労経験がゼロの場合もあります。企業は研修を施し、社会人としての心得や会社のルールを教え、一刻も早く使い物になるように尽力します。
転職者はある程度社会人を経験している以上、ある程度スキルがあると思われていますし、スキルがあるのが当然。したがって「一人で何とかする」と思われ、放置される傾向にあります。
転職者を相手にする暇がない
転職者が入社する当日でも、企業は通常通り営業しています。それぞれの社員は自分の仕事をこなさなければなりません。みんな、自分のことで精一杯です。
こんな状況ですから、右も左も分からない新参者に構っている時間はないのが普通。将来のある新卒社員ならいざしらず、老兵を手取り足取り教える余裕はありません。
よそ者への警戒
人間の深層心理として、未知のものに対する恐怖を常に抱いています。この間まで違う職場にいた面識のない人物に対して、警戒を抱くのが普通です。
また、企業は「シークレットの塊」といえるほどさまざまな秘密を抱えています。例えば製造部門なら製造技術や実験データ、研究リポートなど、営業部門なら顧客名簿や販売マニュアル、得意先台帳など。場合によってはコンプライアンスに違反しているものを抱えているかもしれません。
そのような場に、知らない人が突然やってくるというのは、あまり気持ちよいものではないでしょう。
どう接すればよいか分からない
目の前に宇宙人が現れたとします。英国のSF作家H・G・ウェルズが書いた、あのタコのような形の宇宙人です。さて、どのようにコミュニケーションを取りますか。
このように答えられて、適切な答えを出すことができる人は少ないでしょう。未知の生物に対して、人間なら誰しもとまどいを感じてしまうものです。
長らく中途採用をしてこなかった会社にとって、転職者は未知の存在。どう接すればよいか分からないのも無理がありません。
社内の異動先にも席はない ―私のエピソード―
自分の席が用意されていないというのは、何も転職先だけとは限らず、同じ社内の異動先でも十分あることです。
別のブログで書いていますが、私はとある地方新聞社で記者として働いていました。14年目のある日、突然全く畑違いの部署への異動を命じられました。
異動して間もない頃のことを振り返りたいと思います。
ウェルズのタコ型宇宙人だった私
この部署は、入社以来の生えぬき社員がほとんどを占め、私のように記者職の者が途中参入するのは極めてまれでした。
いわば、私はウェルズのタコ状態。タコに対する戸惑いが場を支配し、私は見えない壁というものを少なからず感じていました。さらに私も、自ら壁を作っていたと思います。
何か手伝うことがないか尋ねましたが、特にないとのこと。まあ、右も左も分からない人間に、任せられることはなかったでしょう。
手持ち無沙汰の私は、道路地図を見て、地理を覚えることとしました。営業職場でしたので、土地勘があれば役に立つかもしれないと考えました。たまに雑用を頼まれることがありましたが、何もすることがない時間は、ひたすら地図を眺めていました。
役員の一喝で突如始まった研修
地図を眺めはじめて、ちょうど5日目の朝でした。
会社の役員が私の席を通り、声を掛けてくださいました。
おう、何をやっているんだ
は、はい。地図を見ています
そうかー、勉強しているんだなあー
役員は笑顔を見せ、去って行きました。
そしてその足で、私の上司たち(数名いました)の席に近くやいなや、表情を変えてこのように言い放ちました。
おい、お前ら。一体何をさせているんだ。何にも教えとらんのか!
その声は、ドスが利いていて、かつよく響く声でした。強面な方だったので、相当凄みがあったと思います。
そこから、私の研修メニューが突貫工事で組み立てられました。
主体的に動くべきだった
私自身、異動したのは37歳。いい大人です。いま振り返ると、甘えがあったと思います。受け入れる方も、得体の知れない“新人”にとまどいがあったわけですから、現状でできることをもっと探すなど、私が主体的に動くべきだったと思います。
ちなみに、その後は何かと指導していただき、大変お世話になったことを強調しておきます。
まとめ
今回のまとめです。どれも大事なので、今回は太字で表記します。
・転職先に自分の席が用意されていないことがある
・場合によっては社内の異動先にも席がないことも
・自らが主体的に動いていくしかない
自分の席がないのは普通のこと。それぐらいの気持ちを持って、新しい職場に臨むべきだと思います。転職の際は、それなりの覚悟を持ったほうがよいでしょう。
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