フリーランス失敗に備えての「撤退戦略」

フリーランスの仕事をしてみたいが、失敗したらどうしよう

けがや病気など、フリーランスとして仕事ができなくなったときのことも考えないと

 こんにちは、「かく企画」社長の藤田です。2021年に会社を退職し、現在はフリーランスのライターとして活動しています。

 「商売は水物」とよく言いますが、会社経営に限った話でなくフリーランスや個人事業主にも当てはまります。いつも案件があるとは限らず、会社勤めと違って社会保障が弱いことから、けがや病気で仕事が立ちゆかなくなるリスクと常に隣り合わせです。

 これまでもブログで、フリーランスの心構え、リスク、お金について自分なりの情報を発信してきました。今回は、不幸にもフリーランスの仕事に失敗・挫折した場合に取るべき撤退戦略と、そのための準備について書こうと思います。

 適切なリスクを取るとともに、うまくいかなかった場合の「プランB」を用意しておけば再チャレンジは可能。一方で撤退戦略を描かずにノープランで臨めば、失敗の先に破滅が待っています。

 会社勤めからフリーランスにチャレンジしたいが、リスクが怖くて一歩踏み出せない方の参考にしてもらえればうれしいです。

フリーランスに失敗した場合の撤退戦略4選

 フリーランスの仕事を辞めた後に取る撤退戦略として、主に次の四つがあります。

①別の会社に再就職する
②前の職場に戻る「出戻り転職」
③配偶者の扶養に入る
④実家に帰る

 ①が最もポピュラーな選択肢で、②は最近増えているようです。③は子育て世帯、④は親がバリバリ働いている若い層なら検討に値するのではないでしょうか。

撤退戦略ごとに準備しておくこと

 それでは、①~④の撤退戦略ごとに、私たちが準備しておくべきことを挙げていきます。

別の会社に再就職する

 会社を退職して独立したけれどうまくいかず、やむを得ず他の会社に就職するパターンです。フリーランスや自営で利益が出ず、一定の給与を安定してもらうことができるサラリーマンなどに戻ることは、何ら不合理ではありません。

 この撤退戦略に向けて準備しておくべきことは、次の二つです。

別の会社への再就職できるために心掛けること

①資格を取得し、スキルを磨き続ける
②組織での勤務を想定し、他者とリアルなコミュニケーションを取るようにする

 資格を取得したりスキルを磨き続けたりすることで、自分の資産価値を保ち続けることが肝要です。「フリーランスやってました」だけでは満足のいく会社に再就職することは難しく、結局薄給で激務の仕事に就かざるをえないことになります。

 別の文章にも書きましたが、私は会社を辞めたのをきっかけに、挫折していた簿記の勉強を再開。2021年12月に日商簿記3級の資格を、翌年6月に2級を取得しました。フリーランスで確定申告するだけなら3級で十分なのですが、万一フリーランスの仕事を辞めて就職をする際、資格があった方が有利と考え、あえてオーバースペックな2級の勉強をしました。

 また就職に備えては、他人と直接会ったり、電話で話をしたりするなど、なるべくリアルなコミュニケーションを取るようにすることも重要です。

 特に取材を伴わないフリーライターの仕事をしていると、Slack、Chatworkなどのコミュニケーションツールや電子メールで意思疎通をしがちです。テレワークが浸透したとはいえ、会社に就職するとフリーランスの何倍ものコミュニケーションが求められますので、新天地の職場に順応できるようにしておくのがよいです。

前の職場に戻る「出戻り転職」

 近年、中途退職した人がフリーランスや転職を経験したのち、元の職場に出戻るケースが増えているようです。社会全体に人手不足感が高まる中、企業側にも一度辞めた人の再就職を歓迎する風潮があるようで、出戻り転職を制度化している会社も多くあります。

 私がかつて務めていた会社も出戻り転職の制度があり、実際に利用した人もいました。私より先に辞めた同僚も、人事担当者から制度の説明を受け「いつでも戻ってくればよいから」と言葉を欠けられたそうです。優秀な人間でしたので当然でしょう。

 自分が辞める際も出戻り転職について説明があるのだろうと思っていましたが、一切ありませんでした。会社側も惜しい人材、そうでない人材といろいろあるようです。

 話がそれましたが、前の職場に戻る撤退戦略で、心掛けることはただ一つ。

前の職場へ戻るために心掛けること

・円満退職

 これに尽きます。

 円満退職をする、しないにかかわらず言えることですが、どんなに会社に不満があっても、自分によほどの自信がない限り、円満退職するに越したことはありません。

 退職後も、前に勤めていた企業とは思った以上につながりが保たれます。フリーランスの場合、元同僚から仕事の誘いの連絡があったり、また仕事でなくても飲み会やゴルフの誘いを受けたりすることも考えられます。

