大和言葉が作り出すメリット ー固い文章を柔らかくする方法ー

 「あなたの文章は固い」。このように言われた経験はありませんでしょうか。ひょっとすると「漢語」を使いすぎているのが原因かも知れません。

 こんにちは、社長の藤田です。2021年に19年3カ月勤めた新聞社を退職し、フリーランスのライターとして活動。通算16年、文章を書く仕事で生計を立てています。

 文章を柔らかく、読みやすくするためには、大和言葉を使うことが効果的です。古い時代の中国語から借用した漢語に対し、大和言葉は元々日本にあった単語です。

 今回は、大和言葉と漢語、外来語それぞれについて説明。実際に例文を用いて大和言葉の効用を実証してみたいと思います。何だかセミナーみたいな感じになりましたが、文章を書く上でお役に立つことができれば幸いです。

大和言葉 漢語 外来語

 大和言葉と漢語、外来語とはどのようなものなのでしょうか。

和語

 和語は、古代日本語から発展してきた、日本ならではの言葉です。自然界や日常のくらしで使われる物や現象についての言葉が多いです。漢字を用いた漢語や外来語と比べて発音がしやすく、親しみやすいという特徴があります。

 ひらがなで表すことが多いので、文章で使うと柔らかなイメージを持たせることができます。

漢語

 漢語は、中国語から輸入された漢字を使用した単語です。学問や宗教、文化、芸術、哲学などの分野の言葉が多数。

 漢字を使用するため、和語と比較して難解な印象があります。このため、文章に多用すると硬質な印象を抱かせることがあります。また、「漢語+する」で動詞のように使用することが可能です。

外来語

 外来語は、外国由来の言葉や、外国語からの借用した単語を指します。近年では、英語が多く使われるようになり、ビジネスやIT分野などで多く用いられています。

 外来語のほとんどがカタカナで表記されますが、中にはさぼる(ドイツ語の「サボタージュ」に由来)のようにひらがな表記されるものもあります。名詞が多いですが、21世紀に入ってハモる(英語の「ハーモニー」に由来)、ググる(世界的企業の「グーグル」に由来)などの動詞も多く誕生しています。

 親しみやすく、ジャパニーズにないワードもあってユースフルですが、メニーを使うとルー大柴さんのような文章になるので注意が必要です。

大和言葉・漢語・外来語の例

大和言葉漢語外来語
きまり規則ルール
暮らし生活ライフ
道路ウエイ
幸せ幸福ハッピー
礎(いしずえ)基礎、基本ベース
住まい住居、住宅ハウス、ホーム

漢語を多く使うとどうなるか…

 実際に漢語を多用した文章を作成し、いかに固い文章になるかを検証してみたいと思います。

 当ブログの文章の一部を抜き出し、漢語を多用してリライトしてみました。

 バブル崩壊後の1993年から2005年ごろまでは「就職氷河期」と呼称され、景気後退を反映し企業は新規採用の抑制を継続。これは国や地方自治体などの公務員でも同様です。そのため多種な組織で、就職氷河期世代と称される30歳代後半から40歳代までの層が希薄化するという状態が発生しました。その世代の人材を補充するため、この10年で社会人を採用する自治体が一気に増加しました。

 また、就職氷河期世代の中には、正社員として就職することが不可能で、長期にわたり非正規雇用として労働してきた人も存在。その人物たちに正規雇用の可能性を付与するために開くために積極採用をする自治体も現出しています。

公務員の社会人採用試験体験記 ー前編・応募から教養試験対策までーをリライト

 固い印象で読みにくく、頭に入らないと思います。

 元は以下のような文章です。

 バブル崩壊後の1993年から2005年ごろまでは「就職氷河期」と呼ばれ、企業は景気後退を受けて新規採用を抑え続けてきました。これは国や地方自治体などの公務員でも同じです。そのため多くの組織で、就職氷河期世代と呼ばれる30歳代後半から40歳代までの層が薄くなるという状態が起こりました。その世代の人材を補うため、この10年で社会人を採用する自治体が一気に増えました。

 また、就職氷河期世代の中には、正社員として就職することができず、長らく非正規雇用として働いてきた人もいます。その人たちに正規雇用の道を開くために積極採用をする自治体も現れています。

公務員の社会人採用試験体験記 ー前編・応募から教養試験対策までー

スケッチ文章が「起訴状」になってしまった

 私自身も、どちらかと言えば固い文章を書いてしまいがちです。そのため、意図的に大和言葉を多く使い、できるだけ柔らかい文章になるよう心掛けています。

 新聞社に入社して1年目のことです。年末の風景をとらえた写真の連載を行うこととなりました。「スケッチ記事」という、写真と短い文章で師走の風景を紹介する記事です。

 私もその一部を担当することとなり、港に立つ灯台の清掃についての写真と記事を担当することとなりました。写真は下手くそなりに何とかなったのですが、記事がどうしても柔らかく書けず、何度も書き直しをした記憶があります。

 そのとき、先輩からボソっと次のように言われました。

 「起訴状みたいなスケッチ記事やな…」

 起訴状とは、検察官が被告を裁判にかける際に提出する書面のこと。公文章の中でも、固い言い回しを行います。

 例えば、普通の文章なら「『殺すぞ』と脅して金を奪った」となるところを「『殺すぞ』などと語気鋭く申し向け、金員を強取したものである」となります。いかに私の文章が固かったかが分かるかと思います。

まとめ

 今回は、起訴状のような文章にならないため、大和言葉を多く使おうという提言でした。

 同じことを書いていても、書き方によって印象は異なります。文章の個性を否定するわけではありませんが、多くの人にとって読みやすい文章を書くことで、自分の考えをミスリードされることなく伝えることができます。

 偉そうに書いていますが、私もまだまだ。これからも精進していきたいと思います。

新聞記者

Posted by かく企画