「魔女の宅急便」に学ぶ フリーランスの心構え(後編) ー病気・スランプ・自己研鑽ー
前々回、前回に続き、スタジオジブリのアニメ映画『魔女の宅急便』から、フリーランスの心構えを考えます。今回は、フリーランスの病気、スランプ、自己研鑽などがテーマです。
こんにちは、「かく企画」社長の藤田です。元新聞社勤務で、現在はフリーランスのライターをしています。
映画・魔女の宅急便は、13歳の魔女の少女・キキが修行のために生まれ故郷を離れ、知らない街で宅配便をして自活する話です。テレビのロードショー番組でしばしば再放送されているので、若い世代の方でも見たことがある人は多いと思います。
封切りは今から20年以上前の1989年で、まだ「フリーランス」という言葉が市民権を得ていない時代。それでも、フリーランスの仕事に対し示唆に富んだシーンが随所にみられます。もっとも、原作の角野英子さん、監督の宮崎駿さんとも、そんなことは意識してなかったでしょうが…。
今回は、物語の終盤を中心に見ていきたいと思います。
これまでのあらすじ
この話は後編です。前編、中編をお読みでない方は、こちらからどうぞ。
https://kaku-kikaku.com/kikis_delivery_service1
https://kaku-kikaku.com/kikis_delivery_service2
Scene8 風邪で寝込む
心優しい老婦人の依頼を受け、キキは豪雨の中ニシンのパイを孫娘に届けます。しかし「このパイ嫌いなのよねー」という孫娘の冷酷な発言にキキはショックを受けます。
雨に打たれ、さらに精神的に参ったキキは、風邪を引いて寝込んでしまいます。
個人事業主は、病気やけがで働けなくなると、収入はゼロになります。勤め人のような有給休暇、休職制度はありません。それだけに、体の健康、心の健康については人一倍気を遣う必要があります。無理をしすぎず、疲れたと思ったら休みましょう。
心構え⑧ 体の健康、心の健康には人一倍気を遣おう
Scene9 魔力が落ちる
風邪から回復し、その後いろいろありますが、個人事業と関係がないのでカットです。
そしてある日、キキは相棒の黒ネコ・ジジの言葉が分からなくなっているのに気付きます。魔女なのでネコと意思疎通できていたのですが、それができなくなるのです。
さらに魔力が落ち、ほうきにまたがっても飛べなくなってしまいます。まさにスランプ。自分にとって唯一にして最大の強みである(と思っていた)飛行能力を失い、キキは大きな失望に陥ります。
スランプは必ず誰にでも訪れます。野球のイチロー選手(オリックスなど)でも現役時代はスランプが訪れていたと言いますし、現在活躍中の村上宗隆選手(ヤクルト)や山本由伸選手(オリックス)も例外ではありません。このことを甘んじて受け入れましょう。
心構え⑨ スランプは誰にも訪れることを覚悟しよう
Scene10 絵描き少女のアトリエ
スランプに陥ったキキは、かねてより心を通わせていた絵描きの少女に誘われて、森のアトリエに行きます。そこでキキは、少女が書く巨大なペガサスの絵を見せられます。
そしてこう励まされます。
「魔女の血、絵描きの血、パン職人の血。神さまか誰かがくれた力なんだよね。おかげで苦労もするけどさ」
子どもの頃は何とも思いませんでしたが、40代を過ぎてフリーライターになった今、本当に身にしみるせりふです。
ライターであれプログラマーであれ、フリーランスの人は何かしら得意なものを持っている(と思っている)から仕事をしています。私自身に流れるライターの血は、濃い優秀な血ではありません。それでも、神さまか誰かがお情けでくれた力なのかもしれません。
さらに、絵描きの少女は、自身のスランプの経験をキキに語ります。
「そういう時はジタバタするしかないよ。描いて、描いて、描きまくる」
スランプによってうまくいかない時は、筆舌に尽くしがたいつらさや絶望感を感じます。それでも、仕事を辞めるわけにはいかず、結局はもがき続けるしかないのです。
キキも必死でもがき続け、ラストシーンではスランプから抜け出します。
心構え⑩ 「才能は神様から与えられた力」と割り切り、スランプのときはジタバタしよう
Scene11 ペガサスの絵
この場面からもう一つ、少女が書くペガサスの絵について。神秘的な雰囲気を醸し出していますが、この絵は実在する作品で、青森県の養護学校の生徒たちによるものを一部加筆して使っているそうです。
人間にとって、絵画や音楽、小説など、自分が美しいと思うもの、好きなものを積極的に鑑賞することが重要だと考えます。特にフリーライターという文章を紡ぐ仕事ではなおさらです。
私の場合はさしずめ「落語」でしょうか。年に1回は寄席やホールで鑑賞することを毎年の目標としています。美しく、ユーモラスで、時には馬鹿馬鹿しい言葉に触れることは、ライターにとって決してマイナスではありません。
心構え⑪ 美しいもの、好きなものに積極的に触れよう
Scene12 大団円、そして
いよいよクライマックス。スランプのキキは、老夫婦の家でも励まされます。自営業に関係ないので省略しますが、私が好きなシーンの一つです。その老婦人の家のテレビで、墜落寸前の飛行船に少年が取り残され、宙づりになっている姿を見ます。少年は、キキと仲の良い飛行少年・トンボでした。
現場に駆けつけたキキは、近くにいた清掃夫からデッキブラシを借り、必死で飛ぼうとします。暴走するデッキブラシをなだめたり、脅したりしながら、何とかトンボを救助。群衆たちの拍手喝采の中、キキは魔力を取り戻したのでした。
その後、キキはデッキブラシで空を飛びながら宅配業を続けます。デッキブラシとは、トイレの床などをこする清掃道具。私は子どもの頃「ぼうずり」と呼んでいましたが、どうやら方言のようです。
ほうきを失ったキキですが、デッキブラシという新しい乗り物で業務を行います。一つの道具ややり方に固執せず、新しい道具や技術を積極的に取り入れることも、フリーランスで身を立てる方法の一つです。
心構え⑫ 新しい道具や技術は積極的に取り入れよう
まとめ
スタジオジブリのアニメ映画「魔女の宅急便」から得たフリーランスの心構えについて、いまいちど前編、中編を含めおさらいします。
① 相談できる人や心のよりどころを最低1人(または1匹)持とう
② スキルがあっても謙虚に。調子に乗らず、地に足を付けよう
③ 開業費、固定費はなるべく低く抑えよう
④ 特に事業開始時は、知り合いの伝手で仕事を得よう
⑤ 顧客のミッションを遂行し、期待に応えよう
⑥ 自分のスキルに興味を持つ人は、自分が思う以上にいる
⑦ 世の中には、本当にいろいろな顧客やクライアントがいる
⑧ 体の健康、心の健康には人一倍気を遣おう
⑨ スランプは誰にも訪れることを覚悟しよう
⑩ 「才能は神様から与えられた力」と割り切り、スランプのときはジタバタしよう
⑪ 美しいもの、好きなものに積極的に触れよう
⑫ 新しい道具や技術は積極的に取り入れよう
前編でも述べましたが、この映画はあくまで少女の成長物語であり、フリーランスや個人事業主の働き方に主眼を置いたものではありません。
それでも、視点を変えて鑑賞すると、12項目ものフリーランスの心構えを見いだすことができました。これらを肝に銘じ、これからも仕事していきたいと思います。
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