砥上裕將「線は、僕を描く」

本の紹介

 こんにちは、仮面ライターです。

 今回は、2018年に新人賞の「メフィスト賞」を受賞した「線は、僕を描く」を紹介します。

 作者の砥上裕將さんは水墨画家でもあります。小説のテーマは、ずばり水墨画。この作品を紹介するのは、小説執筆にも通じる点があると思ったからです。

私と書道

 私は小さな頃から書道を習っていました。先生は母でした。近所の子たちと一緒に習いました。親子なので、厳しく教えられた記憶があります。ほかの子たちより書けていても、終わりと言ってもらえませんでした。

 書道の日は、ガンプラの発売日。書道が終わらないと外に出られません。店に行くとすべて売り切れで、いつもがっかりしていました。

 断線しますが、ガンプラが買えたのは夏休み。小学三年生だった記憶があります。開店の一時間以上前に並んで整理券をもらいました。ところが、大家の息子に遭遇。三学年上で、ジャイアンを地で行く人物。整理券を渡せと脅されましたが、意地でも渡しませんでした。やっとの手に入れたガンプラ。メカニックザクを買いました。右腕と左腕を反対に取り付けてしまった苦い思い出があります。

 高校では芸術科目で書道を習いました。母とはまったく違う書道の世界を教えてもらいました。担当の先生は、高校受験に失敗して、中学卒業後に浪人をしたという人物でした。授業中に話してくれる書家の人生は、とてもおもしろかったです。十五歳で人とずいぶん違う経験をした先生。たくさん悩み、書家の研究を人一倍したのだと思います。

 その先生が大切にしていたのは線の美しさ。字の形がよくても褒めてくれませんでした。それにしても、先生の線は美しかったです。同じ筆で書いたと思えないほどでした。

 「線は、僕を描く」のなかで、似たようなエピソードが出てきて、高校時代のことを思い出しました。

はっとした言葉

――もし子供のように無邪気に描ければ、その人は天才になれるよ。失敗することが楽しければ、成功したときはもっと嬉しいし、楽しいに決まっている――

――いや、まじめというのはね、悪くはないけど、すくなくとも自然じゃない――

――才能やセンスなんて、絵を楽しんでいるかどうかに比べればどうということはない――

 作中に出てきた台詞です。

 私は小説を書き続けています。いまだに新人賞をいただく機会に恵まれていません。この作品を読みながら、小説を書くということを考えました。

 「線は、僕を描く」は水墨画がテーマですが、小説執筆にあてはまりそうなところがいくつもありました。さらに言えば、水墨画、小説だけではなく、何かをつくるという営みに共通することかもしれません。この作品を読んで、私ははっとしました。

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Posted by kamenw