フリーランスでも再就職手当をもらえる ー手続き方法を紹介ー

2023年3月30日

 会社を辞めた後、再び就職した際にもらえるかもしれない「再就職手当」について書きたいと思います。

 以前、知人から会社を辞めたとの連絡を受け、アウトプットを兼ねて失業手当の受給手続きについてポイントを紹介しました。

https://kaku-kikaku.com/unemployment-benefits

 この失業手当とは別に、早期に再就職して一定の条件を満たした場合にもらうことができるのが再就職手当です。早く就職するほど支給額は多くなりますが、早すぎると支給されないので注意が必要です。

 再就職手当は、新しい企業に就職した会社員はもちろん、新たに起業した自営業者やフリーランスももらうことができます。結果的にフリーランスになった私自身も、紆余曲折を経て51万4080円をもらうことができましたので、そのときのことを振り返りたいと思います。

会社への転職で再就職手当をもらうには

 再就職手当を受けるにはさまざまな支給要件がありますが、特に気をつけたいポイントは以下の三つ。

<ポイント①>7日の待機期間満了後に就職したこと
<ポイント②>自己都合退職の場合、待機期間満了後1カ月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で就職したこと
<ポイント③>1年を超えて勤務することが確実であること

 ①について、求職の申し込みを行った日から7日間は「空白の期間」として、一切働くことができません。この期間に就職しても再就職手当はもらえません。

 ②については少々分かりづらいのですが、待機期間後最初の1カ月間は、ハローワークによる就職や、リクルートエージェントなどの転職エージェントによる転職のみ再就職手当が認められます。「リクナビNEXT」や「マイナビ転職」などの求人サイト、縁故採用や直接申し込みなどによる転職は対象外となります。

 手続きとしては、ハローワークに職が決まったことを届け出る際に、再就職手当を受給したいと申し出てください。必要な書類は以下の通り。

・再就職手当支給申請書(再就職先に記入してもらう必要があります)
・雇用保険受給資格者証(求職手続き後、雇用保険説明会でハローワークからもらう書類)

 書類は窓口で渡すほか、郵送でもOKです。

【体験談】フリーランスも再就職手当をもらえる

 自営業者、フリーランスが再就職手当を受給するまでの流れは次の通り。かっこ内は、私が実際に行った日付です。大まかなスケジュール感をつかんでいただければと思います。

タイムラインのタイトル
  • 6/30
    職場を退職
  • 7/2
    前職場から離職票をもらう
  • 7/2
    ハローワークで求職申し込み
  • 雇用保険説明会

    コロナのため実施せず

  • 7/2~7/8
    待機期間
  • 7/20
    失業の認定

    原則として4週に1回

  • 7/29、8/10
    職業相談・仕事探し

    次の失業認定日まで最低2回

  • 8/10
    自営に向け準備することを申し出る
  • 8/30
    税務署に開業届を提出し、その足でハローワークに開業を報告
  • 10/26
    支給に必要な書類を郵送
  • 11/5
    書類不備の電話連絡
  • 11/9
    書類の再提出
  • 11/22
    支給決定のお知らせ
  • 11/25
    再就職手当が振り込まれる

自営の申し出は「7日+1カ月後」を厳守

 さまざまなサイトで書かれてありますが、退職の理由が独立開業の場合、再就職手当はもらえません。求職申し込み(上の表では③)のときに「起業する予定である」「フリーランスになるつもり」などと言ってしまうと、もらえなくなる場合がありますのでご注意ください。

 また、自己都合退職の場合、1カ月以内に起業をすると再就職手当の対象外となりますのでご注意ください。必ず、待機期間満了後1カ月間してから自営業の申し出をしてください。

 会社への転職の場合、待機期間満了後1カ月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で就職しないと再就職手当がもらえません。この規定が、自営についても当てはまるからです。

 私は、退職前、そして退職後から再就職を検討し、ハローワークでも職業相談を受けましたが、満足のいく転職先と出会うことができず、やむを得ずフリーランスとして独立することにしました。そのために、再就職手当の対象となったのです。

自営を申し出て、再就職手当の手続きを開始

 待機期間満了から1カ月と2日が過ぎた8月10日、私は自営に向け準備を進めることを申し出ました。この時点で、失業手当の受給資格を喪失。雇用保険受給資格者証には「法第4条3項不該当 自営準備専念の為 就職申告(開業届)案内」と記録されました。

 必要な物品の購入など自営の準備を進めたのち、8月30日に税務署へ開業届を提出。その足でハローワークに向かい、開業届の写しを提示しました(たぶんハローワークでコピーが取られます)。ここから、再就職手当の受給に向けての手続きが始まります。

