「認否を明らかにしない理由」を記者が気にするのはなぜ

 こんにちは、社長の藤田です。

 今回は、読者の方から質問がありましたので、ご紹介したいと思います。

 質問は、当ブログの「事件の容疑者について 警察が認否を明らかにしない理由」の記事についてです。

質問の内容

 いつも、かく企画のブログを楽しみにしています。私は関東在住の20代の男です。

「事件の容疑者について 警察が認否を明らかにしない理由」のブログで質問があります。

 ブログで記者と警察官のやりとりが紹介されています。でも、警察が認否を明らかにせず、その理由を言わないときは、記者はどうしているのでしょうか。

 以前、ネットの報道記事を読んでいたら検察が逮捕したときに、認否を明らかにしていないとだけ書かれていました。警察と検察では違いがあるのでしょうか。

 もう一つ教えて欲しいのは記者が認否を気にするのはなぜですか。そもそもの質問ですみません。

警察が認否を明らかにせず、その理由を言わないとき

 まずは「警察が認否を明らかにせず、その理由を言わないときどうするか」についてお答えいたします。

 容疑者の認否に限らない話ですが、警察を含む行政当局が取材に対して事実の一部を明らかにしないとき、まずは明らかにしない理由を聞きます。「共犯者が逃げてしまう」など、理由に一定の合理性があれば、記事に「警察は捜査に支障を来すとして容疑者の認否を明らかにしていない」書きます。

 ただ、警察担当者や警察も人の子です。質問のように認否を明らかにしないばかりか、ノーコメントを徹底して理由すら緘黙することもしばしばです。

 その場合は、やむを得ませんが「警察は、容疑者の認否を明らかにしていません」と理由を付記せずに書くことになります。

 ただ、オフィシャルな報道発表で認否を明らかにしていなくても、例えば夜討ち朝駆けなど、アンオフィシャルな方法で認否の情報をつかむ場合があります。その場合は「県警は容疑者の認否を明らかにしていないが、関係者の取材によると容疑を認めている(否認している)という」と書きます。

 このようにまどろっこしい言い回しをしている場合は、当局が正式発表していないものの、マスコミの独自取材で情報を得たケースが多いので、取材・執筆した記者を褒めていただければと思います。

検察と警察の違い

 「警察と検察では違いがあるのか」について。

 私は検察を取材した経験がほとんどありませんので、その辺りは分かりません。

 申し訳ございません。

記者が認否を気にするのはなぜか

 最後に「記者が認否を気にするのはなぜか」について

 こちらについては、認否の情報を取ってこないと上司にこっぴどく叱られるからです。

 というのは冗談で、かつてのブログ記事に書いてある通り、容疑者はあくまで推定無罪であるので、認めている・認めていないという唯一の弁明の場を確保するべきという考えからです。

無罪推定の原則
 検察官が被告人の有罪を立証しない限り、被告人に無罪が下される。有罪判決が確定するまでは、何人(なんぴと)も犯罪者として取り扱われない。

 とはいえ、容疑者の認否はあくまで記事を構成する要素の一部分にすぎません。また警察発表という時点で本人からの一次情報ではなく、フィルターが掛けられている可能性もあります。

 取材の人員が限られ、記者に対して効率的な取材が要求されている昨今、容疑者の認否にこだわり続ける余裕はありません。

 このようなこともあり、「警察は、容疑者の認否を明らかにしていません」と安易に書くケースが増えているのかもしれません。

まとめ

 答えになっていますでしょうか?

 私自身、新聞記者の仕事を14年しかしていません。さらに、この文章を書いている時点(2024年4月)時点で8年ものブランクがあるので、私が取材していた頃から取材環境はだいぶ変わっている可能性もあります点をご了承ください。

 今後もニュースに関する素朴な疑問について取り上げていければと思います。

新聞記者

Posted by かく企画