ねんざや突き指も「重傷」? ―新聞で使われる重体・重傷・軽傷・心肺停止状態の違い―
新聞の事件や事故の記事では、被害者や当事者の容態を表現するのに、重体や重傷、軽傷といった言葉が用いられます。これらの言葉は、どのように使い分けられているのでしょうか。
こんにちは、社長の藤田です。フリーライターとして活躍しておりますが、その前は地方新聞社で19年ほど働いていました。
ニュースや新聞でよく見かける重体、重傷、軽傷。今回は、これらの言葉の違いについて説明いたします。
【基本編】重い順に重体、重傷、軽傷
新聞などでは、容態を表す際には重体、重傷、軽傷の三つの言葉で区別するのが基本です。
重体=生命にかかわる容態
重体は、生命にかかわるような容態の場合に使われます。意識がない場合が多く、しばしば「意識不明の重体」と成句のように使われます。「生き死(いきし)不明の重体」ではないので気をつけましょう。(このように思っている人が実際いました)
重傷=加療日数1カ月以上
重傷は、生命にかかわらない容態で、加療日数1カ月以上の場合を指します。加療日数とは、けがの治療にかかる日数のことで、一般的な会話では「全治」とよく言われます。
重体と重傷の違いが分からないという人が多いと思いますが、重体=命にかかわる、重傷=命にかかわらない、と覚えておいて差し支えありません。
重傷という字面から、たいそうなけがというイメージを抱くかもしれませんが、突き指やねんざでも、直るまでに1カ月以上かかれば重傷です。
軽傷=加療日数1カ月未満
重傷に対し、加療日数1カ月未満のけがを軽傷と呼びます。かすり傷でも、血が出ていれば軽傷です。
軽傷、重傷とも、加療日数を付けて「1カ月の重傷」「2週間の軽傷」などと言われる場合があります。たまに新聞で「5日間の軽傷」といった表現を見ますが、これはかすり傷程度のけがということです。
【応用編】「心肺停止」と「命に別状がない」状態
重体、重傷、軽傷以外にも、容態を表す言い回しがあります。事件や事故の派生直後で、医師などにより容態が判定できていない場合によく使われます。
心肺停止状態
重体のうち、心臓と呼吸が停止した状態を特に「心肺停止状態」と言われています。蘇生する可能性がないとも言えないため、死亡とは言いません。
またニュースなどでは、死んでいると思われるが医師による死亡確認がなされていない場合に「心肺停止状態」という言い回しがされる場合があります。事件・事故の直後の報道で使われることが多いです。
命に別状がない
生命にかかわらない状態であるが、重傷か軽傷か分からない場合によく使われます。けがをしているが意識はあり、自力で救急車に乗ったなどの場合に用いられる言葉です。
重症と軽症
重症、軽症のように「傷」ではなく「症」と書かれている場合があります。これらは、外傷を伴わない症状や病気の程度を表す言葉です。よく使われるのが一酸化炭素中毒で、最近では新型コロナウイルス関連のニュースで目にすることも多いと思います。
一酸化炭素中毒の場合、おおまかに生命にかかわる状態の場合に重症、そうでない場合に軽症と使われることが多いようです。「重傷」は命にかかわらない状態と説明しましたが、「重症」と症の字を使った場合は命にかかわる場合ですので、気をつけましょう。
また、新型コロナウイルスについては、厚生労働省の「診療の手引」に沿って表記されます。集中治療室・人工呼吸器が必要な場合は重症、酸素飽和度96%以上で肺炎の所見がない場合は軽症です。
この他コロナでは、中等症というカテゴリーもあります。酸素飽和度93%以下が中等症Ⅰ、93~96%が中等症Ⅱだそうです。
まとめ
報道でよく見る重体、重傷、軽傷の違いについて説明しました。
・重体=生命にかかわる容態
・重傷=加療日数1カ月以上のけが
・軽傷=加療日数1カ月未満のけが
ニュースを見たり、新聞を読んだりする際に、意識してみてはいかがでしょうか。内容をより深く理解することができると思います。
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