馳星周「少年と犬」

 みなさん、こんにちは。小説とブログを書いている「かく企画」社員の仮面ライターです。

 今回はある小説を紹介します。読書の季節といえば夏(のはず)。涼しい書店で小説をいくつか手に取ってみませんか?

作品概要

 今回の作品は、馳星周さんの「少年と犬」です。2020年の直木賞受賞作です。

 1匹の犬をめぐる物語。東日本大震災の被災地から九州まで旅をする犬。その犬と人間たちの話です。

 今回、手に取った理由は、小説の勉強のためです。前の話になりますが、「かく企画」のブログで、米国の小説家ステーブン・キングさんの話を紹介しました。

 キングさんは、「書くことについて」(小学館文庫)の中で、小説家になるためには、よく読んでよく書くことが重要だと説いています。

 当然といえば当然ですが、これまで自分が好きなジャンルの読書に偏っていた私。勉強のために手を伸ばした作品の一つが「少年と犬」です。

 なぜ、この本だったかというと、社長から「直木賞はエンターテイメント作品が選ばれる」と聞いたからです。賞の権威はひとまず置いておいて、ネットで検索しておもしろそうだったので選びました。

すっと読めるストーリー

 最初の章からストーリーに引き込まれていきました。肩ひじを張らずにスッと作品の中に連れて行かれていった感じです。気がつけば2時間半ほどで読んでしまいました。

 短い文章でテンポがよく、それでいて場面や人が想像できます。

 読むことに集中しながら、「なるほど、こういう書き方って大事だよなぁ」と、書き手としても楽しむことが出来ました。

 東日本大震災が作中の仕掛けというか、舞台の一つになっています。あまりにも大きな社会的出来事。ややもすると、その出来事の詳細に筆が引っ張られそうですが(私の場合はそういう傾向があります)、太いストーリーの骨格がどしんと存在して、話はしっかりと進んでいきます。

 私は、東日本大震災のときに、被災地から遠い場所でしたが、記者として、あの災害を報道する仕事に携わりました。そういうこともあって、あとの世代の人たちがこの作品を読んだら、どんなことを感じるのだろうと考えました。

 報道とは違う視点で、後世の人に震災のことが伝わる文章だと思います。

ネタバレを恐れながら

 犬の益荒男振りが魅力的でした。思わず、自分のフラフラとした生き方を比べてしまいました。特に、2023年の8月上旬の私は夏バテをして、クラゲのように横になっていました。フィクションの犬と比較して、自分を律するのもどうかと思いますが、正直、犬から学ばせていただきました。

 犬は生き物です。つまり、別れは死ということになるのですが、読んだ自分を気持ちよく前向きにしてくれるストーリーでした。

小説執筆

Posted by かく企画