新聞記者はつぶしが利かない ―その理由と対策―
新聞記者はつぶしが利かない―。
その仕事の特殊さゆえに、新聞記者は他の職種への変更がしづらいと昔から言われてきました。とはいえ、新聞記者の中には、さまざまな理由により転職を検討されている方もいると思われます。また、今は仕事を変えるつもりはなくても、将来職を変える、または変更させられることは十分考えられます。
こんにちは、社長の藤田です。2021年に19年3カ月勤めた新聞社を退職。現在はフリーライターとして活動しています。
新聞社では記者を14年間勤めましたが、全く畑違いの営業職に異動。そこで仕事が嫌になるなどして退職しました。その後、民間企業や公務員への転職も検討しましたが、選考試験で落ちたり、自分の満足のゆく転職先と出会えなかったりして、結局はフリーランスの道を選択。
まさに「新聞記者はツブシがきかない」の見本のような存在です。
今回は、そんな見本が「ツブシが聞かない理由」を自己分析。「転職ブーム」「リスキリングブーム」ともいえる社会で意識するべきことについて書きたいと思います。
転職を考えている新聞記者はもちろん、そうでない人にとっても参考になればうれしいです。
転職ブームの中 「つぶしが利かない」のは不利
本題に入る前に、近年の転職の傾向について触れておきます。
厚生労働省の「労働経済白書」によると、全国の転職者数は2010年から2019年まで一貫して右肩上がりで推移。2019年は353万人で、2010年に比べ70万人も増えています。
2020年、2021年はコロナ禍により減少していますが、仕事で必要となる新たな技能、技術を学ぶ「リスキリング」の拡大が叫ばれるなど、キャリアチェンジの潮流は続いています。
近年の転職ブームやリスクキリング志向の中で、「つぶしが利かない」というのはマイナスであると言えます。
つぶしが利かない理由4選
本題に戻り、新聞記者のつぶしが聞かない理由について考えていきます。
①頭を下げない
新聞記者は、本当に頭を下げない仕事です。
営業職やサービス業の場合、当然ながらお客さまに頭を下げます。弁護士や税理士など「先生」と言われる士業の人でも、クライアントに対して礼儀を尽くすと思います。
しかし、新聞記者は頭を下げません。頭を下げたところで、特ダネが舞い込んでこないからです。
明治初期に「士族の商法」という言葉がありました。明治維新で特権を失った武士が商売を始めたものの、横柄な態度が抜けきれず、結局は失敗した、ということです。
新聞記者も、頭の下げ方が分からないまま新しいことに手を出しても、同じような末路をたどってしまいます。
②正義をふりかざす
新聞記者の仕事は“基本的に”反権力です。問題意識を持ちながら、政治、行政、社会の課題や不正を見つけ出し、それを解消・是正するために記事にします。
しかし、世の中いつも正義がまかり通るとは限らず、間違っていることを「必要悪」として甘受しなければならない場合もあります。「この仕事の進め方はおかしい」「顧客のこの発言は間違っている」と声高に指摘していても、業務が滞って同僚に疎んじられるだけです。
私も営業職に異動になり「清濁併せのむ」ことの必要性をつくづく感じました。そして私には無理だと判断し、結局退職しました。
新聞記者と同じ調子で正義をふりかざしていては、独善的だと捉えられます。周囲の共感を得られなければ、新天地での活躍もおぼつかないでしょう。
③コスト意識がない
新聞記者は、営業や販売のようなお金を稼ぐ部署ではないので、コスト意識を持ち合わせていない人がほとんどです。
もっとも、コスト意識だけで報道をされては、それはもはやジャーナリズムではないでしょう。コスト意識を持たない記者こそ、ジャーナリストの理想像です。
④文章力以外のスキルがない
新聞記者という仕事は、想像以上に単調な仕事です。あらゆるものが取材対象となり、いろいろな人との出会いがありますが、基本は取材と執筆の繰り返し。
そのため、意識をしていない限り、いつの間にか文章力以外のスキルが成長していない、なんてこともあります。
何を隠そう、私がそうでした。営業職に異動したとき、そして退職したとき、自分はこれほどまでに何もできないのかと痛感しました。財務諸表の味方、顧客との向き合い方、電話の取り方が全く分からず、知らないことが多すぎると自己嫌悪に陥りました。
キャリアチェンジに備え意識すること
それでは、転職や予期せぬキャリアチェンジに備え、何を意識すればよいでしょうか。
結論から言えば、①~④のことの逆をすればよいと思います。
①頭を下げない→頭を下げるようにする
②正義をふりかざす→正義感を持たないようにする
③コスト意識がない→コスト意識を持つようにする
④文章力以外のスキルが成長しない→それ以外のスキルを成長させる
①は人間として必要なことであり、言うまでもありません。
ただ、②についてはどうでしょう。正義感のない記者なんて嫌ですよね。
③についても、コスト意識は重要ですが、お金の損得だけで取材やニュースが決まってしまうのは社会にとって幸せとは言えないでしょう。
結局のところ、④のように、文章力以外のスキルを充実させることが重要だと考えます。
勉強をしなかった記者の末路
大変恥ずかしい話なのですが、私は記者時代「自分を磨く」ということを全くしてきませんでした。取材に必要な知識はその都度勉強していましたが、原稿を書くための一時しのぎのものでした。
その後、営業職に異動。当然何もできません。社会保険労務士の本を買ったり、簿記の勉強をしたりと、取り繕うように自主的なリスキリングを始めましたが、仕事の忙しさにかまけて、すぐに挫折。
簿記は結局、退職後に勉強をし直すこととなりました。在職中、文章力以外のスキルを磨き、キャリアチェンジを意識しておくべきだったと思いますが、もはや後の祭りです。
文章力以外の「好き」を「スキル」にしよう
最後に、新聞記者が文章力以外のスキルを上げるために何をするべきかについて触れます。
効果的な手段の一つが、資格取得に向けての勉強。このブログでもいくつか取り上げています。
私のお勧めは簿記。3級程度なら、自主学習で取ることもできます。また、企業の決算や公立病院などの公営企業会計の取材にも役立ちます。ただ、人によって向き不向きが大きく出るスキルですので、注意が必要です。
勉強以外でも、日常の取材でスキルアップを意識することも大切です。音楽、芸術、文学、政治、行政、企業経営など、興味が持てるものなら何でもいいと思います。いろんな文献や作品に触れ、たくさんの人と会うことで、「好き」を「スキル」にすることができます。
まとめ
今回は、新聞記者のつぶしが利かない理由について分析し、キャリアチェンジに備えて意識するべきことを考えました。まとめです。
つぶしが利かない理由
①頭を下げない
②正義をふりかざす
③コスト意識がない
④文章力以外のスキルがない
キャリアチェンジに備えて意識するべきこと
・文章力以外のスキルを成長させる
①資格の勉強
②様々な出会いで「好き」を「スキル」に
最後は何だか就職情報会社のキャッチフレーズみたいになってしまいました。ともかく、いつまでも記者を続けるとは限りません。あらゆる可能性を想定し、チャンスやピンチに備えましょう。
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