投票に一番乗りして「零票確認」をしてきた

役に立たない話

 皆さんは、「零票確認」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。もしくは、実際に行ったことがありますでしょうか。

 零票確認とは、選挙の投票日に一番乗りした有権者が投票箱の中が空っぽであることを確認する作業のこと。選挙に不正がないよう、各投票所で必ず行われます。

 最近では、一番乗りを目指して投票所が開く前に並び、空っぽの投票箱をSNSにアップする「零票確認ガチ勢」と呼ばれる人たちも現れています。

 こんにちは、社長の藤田です。不肖この私、4月9日に行われた統一地方選挙で、自宅最寄りの投票所に一番乗りし、投票所を確認する栄誉にあずかることができました。「ガチ勢」の仲間入りです。

 今回は、私が体験した零票確認の様子を報告。零票確認の目的や根拠、特典などについて書きたいと思います。

零票確認に行ってきた

 私が零票確認に行ったのは、4月9日で、統一地方選前半戦の投票日。私が住んでいる地域では、県議会議員と市議会議員(政令市)の投票が行われました。

 前半戦、後半戦など、統一地方選のあらましについてはこちらをご覧ください。

たまたま早く目が覚め、投票所に

 その日の朝。妻が動かす洗濯機の音で、私は目が覚めました。

 枕元の時計を見ると午前6時。日曜日だというのに、こんな早い時間に何をやってるんだ。半分寝ぼけたまま、私は妻にあいさつをしました。

 「おはよう、どうしたの」

 「寒くて、早く目が覚めてしまって」

 確かに妻の言うとおり。記録的に早い桜の開花に見舞われたここ数日とは打って変わり、冬に逆戻りしたような寒さでした。

 目が覚めてしまった私は、届いた朝刊に目を通しながら、朝食の時間まで何をやろうかと考えました。そして思いつきました。

 「そうだ、投票所に行こう」

投票開始25分前、見事一番乗りを果たす

 零票確認について、これまでもやってみたいとは思っていましたが、実行に移したことはありませんでした。今回、私は全くの思いつきで零票確認を狙うことを決め、すぐに身支度を開始。妻も行くと言いました。

 自宅を出たのは6時25分。投票所までは歩いて約10分。投票開始は7時ですので、25分前には到着する計算です。

 ひょっとしたら他の「ガチ勢」が零票確認を狙っているかも、と頭をよぎりましたが、毎回の選挙と同様、徒歩で投票所まで向かいました。「どうせ思いつきで始めたんだから、他の人に取られたってまあいいや」と考え、妻とバカ話をしながら歩いて行きました。

 6時35分、投票所に到着。なんと誰も並んでいません。やったー、一番乗りです。

 係員の指示で、私は投票所入り口のガラス戸の前に並びました。すぐ後ろには妻。3番目の人がやってきたのは、投票開始間際の6時57分ごろでした。どうやら私の近所に「ガチ勢」はいないらしく、もう少しゆっくり来てもよかったかな、と少し思いました。

7時ちょうど、1秒たりとも狂わず開場

 投票所の運営は、私たちが思う以上にきっちりとしています。おそらくマニュアルがあるのでしょう。投票開始の時刻についても、1秒たりとも狂うことはありません。

 投票開始1分前を切ると、投票所の担当者が入り口にやって来ました。そしてその人は、腕時計を見ながら、カウントダウンを始めました。

 「5秒前、4、3、2、1、開始!」

 7時ちょうど、投票所のガラス戸が開けられました。その正確さに、携帯電話の時計を見ていた妻が「すごい」と思わず口にしました。

いよいよ箱の中を確認

 「一番に来ていただいた方には、投票箱の中に何も入ってないか、確認をしていただくことになっています。よろしいでしょうか」

 投票所の責任者から言われ、私は「分かりました」と短く答えました。

 受付で入場券を渡し、本人照合をした後、県議選の投票用紙と筆記用具を受け取りました。間仕切りが施されたアルミ製の記載台で、意中の候補の名前を記入。ここまでは通常の投票と同じです。

 私が投票箱の前に進み出ると、係員が投票箱のふたを開けました。

 「お願いします。中に何もありませんよね」

 私は中を見て「はい。大丈夫です」と答えました。

 さらに私は、断られるのを覚悟に、写真を撮っても良いか尋ねました。係員たちには難色を示されたのですが、先ほどの責任者がやってきて「いいですよ、どうぞ」と認めてくださいました。

 その写真がこちらです。

 私が写真を撮った後、投票箱は閉じられ、厳重に鍵が掛けられました。そして私は、何も入っていない投票箱の中に、1枚目の投票用紙を静かに投入。「ストン」という箱に入った音が、何だかいつもより大きく聞こえたような気がしました。

「確認書」への署名

 同時に行われた市議選についても、同じように投票箱の中を確認しました。

 さらに、投票所の隅に案内され、投票箱の中に何もなかったことを示す「確認書」を書いてほしいと係員から頼まれました。渡された用紙に、住所と氏名を記入し、零票確認は終了しました。

 投票所に一番乗りした私ですが、すでに妻は投票を終えて待っており、私の後ろに並んでいた他の有権者も三々五々に帰っていました。

零票確認とは

 零票確認について、簡単に補足説明したいと思います。

 零票確認を行う目的は、選挙の公平性を保つためです。投票開始前に投票箱に票を仕込んでおく、という不正を防ぐために行われます。

法令できめられた手続き

 零票確認は、法令で決められた手続きで、北海道から沖縄まで、都会の大規模な投票所から地方の小さな投票所まで、どこでも行われます。

(投票箱に何も入つていないことの確認)

第34条 投票管理者は、選挙人が投票をする前に、投票所内にいる選挙人の面前で投票箱を開き、その中に何も入つていないことを示さなければならない。

(引用|公職選挙法施行令)

 選挙人、つまり有権者の目で直接、投票箱の中に何もないことを確認するように決まっているのです。

感謝状がもらえる投票所も

 零票確認の写真を撮ることができるかどうかは、各投票所(厳密には市区町村の選挙管理委員会)で異なっており、禁止されているところもあります。

 上述のとおり、私の投票所では認められていました。

 零票確認による特典は、基本的に何もなく、あくまで自己満足の世界です。しかし零票確認した人に感謝状を渡す千葉市のように、何らかの特典を渡す自治体もあるようです。

まとめ

 今回は、私が統一地方選で体験した零票確認の様子について報告しました。

 零票確認をしたからといって、何も特典はなく、あくまで選挙の流れのほんの一部に過ぎません。それでも、選挙の公平性を保つために必要不可欠な行為で、ひいては日本の政治の大原則である国民主権につながる手続きだと思います。

 投票場からの帰り道、心なしか軽やかな気持ちになりました。それは、寒の戻りの春風が冷たいからだけではなかったと思います。