記者のペンはどこに行くのか

 こんにちは。いつも役に立たないことを考えながら、ブラブラしている仮面ライターです。

 先日、弊社の社長が「【ブロガー必読】右手にペン 左手にメモ帳」というブログ記事を書きました。

 散歩をしながらアイデアを考え、メモをするという話です。今回は、そのペンについて書いてみようと思います。役に立たない話ですので、覚悟して読んでいただければ幸いです。

ペンがないと怒られる

 私は昔、新聞記者をしていました。風呂に入るとき以外は、必ずペンと紙を手元に置いていました。

 当時は、食事をしていようが寝ていようが、突然電話がかかってきてメモを取らなければいけないという状況に置かれていました。

 ネタ元から前触れなく話をされることもまれにありました。また、事件事故が発生したときは、すくなくとも発生場所くらいは書き留めなくてはいけません。また、所属記者クラブからの連絡などもありました。

 たが、一番(面倒)はデスクです。休みであろうがお構いなしです。「ちょっとメモが取れるものを探しています」と言うと、激怒する人がほとんどでした。(そうではない人もいましたが)

 というわけで、ペンは必需品でした。

uni-ball SIGNO 0.38mm

 職場にペンは置かれているのですが、私は自費で買っていました。三菱鉛筆の「uni-ball SIGNO 0.38mm」というペンです。

なぜ0.38mmなのか?

 記者は急いで書くので、やや細めの方が後で読んだときにメモが判読しやすいという利点があります。記者の字は汚くて、数日後に自分でなにを書いたかわからないという人が自分を含め、周囲にもよくいました。

また、0.5mmは書きやすいのですが、字が太い分、当然、インクの減りが速くなります。字を書きまくるので、できれば予備で持ち歩くペンの本数を減らしたいと思っていました。

ノック式は使わない

「uni-ball SIGNO」はキャップ式です。ノック式のほうが、素早く書き始められると思うかもしれません。確かにそのメリットはあります。

 ただ、ノック式は間違ってシャツなどにインクが付いてしまうことがありました。休みの日にはズボンのポケットにペンを突っ込むこともあり、インクが生地に付いてしまうリスクは避けたいという理由でキャップ式を使っていました。

油性インクと水性インクもダメ

 私が使っていたペンのインクはゲルでした。油性インクは、気温が低いと出が悪くなり、ピンチになったことがありました。でも、長所としては雨でノートが多少濡れても染みずに書けるという点です。雨の日用に、油性インクのペンを1本持ち歩いていました。

 また、水性インクはなめらかでとても書き味が良いのですが、インク漏れリスクのために採用しませんでした。スーツの胸ポケットでインク漏れし、シャツまで黒くなってしまったということがありました。

きちんとしたペンが精神安定剤に

 同僚の中には、胸ポケットに6本以上もペンをさしている人がいました。本人が言うには、「もしインクが詰まって出なかったらと思うと安心できない」とのことでした。

 6本もペンが胸ポケットにあると、思わず目がそちらにいってしまうほどです。蛍光ペンや赤ペンなどもさしていたので、軍服の胸章のようでした。

 ちょっとやりすぎな感はありますが、同じ記者として気持ちはわかりました。私は2本を胸ポケットにさして、バックに予備を4本くらい入れていました。そして、週に1回くらいはインクの残りや出具合を確認していました。

 ちなみに、私が記者だったころは、ノートを何冊も持って移動していました。ずいぶんと前に出した原稿について、忘れた頃にデスクから問い合わせを受けることがあったからです。

 また、ペン同様、ノート切れも致命傷になります。事件が発生して駆けつけた記者がノートのページがなくなり、他の記者にもらうということがありました。

 事件事故の現場では、その場でなんとかしなければいけないので、ペンとノートの準備は大切なことだと思っていました。

もう記者にペンはいらない?

 なぜ記者がペンとノートを持っていなければいけないかといえば、当然ですが、メモをとるからです。20年以上前ですが、新人記者研修で言われたことがあります。

 記者のノートは、取材や記事をめぐる裁判になったときの証拠になる。そのためには、日付を書いて、日時順にメモを取る必要がある

 2020年代になり、私が出会った新人記者はタブレット端末を使っていました。本人曰く、裁判資料にも耐えうるとのことでした。

 書き換えのログが残るのであれば問題ないのかもしれません。端末自体はノート一冊より重いかもしれませんが、何冊も持ち歩く必要はありません。また、検索も楽です。

 もっといえば、警察発表の広報文や取材資料もすべて画像として保存できます。

 本当に新聞社としてタブレット端末で良いとしていたのかは、今となってはわかりません。ノートを何冊も持ち歩き、休みの日はぼろぼろになったメモ帳とゲルボールペンをポケットに突っ込んでいた「化石世代」の人間からすると、大丈夫なのかなぁと思ってしまいます。

 またまた脱線ですが、スマートフォンが出てくるまでは、記者は休日でも一眼レフカメラを持ち歩いていました。

 私は、ある時、そこそこ高性能なコンパクトカメラを譲ってもらう機会があり、一眼レフカメラは休みの日に限って、家に置くようになりました。でも、正直に言えば、いきなり事件事故の現場に行くことを考えると心配でした。

 「かく企画」社長の記者時代のイメージは、カメラバックを持ち歩いている姿です。飲み会であっても、休みであっても、いつもカメラバックを持っていました。基本ができている人でした。

 さらに脱線ですが、基本ができている割に、社長は、デジタル一眼レフカメラに記録媒体のメディアを入れ忘れてくるなど、時々、ピンチに陥っていました。

まとめ

 今回の話がなぜ「役に立たない話」になるのか? 上記の話のようにペンがいらない時代が来たのかもしれないからです。

 記者職をクビになった私ですが、現在も会議などではペンと紙でメモをとっています。最近、お気に入りのペンが変わりました。パソコンでメモを打っている職場の同僚に、そんな話をしても、「へぇ」で終わってしまうだろうなぁと思い、黙っています。

 ペンを作っているメーカーのみなさん。大変だと思いますが、私のような人間はまだいます。改良が重ねられたペンを文房具店で試し書きするのは、楽しみの一つです。

 これからもよろしくお願いいたします。