退職金の優遇税制とは? 見直しされるって本当?

退職

 こんにちは、社長の藤田です。当ブログでは、社員の仮面ライターさんの二人による会社という設定で、働き方や書くことなどをテーマに広く情報を発信しています。

 以前、仮面ライターさんが会社をやめる時に受け取る退職金についてのお話を書きました。

 今回のお話は、退職金に課される税金がテーマ。私はこの稿を書く2年前に会社を辞めた際退職金を受け取っています。その際に調べた知識と、その後ニュースで仕入れた情報をもとにまとめてみたいと思います。

 退職金の税制に関して、日本では大きな軽減措置が設けられており、はっきり言って「大甘」な制度です。

 ただし、政府は2023年現在、転職促進の観点からこの優遇税制の見直しを検討していると言われています。

 退職金制度がある会社に勤めている人のうち、退職が目の前に迫っている人、転職を検討している人はもちろん興味があると思います。今の会社で頑張ろうと思っている人にとってもいずれ支給されるものであり、決して他人事ではありません。

 ニュースのトピックとして取り上げられているのを機会に、退職金の優遇税制について理解を深めてみてはいかがでしょうか?

 また本稿では触れませんが、退職金の優遇税制は、iDeCoや小規模企業共済の一時金受け取りの際にも適用されるため、自営業やフリーランスの人にもかかわってきます。こちらについてはまた別の機会で紹介できればと思います。

退職金の課税の仕組みと軽減措置

 退職金の税金は、もらった金額そのものに税金が掛けられるのではなく、実際の金額から一定の控除額などを差し引いた「退職所得」に基づいて算出されます。

 退職所得は、次のような式で算出されます。

退職所得=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2

 退職金は所得であることから、給与やボーナスと同じように所得税や住民税がかかります。しかし、上の式の「退職所得控除額」など、手厚い軽減措置があるために支払う額が少なくなっているのです。

 軽減措置については、大きく三つ。以下で詳しく見ていきます。

退職所得控除

 控除とは「金額などを引き去ること」という意味で、一定の金額を課税対象から免除し、差し引くことを意味します。額が多いほど、税金がお得になるのです。

 退職所得控除額は、以下のように決められています。

 勤続20年以下 40万円×勤続年数  ※ただし80万円に満たない場合は80万円)

 勤続20年超  800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 勤続年数20年までは、1年たつごとに控除額が40万円上がっていきます。私は勤続19年で会社を辞めましたので、40万円×19年=760万円が控除額。

 つまり退職金が760万円以下であれば全額控除となり無税ということになります。実際、しがない地方中小企業の中途退職者が760万円もいただけるはずもなく、退職金に関しては税金を1円も払っていません。(それでも、十分な額を頂戴したと思い感謝しております。前の勤務先の名誉のため)

 さらに、勤続年数が20年を超えると、1年たつごとに控除額が70万円アップしていきます。勤続21年で退職した場合、800万円+70万円(21-20年)=870万円

 つまり21年以上働けば、その分税金を免除される額が急傾斜で増えていく仕組みになっています。

2分の1課税

 通常の税金は、収入金額から控除額を差し引いた額に課されます。しかし退職金の場合は、控除後の額からさらに1/2を乗じて退職所得を算出します。

 つまり、税金の額が通常の計算に比べ半分(実際には累進課税のため、半分以下となることが多い)に抑えられているのです。

分離課税

 所得税は通常、各種所得を合算した上で算出されます。例えば会社につとめながら実家で農業を営んでいる場合、給料+農産物の所得の合計額に税金が課されます。

 ただし退職金の場合、他の所得と区分して税率を計算しています。このことを分離課税と言い、税負担が重くならないというメリットがあります。

政府が見直しを検討する優遇税制

 政府が見直しを検討すると言われているのは、上記の三つのうち①退職所得控除です。

 先にも触れた通り、退職所得控除額は勤続20年を境に急傾斜で増えていく仕組みになります。長く勤めているほど控除額が大きくなっているのです。

 政府は、この20年を境に控除額が増加する制度を撤廃し、勤続年数にかかわらず控除額の増える割合を一律にしようとしていると言われています。

見直しの理由は転職促進

 見直し検討の背景にあるのは、雇用形態や労働市場の変化です。長らく終身雇用が主流だった日本ですが、今や転職が当たり前となっており、会社に所属するだけでなくフリーランスや起業など働くかたちも多様化しています。

 さらに政府は、労働市場の流動化、つまり誰もがいつでも転職しやすい環境にすることで、ITなどの成長分野へ人材を呼び込み、経済の底上げを図ろうとしています。

 年功序列や終身雇用を全体とした雇用を改革するため、長く勤めている人に有利な税制を見直そうとしているのです。

実効性は? 本当に見直しされるの?

 ただ、優遇税制の見直しが本当に転職を促進させるかについては、疑問です。

 実際のところ、転職する・しないの判断に退職金関係が影響することは少ないと思います。「優遇税制により退職金の手取り額が増えるから、転職しない」と言っている人を見聞きしたことがありませんよね。

 また、優遇税制の見直しはあくまで検討段階なので、実際に退職所得控除の制度が変わるかどうかは、この稿を書いている2023年7月時点で未定です。

 とはいえ、慢性的な税収不足に加え、2023年から5年間の防衛費増額など、現政権の政策からは増税の兆しを感じ取れることから、優遇税制は見直しされるのではないかと私は考えています。

まとめ

 今回は、退職金に関する優遇税制についてでした。

退職金の税金は
・退職所得にもとづいて算出される

 退職所得=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2

・三つの軽減措置がある
 ①退職所得控除②2分の1課税③分離課税

・政府により優遇税制の見直しが検討されている

 退職金の優遇税制の他にも、自己都合で退職した際に失業手当の給付まで2カ月かかる仕組みの見直し検討など、政府の政策をみると転職を推進させようという考えが見て取れます。

 これらの動きに対し、今後もアンテナを張っていきたいと考えています。

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Posted by かく企画