ライターに締め切りを守ってもらうために、クライアントが取るべき「アメとムチ」

フリーランス

クライアント(絵と実際は無関係です)
クライアント(絵と実際は無関係です)

ライターが締め切りを守ってくれない!

 こんにちは、社長の藤田です。かつてとある新聞社に勤めていましたが、2021年に退職。現在はフリーランスのライターとして活動しています。

 先日、仕事でお世話になっているとあるクライアントの方から嘆きの言葉を聞きました。あるライティングの案件を、私を含む何人かのライターに委託しているのですが、その中の一部が締め切りを守らないとのことでした。

 この案件は、やや長めの記事執筆に加えて写真撮影を伴う仕事。私もお引き受けしましたが、「ある程度取材経験を積んでいないと難しいかな」と思った仕事でした。理由を付けては納期の遅延を図るとのことで、話を聞く限り主な要因はライターのスキル不足にあるようでした。

 中には悪びれもせず「他の案件が忙しいので、締め切りに間に合わない」「忘れてました」などと言い放つ者もいたとのこと。あまりのプロ意識のなさには、開いた口が塞がりません。こんなレベルの低い連中(あえて乱暴な言葉を使います)と同列で仕事をしているのかと思うと、情けなさがこみ上げてきます。

 そこで今回は、締め切りを守らないライターへの対処法について書きたいと思います。仕事を発注する立場の皆さまに参考にしていただくと同時に、ライターのレベルの底上げにつながればと思います。

締め切りを守ってもらうには「アメとムチ」で対処

 ライターの立場で言うのも変な感じですが、締め切りを守ってもらうには「アメとムチ」で対処すればよいのではないかと思います。「アメ」とは甘いアメ、「ムチ」とは猛獣使いやSM嬢が使うあの「ムチ」で、つまり甘い面と厳しい面の双方で操縦していくことです。

 具体的には以下の2点です。

・【ムチ】締め切りを守らないライターとの委託契約を打ち切る

・【アメ】十分な報酬で、質の高いライターを集める

 以下、アメとムチについて具体的に説明します。

【ムチ】締め切りを守らないライターとの委託契約を打ち切る

 ライターの落ち度に対しては毅然とした態度で臨むべきです。

 クライアントとライターの関係は、雇用契約でなく委託契約。一定以上の品質のものを、決まった時期までに納入することで、ミッションは完了したことになります。会社に対する従属関係はない一方、契約先の企業に対して大きな責任が伴います。

 皆さんは、わざわざまずいラーメン店で食事をしたり、鮮度の悪いスーパーで肉や魚を買ったりしますでしょうか? そんな店は客足が遠のいてしまい、潰れてしまうのが世の常。それと同じで、ミッションを完遂できないライターには、消えてもらうしかありません。

クビにするために準備しておくこと

 締め切りを守らないライターとの契約を打ち切るには、事前に交わす契約書や仕事の進め方に関して準備をしておく必要があります。

契約書にペナルティーを定める

 クライアントとライターの間で交わす業務委託契約書において、締め切りを守らなかった際のペナルティーを決めておくことで、期間内の納品を促すことができます。

 ペナルティーとして、報酬の減額や、契約の解除などが考えられます。ただし、優越的地位を乱用したり、公序良俗に違反したりするような罰則はそれ自体が無効となりますので、注意が必要です。

締め切りを明確にする

 ライター業務をディレクションする際、納期を具体的に定めておくことも大切です。作業期間、納品日、原稿の修正に費やす期間を明確にしておけば、納期に対する誤解を避けることができます。

 例えば「取材から○営業日以内」「オファーから○日以内」「○月○日午後6時まで」といった要領。このとき、初稿の締め切りなのか、完成品の納期なのかを明示しておくことも重要です。

 締め切りを明確にしておかないと、ライター側も「いつまで書けばよいのか」と戸惑います。中には「少々遅くなってもよいだろう」と、よこしまな感情を抱く者もいるかもしれません。

ライターを確保しておく

 不良ライターをクビにしたところで、代わりの人員を確保しておかないと、仕事が滞ることになります。仕事を依頼できるライターについて、十分な人数を確保しておくことが重要です。

 また、常時複数のライターと委託契約を結んでおけば、そのうち一人が使えなかったとしても他のライターに仕事を振ることが可能です。

【アメ】十分な報酬で、質の高いライターを集める

 一方、私の立場から言わせていただくと、ライターに支払う報酬や委託料を見直すことも必要です。

 具体的には、高い報酬を提示して質の高いライターを集めることや、報酬の額や支払方法を見直すことでモチベーションを高めることなどが考えられます。

 以下、具体例を示して説明します。

仕事に見合う以上の報酬額を提示する

 当然ですが、高い報酬の仕事に対しては、多くのライターから仕事の申し込みがあります。その中から質の高いライターを選別すれば、品質の面でも納期の面でも、クライアントが満足する成果物を得ることができます。

インセンティブを付ける

 報酬の支払い方法を工夫することで、ライターの締め切りを守るモチベーションを高めることも一つの方法です。

 例えば、期限内に納品した場合に追加報酬や奨励金を支払うなど、インセンティブを与えることなどが考えられます。

支払いのタイミングを早くする

 報酬を支払うタイミングはクライアントによって異なります。一般的には検収(納品物が注文通りに仕上がっているか確認すること)が終わった時点で支払われることが多いですが、初稿の提出をもって報酬が支払われる場合や、記事の掲載、サイトのアップまで支払われないこともあります。

 報酬を支払うタイミングを早くすることで、ライターの熱意に火を付けることができるかもしれません。特に資金繰りの悪いライターに有効です。

まとめ

 ライターに締め切りを守ってもらうため、今回挙げた対策は以下の通りです。

締め切りを守らないライターとの委託契約を打ち切る
・契約書にペナルティーを定める
・締め切りを明確にする
・ライターを確保しておく

十分な報酬で、質の高いライターを集める
・見合う以上の報酬額を提示する
・インセンティブを付ける
・支払いのタイミングを早くする

 「アメ」と「ムチ」それぞれの方法を挙げましたが、重視するべきは「ムチ」だと考えます。毅然とした態度で不良ライターを放逐するのが一番です。

 クライアントが加減な態度を示していると、納品するライター側も納期や品質の面でどうしてもいい加減になる傾向にあります。「自分だけ納期を守ってバカらしい」などとモチベーションが下がり、せっかくの良いライターが離れていくことにもなりかねません。

 ライターのガバナンスが効いていないと、よい仕事は生まれません。仕事を発注する限りは、社会人として最低限のルールが守られる環境を作るべきです。