【上級編】子どもに賞を取らせる読書感想文の書き方5選
こんにちは、社長の藤田です。2002年から14年間、地方新聞社で記者職に従事。2021年からフリーライターとして活動しています。通算16年間、書く仕事に従事しています。
以前の文章で、夏休みの宿題の定番・読書感想文の書き方について紹介したことがあります。
短い文(パーツ)をつなぎ合わせて一つの感想文をつくることや、①本のあらすじ②感動したことや新たに知ったこと③それを踏まえて自分はどうしたいか、の3段構成にすると書きやすいことを説明しました。どちらかと言えば、読書感想文が苦手な子ども向けのアドバイスだったと言えます。
うちの子どもにはハイレベルな感想文を書かせたいわ。もっといいアドバイスはないの
分かりきったことを書くな! 新聞社にいた時の残り滓のネタを小出しにしやがって
そんな声にお答えするべく、今回は上級者向けのテクニックを紹介したいと思います。
目標はズバリ「入賞」です。文部科学大臣賞まではいかないと思いますが、市町村の賞レベルは狙えるのではないかと思います。お子さまに指導する際の参考にしてもらえればうれしいです。
なお今回は、新美南吉(1913-1943年)の童話『ごんぎつね』と、三浦綾子さん(1922-1999年)の小説『塩狩峠』を題材に、書き方の例を挙げてみたいと思います。ごんぎつねを選んだのは、親子双方にとってあらすじが知られている作品であるから。塩狩峠は、高校生にぜひ読んでもらいたいから選びました。
そして両作品とも、私が今まで読んで感動した本十傑に間違いなく入る作品です。
それでは、ご笑覧ください。
「」(かぎ括弧)から書き出す
読み手の心を引きつけるのに、文章の書き出しはとても重要です。「木曽路はすべて山の中である」「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」など、不朽の名作は必ずと言っていいほど印象的な始まり方をしています。
読書感想文において、多くの小学生たちが「私は、○○という本を読みました」と書き出しています。そこで、あえてかぎ括弧で始まる文章にすることで、他の人との差別化ができます。
物語の中で印象に残ったせりふや、本に対する自分の心の叫びなどを「」(かぎ括弧)で囲み、文章の始めに置いてみてはいかがでしょうか。
<ごんぎつねの感想例>
「ごん、お前だったのか」
この言葉から、すごくくやんでいる兵十の気持ちがよく分かりました。
私は、『ごんぎつね』を読んで、……(以下続く)
場面から書き出す
せりふの書き出しと並んで効果的なのが、場面の書き出しです。例えば『ごんぎつね』の場合、ごんがいたずらをする場面のほか、兵十の母親の葬儀、兵十に火縄銃で撃たれるごんの最期など、効果的に書き出せる名場面が目白押しです。
ここで重要なのは、物語中の文章をそのまま引用しないこと。自分の言葉で書くことで、オリジナリティーと説得力のある文章に仕上がります。
<ごんぎつねの感想例>
毎日のようにくりやまつたけが自分の家に投げこまれるのを見て、兵十はとてもふしぎな気持ちになったことでしょう。
私は、『ごんぎつね』を読んで、……(以下続く)
<塩狩峠の感想例>
連結が外れ、急な坂を逆走する列車。考えただけでも身震いがするシチュエーションだ。
そんな中、主人公の永野信夫は、乗客を守るために……(以下続く)
感動した点を前に持ってくる
読書感想文の構成として、①本のあらすじ②感動したことや新たに知ったこと③それを踏まえて自分はどうしたいか、の順にすると書きやすいと説明しました。
しかし、②をあえて文章の始めに持って行くという“変化球”で書くことにより、読書感想文の主役である感動したことを引き立てることができます。
具体的には、感動した部分・場面を冒頭に置き、次に読んだ本のあらすじ(長くなりすぎないように!)を説明。さらに、感動した理由を詳しく説明し、最後に自分がどうしたいかを述べて締めます。
<ごんぎつねの感想例>
「ごん、お前だったのか」
この言葉から、すごくくやんでいる兵十の気持ちがよく分かりました。兵十におくりものをおくりつづけていたきつねのごんが、その兵十に火なわじゅうでうたれてしまった最後の場面を読んで、私はとても……な気持ちになりました。
私が読んだ『ごんぎつね』は、……というお話です。……
社会がどうあるべきかについて盛り込む
3段構成の読書感想文では、②の本を読んだ感想を踏まえて、③で自分はどうしたいかを表明します。
この③の部分で、自分がどうするかだけでなく、社会がどうあるべきかを書くと、文章の説得力が非常に高まります。
どちらかといえば中高生向けのテクニック。小学生に「社会がどうあるべきか」を考えさえるのは難しいかもしれません。そんな場合は「大人の人はどのようにすればよいと思う」と問いかけてみてください。もし本人なりの社会に対する考えが出てくれば、それを感想文に落とし込みましょう。
<塩狩峠の感想例>
(最後の段落)
長野の身を挺した行動は、結果的に多くの人を救うこととなった。だからといって、自己犠牲を強制し、過度に美化する社会については、私は同意しかねる。個性を尊重し、自分が自分らしく生きるために、社会はどうあるべきか、そして自分はどう行動するべきか、これからも自問自答し続けたい。
「問い」-「本を読んで得られた答え」の2段構成はお勧めしない
インターネットで読書感想文について調べている際によく見かけるのですが、特に中高生向けのサイトで、「本の内容に関する問いや疑問」と「それに対する答え」の2段構成で書く方法を推奨しています。
<塩狩峠の感想例>
(書き出し)
「生きる」ということは、どういうことなのだろうか? 三浦綾子の小説『塩狩峠』を読みながら、私はこのことを痛切に考えされられた。
……中略……
(最後の段落)
キリスト教を信仰して以降の長野の行動から、生きるとは他者を生かすことではないだろうかと考える。その点で、永野の最期は「生」そのものの行動だと言える。私も永野の生き方を見習い、他者への思いやりを忘れずに日々暮らしていきたいと思う。
確かに有効だと思います。それでも私は、読書感想文の書き方としてはあまりお勧めをしません。
理由は次の二つです。
①結論ありきの文章になり、面白味に欠ける
②本と関係のない自分のエピソードを入れがち
特にある程度の文字数が求められている場合、②に陥りがちです。自分のエピソードが主になると、感想文ではなくエッセーになってしまいます。
まとめ
今回は、読書感想文の上級者向けのテクニックでした。
①「」(かぎ括弧)から書き出す
②場面から書き出す
③感動した点を前に持ってくる
④社会がどうあるべきかについて盛り込む
⑤「問い」-「本を読んで得られた答え」の2段構成はお勧めしない
まずはとりあえず、書いてみることだと思います。
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