オジサンに高校野球取材が無理なわけ
こんにちは。「かく企画社員」の仮面ライターです。
中年まっしぐらの私は、日々、体力と知力の衰えと闘っています。体力が衰えると、それまで出来た仕事が簡単にこなせなくなります。
中年になって間もないころ、体力と知力以外にも、オジサンに立ちはだかる壁があることに気が付きました。今回は、その体験を書きたいと思います。
新人記者と取材に出た日
中年になりたての頃、私は事件の担当をしていました。夜討ち朝駆けの毎日。経済事件が多く、複雑なスキームを理解するなど、足りない知恵を総動員する毎日でした。
ある日、数人いるデスクの一人から頼まれごとをされました。
新人記者の教育です。高校野球シーズンが近づき、新人記者に取材を教える季節がやっていきました。人手が足りず、私もその手伝いをすることになりました。
球場に行くと、新人記者に写真のとり方や、実際の取材に即したスコアーの付け方などを教えました。
基本的に1人で1試合を取材するので、かなり大変です。高校生といえども、球は速いので写真を取るのも一苦労。完璧なスコアーブックをつける必要はないのですが、撮影した写真と自分が書く記事を念頭に、要領よく書く記録する技術が必要です。
若手のときになかなか大変だった野球取材を偉そうに教えている自分。中年になったことを実感しながら試合を見ていました。
使い物にならない試合後のオジサン
その年の企画として、試合後のミーティングがありました。
負けたチームは球場を出ると、監督を囲みミーティングをします。
この日で3年生は引退です。チームを去る選手たちや監督の言葉を取材し、紙面に掲載するという仕事でした。
新人の女性記者は、チームの輪のそばでメモを取っています。私も話を聞きながら、メモを取っていました。
ところが、選手や監督の話を聞いていると、私は感極まってしまいました。新人記者は、真剣な顔でメモを取り続けています。オジサンがここで泣くわけにはいきません。
ミーティング中も、次の試合は着々と準備が進みます。私は「次の試合の状況を見てくる」と言って、その場を離れました。
高校入学から2年と数ヶ月。野球をしてきた高校生とそれを見守ってきた監督たち。とてもシンプルで、想像の範囲内の話なのに、不覚にもじっと聞いていられなくなりました。
新人記者は淡々と取材
次の試合が始まり、新人記者は私の元へ。「『最後のミーティング』の企画取材は、さっきのでいけそう?」。私は質問しました。「いやぁ、ちょっとイマイチでした」
――え? さっきのミーティングがイマイチなの?――
考えてみたら、新人記者の彼女は、5年前は高校生。遠くの昔にその時期を過ごした私とは違うし、そもそも私とは違う経験をしてきたのでしょう。
「この試合の後も取材していいですか?」
納得するまで取材をしようとしている新人記者。立派です。私のようなオジサン記者なんて必要ありません。
炎天下の中、新人記者と私は球場を駆けずり回り、取材を終えると、日が沈む球場の記者室で原稿を書き、2人で確認を続けました。
久しぶりの球場取材。体力が持つか心配でしたが、感情面でガタガタになるとは。年をとると涙もろくなるとは言いますが、まさにそのとおりでした。
その後、記者をクビになり、高校スポーツを取材する必要はなくなりました。もし、記者のままだったら、しょっちゅう泣きながら取材をしていたのかもしれません。
そんなオジサン記者は、熱苦しくて嫌がられるだろうなぁ。
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