若手の早期退職は良いことなのか

 こんにちは、「かく企画」社員の仮面ライターです。学校を卒業して入社した後、すぐに退職するという人がいます。

 一昔前なら「根気がない」「逃げただけ」と言われていたかもしれませんが、会社に留まっても良いことがない時代に、早く見切りをつけることは必ずしも悪い選択ではないと思います。

 私自身がすぐに最初の会社を退職したので、その経験を振り返ってみたいと思います。20代の方がこのブログを読んで、参考にしていただけたら幸いです。

退職の経緯を少し詳しく

 私は最初に就職した会社を数年で退職しました。その話は、以下のブログで書いたことがあります。

 入社面接で質問された私は、将来、手がけたい仕事を役員に語りました。ですが、入社をしてみると、その仕事は出来ないということがわかりました。

 もう少し詳しく書くと、実は、その仕事の依頼はあったのに、幾度も経営陣(と言っても数人しかいない)が逃げていたのです。

 勤務先は子会社で、社長は業務の面では門外漢。私以外の社員もやりたいと思っていたその仕事でしたが、受注額がいつもより一桁多いなど、失敗したときのリスクを避けるために、その仕事から逃げていたと先輩たちから聞きました。

 子会社の悲哀と言えばそれまでですが、どこの世界でも「天下り」の人たちは、大過なく乗り切ることが金科玉条です。そういう会社に入社したのは自分の責任ですので、さっさと社を去ることにしました。

1年目よりも……

 こうして当時のことを書いていて思い出したことがあります。

 勤め先は、勤怠管理をパンチカードで行っていました。今、20代の人には「それ何?」と思われるかもしれません。もう四半世紀前の話です。

 残業をすればするだけ給料が増えるという仕組みでした。そのため、夕方以降にダラダラと社屋に残っている人たちがいました。

 私に仕事を教えてくれていた先輩は無駄な仕事はしません。本当に効率よく働き、結果も出していました。

 そのうち、社長の「目玉施策」として、ダラダラと働くことを管理職が厳しく管理することになりました。

 2023年の今から思えば画期的な施策です。WLB(ワーク・ライフ・バランス)です。

 ところが実態は違いました。ただ、残業を徹底的に抑制するだけです。そもそも基本給がかなり安かったので、多くの社員が悲鳴をあげていました。

 ダラダラ働くのは良くないと思います。ただ、必要な仕事でも、定時を過ぎると管理職が回ってきて圧力をかけます。

 ある日のことです。部長が自席で紙をずっとにらんでいました。その日、残業を認められていた私は、とにかく早く終わらせようとしていました。

 複合機に向かうとき、部長が手にしている紙をちらっと見ると、その紙は白紙でした。

 先輩に「あの部長、何してるんですかね?」と私は聞きました。

 「念写でしょ。みんな早く帰れって願ってるんだよ。そうするとね、いつかあの白紙が昇進の辞令に変わるんだよ」

 管理職は大変です。その日から、部長を「ユリ・ゲラー」と呼ぶようにしました。

 そんなことばっかりしている勤め先でしたので、私の場合、1年目より2年目の年収が下がるという状況。ブラック企業でした。

企業が死んでいく前兆

 話は脱線します。

 今努めている「バイト先」もまったく同じことやっています。周囲のやる気がどんどんなくなる様は、組織の最下層にいるのでよくわかります。

 今の「バイト先」も、最初の会社と同じ事が起こっています。

 まず、本当の意味で「出来る」社員が退社していく。残った社員は、仕事をしているフリとアピールが得意という人が目に付きます。

 そして、管理職は管理のための仕事を一生懸命にする。しかし、上から命令されている管理内容は、かなり変な方向に向いています。当然、下っ端社員は窒息してしましそうになります。

 私は経営者ではないので、安易な賃金の引き下げは良くないと思ってはいます。ただ、正規の方法で賃金が下げられるのであれば、百歩譲って仕方がないのかもしれないとは思います。

 一方、ちゃんと働いている人も含めて、巧妙な仕組みを利用した違法スレスレの残業代削減や福利厚生の切り捨てをどんどんしていくと、当然、その企業はしんどくなっていきます。

 ちなみにですが、昔勤めていた会社では、新入社員の5分の4が3年以内に退職していました。そして、今その会社は存在していません。

数年で退社するメリット・デメリット

 話をもとに戻すと、私は最初の勤め先を数年で辞めてしまいました。辞めた理由は、これまでに書いたこと以外にもあり、必ずしもネガティブな理由だけに突き動かされたわけではありません。

 それから20年近くたち、時々考えることがあります。学校教育を終えて就職し、数年で退職することは本人にとってプラスなのかマイナスなのか。

 ここでは新卒で入社した後、1~3年で退職すると仮定して、あくまで自分の体験からメリットとデメリットを考えてみます。

メリット

1 つまらない仕事・将来性がない仕事を続けるストレスから解放され

2 退職してやりたいことをするために勉強をした

3 少ない給料だったが無駄遣いせずに貯金した

4 上司から無用な圧力を気にならなくなった

    デメリット

    1 「どうせやめるんだから」と思い、日々の仕事への真剣さに欠けていた

    2 退職についてかなり早い時期に先輩(その先輩も退職を考えていた)に相談したので、その日から、指導が甘くなった

    3 社会人として耐えるということを学ばなかった

    すぐに辞めることをどう考えるのか

    社会人の基礎力

     高校・専門学校・大学・大学院を出て、すぐにフリーランスにならなければ、ほとんどの人が会社や官庁などの組織で働くことになります。

     どこの組織に勤めていても、「社会人」として身につける共通的な基礎があります。

     私の性格に起因することかもしれませんが、辞めると心に決めた日から、仕事に向き合う姿勢が甘くなりました。元々いい加減な性格なので、今考えてもかなりひどいものでした。

     また、民間企業と言えども、何かをするためには、「官僚的に」長々と根回しをしたり、時期を見たりしなければなりません。私には、今でもそういう考え方が欠けています。

     ネガティブに考えれば、最初の会社をさっさと退職したことがつけとなって、30代、40代で「基礎」が出来ていないことに苦しんだような気もします。

    仮に大卒で23歳から働き始めたとして、5年くらいは退職を考えずに、ひたすら仕事に向き合うと「基礎」が身につき、さらに自分なりにカスタマイズするところまで至ったかもしれません。

    将来への不安

     時々、「数年で退職して不安はなかったのか」と人に聞かれます。

     不安はなかったです。

     でも、家族はとても心配していたと思います。当時、就職の状況は学生にとって良いものではなかったと記憶しています。

     その時に就職できなかった同世代の人たちが、40代、50代になった今も、非正規労働者のままとなり社会問題化しています。

     時代の流れを考えると、私は幸運な方だったのかもしれません。みっちりと将来の青写真を考えてから行動したわけではなく、数年先のことだけを見ていたわりには、やりたかった新聞記者になることも出来ました。

    まとめ

     なんとなく将来の青写真を描いておくのは悪くないかもしれません。そして、その青写真をぶっ壊すくらい面白かったら、今の仕事を長く続けるのも選択肢です。

     一方で、「社会人の基礎を身につけるためにすぐに辞めると思っていけないんだ」と、自分を追い込み、明らかにおかしくなりそうだったら、その会社を去った方が良いと思います。

     私の場合は、いくつかの偶然が重なって、退職後の道を自分で決めることが出来ました。それがなく、耐えて勤めていたら、おかしくなっていたでしょう。  すべてが思ったように行くわけではありません。ただ、それは必ずしも悪いことだけが起こるということではありませんでした

    退職

    Posted by kamenw