 必要な書類は、転職の場合と同じですが、自営の場合は「事業実態が確認できる書類」が必要になります。ペーパーカンパニーの立ち上げなどによる不正受給を防ぐためのものだと思われますが、この書類の準備が最大の関門です。このことについては次の項以降で掘り下げます。

 再就職手当の申請は、自営開始の日から1カ月以内に持参または郵送により提出しなくてはいけない、とされています。しかし自営の場合、仕事が軌道に乗るまで準備などに時間がかかることから、大概の場合は1カ月を過ぎても受理されます。私の場合も、開業からほぼ2カ月経過した10月26日に郵送で申請しました。

「事業実態が確認できる書類」とは

 さて、自営業者やフリーランスが再就職手当を受給するために必要な「事業実態が確認できる書類」について触れたいと思います。

 具体的には、次のような書類です。

①営業許可証、各種免許証
②事務所などの賃貸借契約書
③備品の購入や家賃の支払いでもらった領収書
④労働者名簿
⑤業務委託契約書、請負契約書
⑥売り上げが確認できる領収書、請求書、見積書など

 ハローワークは提出書類からチェックするのは、1年以上事業が継続できるかどうか。転職による再就職手当の支給要件「1年を超えて勤務することが確実であること」は、自営の場合にも適応されます。契約期間の短い契約書は、却下される場合がありますので注意して下さい。

 私の場合、オフィスを構えたり人を雇ったりはせず、執筆は一人で自宅にて行っているので、①~④の書類は手元になく、⑤⑥の書類のみとなります。当時、三つのクライアントと業務委託契約書を交わしていたので、その写しと、クラウドソーシングサイト「ランサーズ」で請け負った仕事の一覧表(ランサーズの個人画面をスクリーンショットしたもの)を送りました。

押印、直筆署名がなく書類は不受理に

 再就職手当を支給するかどうかの結果は、申請から概ね1カ月以内と言われています。私の元へは、2週間後の11月5日に電話で連絡がありました。「提出した委託契約書に押印がなく、署名も直筆でないので受理はできない」とのことでした。

 私が経験した限り、ライティング業務の委託契約は電子署名サービスなどで交わすのが主流になっています。「契約書を郵送するので、捺印して返信ください」というのは一部の紙媒体ではまだ残っていますが、ウェブライティングになると全くと言っていいほどありません。ましてや直筆で署名というのは、今まで20社以上のクライアントとやりとりした中では1回もありません。

 私は、電子署名が主流である旨説明しましたが、向こうは「決まりですので」の一点張り。「それではどうすればよいですか」と尋ねても「押印の上、直筆で署名してください」の繰り返しでした。

 ちなみに、ランサーズで請け負った仕事の一覧表についても、何の証明にもならない、とのことでした。

書類の追加提出、そして受給決定

 電話で話をしても埒があかないので、4日後の11月9日、追加書類を用意してハローワークに行きました。

 追加書類は、電子署名サービスに交付してもらった「この契約は効果があります」の書類、そしてクライアントからの入金が確認できる貯金通帳の写しです。通帳の写しについては、以前ハローワークの人から「そこまでプライバシー性の高いものは提出しなくてもよい」と言われていたのですが、入金部分以外を黒塗りにして提出しました。

 ハローワークの窓口で応対したのは、先日の電話とは違う人でした。私は電話のときと同じように電子署名について説明しました。長期戦を想定していたのですが、窓口の人は「最近はそーなんですねー。分かりました。ひとまず書類をお預かりして検討します。また電話するかもしれません」と言い、やり取りはわずか数分で終わりました。

 さらに約2週間後、再就職手当の支給決定についての通知が郵送されました。決定は11月22日付。そして11月25日、51万4080円が所定の口座に振り込まれていました。

エピローグと感想

 再就職手当の受給は1年以上事業を継続することが要件となり、もし1年もたたないうちに自営を辞めた場合は変換しなければいけません。受給後、ハローワークから事業を継続しているか確認の電話がかかってくるとのことですが、私の元には結局電話はありませんでした。

 繰り返しとなりますが、フリーライターの再就職手当の受給で最も手間取ったのが、印章付きの契約書の確保でした。私は「この契約は効果があります」の書類と貯金通帳の写しで認められましたが、ケースによっては認定されない場合も考えられます。一方で、印章や直筆署名のない書類で認定されることがあるかもしれません。

 政府はデジタル庁を創設し、印章の省略化を進めていますが、残念ながら国の出先機関の末端まで浸透していませんでした。フリーランスという新しい働き方についての理解も、厚生労働省の出先機関にもかかわらずまだまだ不十分だと痛感しました。

 とはいえ、結果としては再就職手当をいただくことができ、非常に助かりました。手続きは面倒かもしれませんが、要件をクリアする人はぜひとも再就職手当の受給をおすすめします。

退職

Posted by かく企画