学校の作文は文章上達につながるのか

 みなさん、こんにちは。この文章を書いているのは7月です。学校の夏休みが近づいてきました。

 夏休みの宿題で、読書感想文を書いたという経験がある方は多いのではないでしょうか。読書感想文ではなく、「夏休みの思い出」という作文も定番のような課題でした。

 今回は、元新聞記者の私、「仮面ライター」が、「学校の作文で文章が上達するのか」というテーマで書きます。

 私は、教育学を専攻したことはありません。あくまで文章をほぼ毎日書いていた経験をもとに考えます。それでは始めます。

学校で書いた作文

 小学校で書いた作文というと、読書感想文や「夏休みの思い出」以外に、遠足の作文などがありました。

 私が通った小学校では、6年生の時に、生まれてから小学校卒業までの半生(10年あまりですが)を書くという課題がありました。ほぼ、一年かけて書いたように記憶しています。

 最低枚数を突破しなければいけないので、あれやこれやと姑息な手を考えました。

 小さな時に書いた絵を掲載しても良いという「ルール」に目を付けて、適当に下手な絵を偽造する手口を編み出しました。また、幼稚園の遠足については、地図を見るなどしてエピソードをでっち上げました。

 そんな子どもが大人になって新聞記者になるとは、周囲の大人は想像しなかったと思います。

 記者が、絵や画像を偽造したり、架空のエピソードを書いたりしたら、処分されます。当時の担任が知ったらなんと言うでしょうか。

 中学校では卒業文集を作るところが多いと思います。

 手元にある文集を読んでみると、半数以上の人が修学旅行のことを書いています。それだけ記憶に残るイベントだったのだと思います。次に多いのがクラブ活動でした。

 これらの2大テーマ以外を書いた人の文章はおもしろいものが多くありました。

 2大テーマを超えるインパクトがあった出来事を取り上げるので、パンチ力が生まれるのだと思います。また、着眼点の良さも文章を引き立てる一因になります。

書くことをどう教えるのか

 学校で文章を書くのはなぜなのでしょうか?

 言語能力の向上には、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4分野を鍛える必要があります。

 学校で書く文章は、感想や経験を主題とした文章が中心です。(※少なくとも、私の子ども時代はそうでした)

 「自分が経験して考えたこと」を、他の人に伝えるために、どうやって文章を書くのか。そういう点を伸ばすための文章トレーニングになるのでしょう。同時に、体験や感想を語ることで感受性を育むことも狙いとしては含まれているはずです。

 話は脱線しますが、記者時代に社外の筆者が書いた文章を確認するという担当をしていたことがあります。高校受験の塾講師が書いた文章をチェックしていて、気がついたというか、驚いたことがありました。

 国語・数学・英語・理科・社会と、5人の講師の文章の中で、国語講師が書いた文章が最も理解できませんでした。

 受験勉強を教えることについては、プロ中のプロです。失礼をわかって書きますが、講師が書いた文章は、そのまま紙面に掲載出来ないレベルでした。

 覚えているフレーズがあります。

――これからは、垂直勉強を水平方向にしよう――

 おそらく、塾では通用していた言葉なのだと思います。前後の文脈からしても唐突で意味がわかりませんでした。ちなみに、この文章で言いたかったことは次のようなことでした。

――受験が迫ってきました。これまでは、一つ一つの単元を勉強してきましたが、実際の試験では、複数の単元で学んだことを組み合わせた問題が出ます。単元をまたがる勉強を心がけましょう――

 「書く」ことは、しっかりトレーニングしないといけないと思った体験でした。

客観的に伝える文章トレーニング

 学校で書くような文章以外に、力を伸ばす方法があります。

 一つは道順です。

 自宅から近くの小学校までの行き方を文章にしてみて下さい。目の前が学校という人は、もう少し離れた所を目標地点として書いてみます。

 この方法が良いのは、実際に文章を読みながら学校まで歩いてみると、書いた文章を客観的にチェックできます。

 学校までが書けたら次のレベルです。駅までの道など、学校よりも離れていて、複雑な道のりを書いてみると、さらに伝える力が伸びます。

 最初は、詳細で長い文章になっても良いと思います。それを推敲して短くする。短くても、読んだ人が目的地に到着できる文章を書けたら名文家です。

 他にも、料理のレシピを書くのも一つの方法だと思います。カレーライスの作り方でも、肉ジャガの作り方でも構いません。

 書いてみるとわかるのは、ほとんど料理をしたことがない人に向けて書くのか。それとも、ある程度料理をしたことがある人(そういう人は、カレーライスも肉ジャガも作ったことがあるでしょうから、ちょっと変わった料理が良いかもしれません)のために書くのか。読者を想定して書くトレーニングになると思います。

 もし、子どもが夏休みの課題に困っていたら、「自分の書いた文章で家族が目的地に行けるか」とか、「自分が書いたレシピで友だちが料理を作ったら」などはどうでしょうか? その報告を書くのもこれまた文章になりますが。

自学概論

Posted by かく企画