結城真一郎「名もなき星の哀歌」
こんにちは、「かく企画」社員の仮面ライターです。今回ご紹介するのは、結城真一郎さんの「名もなき星の哀歌」です。2019年の「第5回新潮ミステリー大賞」受賞作です。
人間が持つ記憶を取引できるという世界で繰り広げられる物語。ストーリー展開以外でも良かった作品です。
短くあらすじ紹介
人の記憶を取引するという店で働いている若い男の二人組。銀行員の良平と、漫画家志望の健太は、路上で活動する、星名というシンガーソングライターの女の子が何者かを調べることになります。
調べていく中で、医者の一家が焼死したという昔の事件を知ります。そして、星名のために命を失った男がいたこともわかります。その男はなぜこの世を去ったのか。そして何者なのか。良平と健太は過去と現在の謎を調べていくうちに、驚きの事実を知ります。
良かったところ
約400ページある作品です。250ページあたりから、ストーリー展開にグッと惹きつけられました。
金持ち一家の事件が宙に浮いたまま話が進んでいると感じながら読んでいました。ところが、「この人間が関係していたのか」とわかると、話に夢中になっていきました。
ストーリーにいくつかの伏線を流しておいて、最後にまとめていく流れが自然でした。
特に、最後の数ページは、これまでのとんでもないストーリー展開から離れて、青春小説の一コマのような静かなシーンで幕を閉じていきます。
ミステリ初心者にもおすすめ
前半部分のアイドルの話は、とても気楽に読めます。ミステリをあまり読んだことがない人でも、馴染めると思います。
200ページすぎたあたりからは、ミステリ好きの人も納得させるようなストーリーになっています。私はミステリを好んで読むので、この差がおもしろく感じました。
ブックカバーのデザインも魅力
この作品はハードカバーで読みました。このブックカバーのデザインがとても良かったです。
ゴッホの「星月夜」を思わせるようなタッチです。このカバーを見るだけでも手にする価値があります。
私は、読もうと思っている小説を部屋に何冊も積み上げています。その中からどれを読むかというと、ブックカバーが魅力的な作品から手にする傾向があります。
カバーが良くて、書き出しが面白いと、やらなければいけないことを忘れて、数時間読み続けてしまったなんてことがこれまでありました。
最近、小説のタイトルの大切さをひしひしと感じるようになっていたのですが、この作品を手にして、ブックカバーの重要さも知りました。
昔、CDやレコードの「ジャケ買い」というのがありましたが、今度書店に行ったら、カバーを見て楽しもうと思っています。
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