文章のリズムを良くするためのテクニック5選

フリーランス

 こんにちは。「かく企画」社長の藤田です。現在はフリーライターとしてさまざまな記事を書いており、以前は新聞社に勤務していました。文章執筆歴は足かけ17年となります。

 さて、構成が的確で、言葉の並びやテンポが小気味よい文章は、読者を没入させる効果があります。文章にリズムがあれば、心地よく読み進めることができますし、スムーズに内容を理解することができるのです。

 リズムを意識することは、ライターが文章を書く上で重要なポイント。それは新聞記事であれ、ブログであれ、小説やルポライターであれ、同じです。そこで今回は、文章のリズムを良くするために実践すべき具体的な五つのテクニックをご紹介します。

短文と長文をバランス良く組み合わせる

 文章にリズムを生むためには、短文と長文のバランスをうまく取ることが重要。単調にならないように、短文と長文を意識的に使い分けることで、読者に心地よいテンポを提供することができます。

 例えば、長い文で説明した後に、短文で結論を伝えるという構成にすると、ポイントが明確になり、文章が締まります。短文と長文を織り交ぜて使うことでリズムが変化し、読者は自然と文章に引き込まれていくのです。

短文と長文、それぞれの役割

 短い文章を使うと、強調したいポイントや重要なメッセージを際立たせることができます。情報量こそ少なくなるものの、言いたいことを簡潔に伝えることで、逆に読者に鮮明な印象を残す効果があります。

 また、文章にスピード感を与える力を持っており、緊迫した様子や、動きのある人物を表現する際に重宝します。

 一方、長文は、詳細な説明や背景情報を提供する際に有効です。特に、何かを説明したり、複雑な考えを整理して伝えたりする場合、長文を使うことで内容に厚みが出ます。

 その反面、長い文章は読者を疲れさせ、記事からの離脱を招く危険性をはらみます。適度に読点(、)を挿入して、リズムの変化をつけることが大切です。

本能寺の変が2行で終わる歴史小説

 小説家の司馬遼太郎さんに『功名が辻』という作品があります。戦国武将・山内一豊(伊右衛門)と妻の見性院(千代)の物語。長編なのですが、メリハリの利いた文章なので一気に読み進めることができます。

 白眉なのは、本能寺の変のくだりです。

本能寺ノ変がおこった。

 信長が死んだ。

 が、備中高松城攻囲戦にくわわっている伊右衛門は、むろん知らない。ましてこの事件が、かれの生涯に大きな幸運をもたらす契機になろうとは夢にも知らなかった。

司馬遼太郎『功名が辻』鳥毛の槍より抜粋

 戦国時代のハイライトとも言える本能寺の変。たった2行・2文・17字で片付けられていますが、緊迫感がよく伝わる文章です。実際、主人公の伊右衛門は本能寺の変に参戦していないので、この短さでもよいのかもしれません。

 その代わり、変が主人公に与える影響を後続の文章でしっかりと説明しています。

同じ言葉の多用を避ける

 文章にリズムを与えるためには、同じ言葉の多用を避けることが大切です。繰り返し同じ単語やフレーズを使っていると、文章が単調で退屈になり、読者が文章に飽きてしまう可能性があります。これを避けるために、類語・関連語を使う、言い換える、または文の構造を変えるなど、工夫を凝らすことが求められます。

語彙を増やし、類語辞典を活用しよう

 例えば、「重要」という言葉を何度も使っていると、読者にとってその単語が目に付きすぎてしまいます。そんなときは、類語や関連語を活用する方法が有効です。

 上記の場合ですと、「大切」「不可欠」「必要」などが置き換え候補に挙がります。同じ意味を持ちながらも異なる言葉を使うことで、文章が豊かになり、リズムに変化をもたらすことができるのです。

 同じ言葉を繰り返さないためには、語彙や表現方法を豊富にすることが有効です。また、別のブログ記事に書いていますが、類語辞典を活用することもお勧めします。

同じ語尾の連続を避ける

 文章をリズムよく保つためには、同じ語尾が連続しないように工夫することが大切です。同じ語尾がいくつも続くと文章が単調になり、読者の注目を引くことができません。

特に敬体の文章はやっかい

 特に注意すべきなのは、「〜です」「〜ます」などの敬体が連続する場合です。敬体で文章を書いていると、どうしても同じ語尾が続く傾向にあるので、意識して書くことが求められます。

 「~なのです」などの使用、「~だとか」「~だそうです」といった伝聞調、「~しましょう」などの呼び掛けの活用などが有効です。意味を損なわない範囲で「~でした」など時制を変化させることも一つの手になるでしょう。

体言止めは諸刃の剣

 また、時には体言止めを使うことも効果的です。体言止めとは、「〜です」や「〜ます」を使わずに、名詞で文を締める手法。(←まさにこの部分です。)語尾を変えることで、文章に強調や余韻を加えることができます。

 文字数が限られている紙メディアでよく見かけ、特に新聞で多く用いられる体言止めですが、文章が単調になりやすく、ぶっきらぼうで曖昧なイメージを与えることもあります。

 特に私は、新聞社に長く身を置いていたこともあって体言止めを多用する傾向にあり、クライアントの方から修正を求められることがしばしばありますので、気をつけたいと思います。

強調したい点を文頭に置くなど語順を工夫する

 文章のリズムを良くするためには、語順を工夫して強調したいポイントを目立たせることも一つの手です。

 特に強調したい部分を文の前半に持ってくることで、読者に与えるインパクトが強くなります。文章のリズムが整う上、重要なメッセージが伝わりやすくなるのです。

 例えば、「来週の会議には、必ず参加してください。」という文を、「必ず参加してください、来週の会議には。」と語順を変えることで、「必ず参加する」という部分が強調されます。倒置法を用いることで、読者の注目を集め、より効果的に伝わるようになるのです。

冗長な表現を避け無駄な言葉を省く

 これまで説明したことと重複するかもしれませんが、冗長な表現や無駄な言葉を省くことも非常に重要です。

 無駄に長い文章は検索ワードに引っかかる上で有効かもしれませんが、流れが悪い分、読者が集中しにくくなります。特にSEOライティングで陥りがちです。

 また、説明過多な文章も、くどい印象を与えます。読み手を信じ、冗長な部分はカットしてしまう勇気が必要です。

 また、よくある冗長表現の一つに、「非常に〜である」「極めて〜である」といった表現があります。強調したい気持ちはよく分かるのですが、「非常に」「極めて」をあえて切ってしまい、シンプルに言い換えたほうが、かえって論旨は明確になります。

 無駄な言葉を省く際のポイントは、当たり前のことかもしれませんが、文章を一度書いた後で読み返すこと。それも紙に印刷して読むことです。

まとめ

 今回は、文章のリズムを良くするために心掛けるべきポイントについて書きました。まとめです。

・短文と長文を組み合わせる

・同じ言葉の多用を避ける

・同じ語尾の連続を避ける

・強調したい点を文頭に置くなど語順を工夫する

・冗長な表現を避け無駄な言葉を省く

 これらのポイントを実践することで、リズムの良い、読みやすい文章に一歩近づくと思います。

 しかし、上記以外にも注意するべきポイントはまだまだあります。リズムの良い文章に近道はありません。多く書き、実践を積み重ねることで、スキルを少しずつ上げていくことが大切かと思います。