新聞記者時代に本当にあった「困った電話」3選

2023年4月2日

 仕事をしていると、多かれ少なかれ、会社や事務所に電話が掛かってきます。お叱り、お褒め、とんでもないクレームなど、さまざまな電話を受けた経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。

 こんにちは、社長の藤田です。現在は自宅でフリーライターの仕事をしていますが、かつてはある地方新聞社に勤めていました。

 現在もクライアントや取材先と電話のやり取りをすることもありますが、不特定多数の人から電話がかかってくることはまずありません。フリーランスになってよかったことの一つですね。

 新聞社に勤めていたころは、記者時代、営業職時代を含め、さまざまな電話がかかってきました。特に「支社」や「支局」など、小さな町の出先での勤務だったころは、読者との距離が近いこともあり、ぶっ飛んだ電話を受けることもありました。

 今回は、私が新聞記者時代に本当にあった、今となっては笑える?「困った電話」を三つ紹介します。

大ウナギ酔っ払いオヤジ

 それは、時計の針が夜の9時を少し過ぎたころでした。その日の記事の出稿を終え、私は「長物」の記事を書いていました。その日の出来事を記したストレート記事ではなく、後日特集記事として掲載する、長めの原稿のことです。

 そろそろ切り上げて、続きは明日書くかー。そんなことが頭をよぎったそのとき、突然事務所の電話が鳴りました。電話は知らない中高年の男性でした。酒を飲んでいるのか、多少ろれつが回っていない様子でした。

大ウナギおやじ
大ウナギおやじ

おーい、わしゃ○○地区の××じゃけど。大きいウナギ捕まえたけぇ、取材に来い。来ないのなら食うてしまうどぉー

 ○○地区はここから車で1時間の距離。どれくらいの大ウナギか分かりませんが、車を飛ばして夜中に取材に行くニュースではありませんでした。そもそも新聞に載せられるかどうかも怪しい話です。

私

申し訳ありません。今日は少し無理です

 私は、なるべく穏便にお断りしました。

大ウナギおやじ
大ウナギおやじ

なぬぃー、そんならあれか?わしぃ、わしは今、ウナギ裁くのに包丁持っとるけぇ、隣のおっさん刺すけど、それでもお前は来ないのかぁあー

それで人を刺すのはおかしいでしょう!

 そこからとんちんかんなやり取りをしばらく続けたのち、電話は切れました。

 その後、「隣人を刺した男を逮捕」といった発表が警察からなかったので、大ウナギオヤジは隣人をあやめることはなかったのでしょう。たぶん。



天気予報が外れてやるせない男

 この電話は、休みの日に留守番電話に吹き込まれていました。その日、久しぶりの休みが取れた私は、隣町に食事や買い物に行っていました。何を食べたか、何を買ったかは忘れました。

 夕方ごろ、事務所に戻り、留守番電話をチェック。ボソボソとしゃべる男性の声が入っていました。

天気予報外れ男
天気予報外れ男

あのー、あの、きょう、晴れたやないか

 最初、何を行っているのかよく分かりませんでした。私は引き続きメッセージに耳を傾けました。

天気予報外れ男
天気予報外れ男

きょうは雨が降ると新聞に書いていたのに。天気予報、外したやないか!どないしてくれるんや!

 メッセージを吹き込んでいるうちに、怒りが増幅したのでしょう。声はだんだん大きくなっていました。

 そもそも天気は、気象庁が予報を立て、その内容が新聞に転載されます(当時はまだ民間の気象予報会社はまだそれほどありませんでした)。新聞社は天気の専門家ではないので、独自に予報をすることはありません。

私

文句を言うなら気象庁に行ってくれよ~

 私はこのように思いながら私はメッセージを消去しましたが、誰がどう予報しようが、新聞に載った以上、彼にとって苦情のはけ口は新聞社だったのでしょう。

 雨が降らなくて、その人にどんな不利益があったのか。今となっては分かりませんが、彼の何らかの計画が狂ったのに違いはありません。

たかり屋の男

 次はあまり笑えない話です。

 新聞には、亡くなった人の氏名などが掲載される「おくやみ欄」というコーナーがあります。死亡届を出す際、遺族が希望すれば市町村からマスコミに情報が提供され、翌日の新聞に掲載されるシステムです。

 ある日、市役所のミスで、掲載希望のない人の名前が新聞に掲載されてしまいました。本社のカスタマーセンターに苦情が来たらしく、私が処理するよう指示がありました。

 天気予報外れ男の項でも触れましたが、社外のミスであっても、新聞に掲載された以上、新聞社が情報に責任を持たなくてはなりません。

 私は、お詫びにお伺いしようと、苦情を言ってきた人物に電話をかけました。

たかり屋の男
たかり屋の男

もしもし…。

電話に出た人物は苦情を言った本人で、中年の男性でした。

私

このたびは申し訳ありませんでした。あらためてお詫びにお伺いしたいのですが…。

 私は謝罪し、あらためてお伺いしてお詫びする旨を伝えると、この男性は次のように行ってきました。

たかり屋の男
たかり屋の男

来るのはいいけど、手ぶらか?手土産みたいなふざけたものを持ってくるなよ。

 私はいぶかしく思いながら

私

じゃあ、何を持って行けばよろしいですか?

 と尋ねました。

たかり屋の男
たかり屋の男

そんなもん、金に決まっとろうがー

 この男は臆面も無く、金銭を請求してきたのです。

 その瞬間、私の頭の中でブチッと何かが切れてしまいました。

私

何を、それは恐喝ということですか? ふざけるのもいい加減にしてもらえますか、今からそちらへ行きますんで、待っててください。もちろん金なんか持っていきませんから

 私はその家へ行きましたが、男はすでにいませんでした。その代わり高齢の女性が出てきたので、おくやみ欄の掲載の件を謝罪。

高齢の女性
高齢の女性

まあわざわざご丁寧に。新聞に載っても載らなくても、どっちでも結構ですよ。

 たかり屋の男との態度の落差に拍子抜けした私は、そのまま帰ることとしました。

 その後、その男から連絡もなく、苦情処理を指示した本社からのお叱りもなく、うやむやに話は終わってしまいました。

まとめ。寛大な心を持ちつつ、毅然とした対応で

 以上、私が受けた「困った電話」を紹介しました。振り返ってみると、電話主も電話主ですが、私の対応は、いただけないです。特に金をせびった男に対しては、こんなに感情的になってはいけません。私も当時30歳前で若かったこともありますが、もっと大人の対応をするべきだったと反省しています。

 世の中いろんな人がいますので、理不尽なクレームや無理を言う顧客もいるかと思います。寛大な心を持ちつつ、毅然とした対応を取る必要があると思いました。簡単なことではありませんが、私自身、心掛けていきたいと思います。



新聞記者

Posted by かく企画