 出戻り転職の説明がなかった私ですが、この稿を書いている現在、フリーライターとして前の職場から案件をいただいています。不忠の臣に対しこのような厚情を賜り、ただただ頭の下がる思いです。

配偶者の扶養に入る

 配偶者の扶養に入り、家事や子育てに専念しつつ、最低限のフリーランスの仕事だけをこなす撤退戦略です。ただ、賃金が上がらない国・日本においては、配偶者の稼ぎがよほど良くない限り現実的ではないかもしれません。

 心掛けることは以下の通り。

配偶者の扶養に入るために心掛けること

・配偶者が頑張れる環境をつくる

 仕事が休みの日にゆっくり休んでもらえるような家庭環境を整えることや、日頃から家事などを積極的に行うことなどが求められます。

 この撤退戦略、私は考えていなかったようなのですが、勤め人をしている妻は想定していたようでした。フリーランスを始めたころの私たちの会話です。

妻

仕事がうまくいかなかったら、私の扶養に入ればいいから

私

バーロー! 最初からそんな小さな志でフリーランスなどできるものか。俺はお前の扶養になんぞ入らねぇからな

 実際はもっとマイルドに言いましたが、当時は妻の申し出を固持しました。ただ今になって思うのですが、妻の思いやりにもう少し感謝してもよかったのかもしれません。

実家に帰る

 実家が持ち家の場合は、住んでいるアパート・マンションを引き払って親元に戻ることで、家賃や光熱水費などの固定費や食費を節約することができます。転職、またはフリーランスの再起に向けチャンスをうかがい、来るべき時に備えることができます。

 まさに「雌伏雄飛」という言葉がしっくり来るのですが、ジェンダーレス社会の昨今ではあまりふさわしくないかもしれません。

 この撤退戦略で心掛けておくことは、次の二つ。

実家へ帰るために心掛けること

①親を大切にする
②自己肯定感を持ち続ける

 当然ですが、親との関係が悪ければ実家に戻ることはできず、この撤退戦略は日頃から親に忠孝を尽くすことが前提となります。元勤め先との関係でもそうでしたが、立場が不安定なフリーランスとして働く以上、全方位外交を展開していろんな人と友好な関係を保っておくことが肝要です。

 また夢破れて実家に戻ると、ともすれば自分を否定しがちです。「自分はダメな人間だ」「親は自分を疎んじている」「親戚に合わせる顔がない」などと考えていては転職、またはフリーランスの再起にマイナスとなります。

 ネガティブな感情を払拭しつつ、失敗した要因を冷静に分析して日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えましょう。

まとめ

 今回は、フリーランスの仕事に失敗・挫折した場合に取るべき撤退戦略と、そのための準備についてでした。

撤退戦略①別の会社に再就職する→資格・スキルを磨き、リアルなコミュニケーションを取る
撤退戦略②前の職場に戻る「出戻り転職」→円満退職を心掛け、前の職場と良い関係を保つ
撤退戦略③配偶者の扶養に入る→家事を積極的に行い、配偶者が頑張れる環境をつくる
撤退戦略④実家に帰る→日頃から親に忠孝を尽くす。自己肯定感を持ち続ける

おまけ 戦国武将とカーリング

 撤退戦略をとることは、恥ずべきことではありません。

 日本の戦国時代の歴史をひもとくと、織田信長家臣の佐久間信盛、武田信玄家臣の高坂昌信(春日虎綱)などのように撤退戦に優れた武将がいます。

 佐久間は「かかれ柴田に退き佐久間」と称され、織田家一の猛将・柴田勝家と並び称されました。高坂は「弾正」という通称を持っていたことから「逃げ弾正」と呼ばれていましたが決して蔑称ではなく、撤退戦が上手だったことで武田四名臣の一人として今も顕彰されています。

 話はがらりと変わりますが「氷上のチェス」と呼ばれる冬のスポーツ・カーリングにおいては、ストーン(あの漬物石のような大きな石のことです)を投げる際に最善策だけでなく必ず次善、次々善策を考えます。

 氷のコンディションなどから思ったところにストーンが滑らなかった場合、ブラシでの氷の掃き方を調整して別のプランを実現させます。

 フリーランスとして生計を立てることが理想であったとしても、常にプランB、プランCを想定し、不測の事態に柔軟に変更できるようにすることが求められます。

 フリーランスとして生計を立てる「プランA」の努力をしながら、上手くいかないときの「プランB」「プランC」に向けた準備をしておきたいものです。