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新聞記者とテレビ記者の違い

2023年9月4日

 みなさん、こんにちは。「かく企画」社員の仮面ライターです。私は昔、新聞記者をしていました。取材現場では、テレビの人たちと一緒になることもしばしばありました。

 今回は、新聞記者とテレビ記者の違いについてお話したいと思います。

映像が大事なテレビ記者

 テレビの取材で大変なのは、映像がとにかく必要だということです。

 テレビ記者は、「映像がないんですよ」とよく言っていました。原稿を読んでいるアナウンサーの映像では、尺がもたないとのことでした。

 時々、警察署の前で記者がレポートしているのは、必ずしも必要な映像ではないかもしれませんが、尺のためという理由もありそうです。

 また、テレビはカメラマン、照明担当、音声担当、レポーターとチームで取材します。もちろん、1人で複数の役をこなしている場合もあります。少なくとも、カメラマンとレポーターの2人は必要です。

 チーム取材の大変さもありそうです。カメラマンがかなりの先輩で、指示を出しにくいという記者の愚痴を聞いたことがあります。

単独行動の新聞記者

 その点、気楽なのが新聞記者です。基本は単独行動です。

 逆に言えば、同じ新聞社の記者が意味もなく一緒にいると、(人員の)無駄だと言われます。 「一緒にいるくらいなら、空振りでもいいから別のところで話を聞いてこい」と、怒られます。

 まれに、難しい人を取材するときは、複数で取材します。1対1で取材すると、言った言わないで、揉める可能性がある場合です。

 「悪いこと」をしている人への取材では、2人で取材したことがよくありました。

 単独行動の気楽な新聞記者ですが、時々困ることがあります。

 特に、新人記者時代によくあったのですが、その場で臨機応変に対応しなければなりません。なんでもキャップやデスクに聞くと怒られます。ほかの業界でも同じだとは思いますが、その判断が難しいのです。

 あるとき、そこそこの大きさの事件が発生し、10人くらいの記者が動員されました。殺人事件などの場合、警察、被害者、(わかっていれば)容疑者など、手分けして取材をします。デスクとキャップが中心となって、取材持ち場の差配をすることになります。

 ある1年目の記者は、被害者宅を任されました。私は、取材チームに入っていなかった記憶があります。

 事件発生翌日の朝早く、その1年目の記者が私に電話をしてきました。

「夜からずっと被害者宅前にいるのですが、どんな状況ですか?」

 絶句した私。

「どうして、キャップに電話しなかったの?」

 季節は冬でしたから、そうとうきつかったと思います。彼が言うには、怖くて聞けなかったそうです。恐るべし、新聞社のパワハラ体質。

1人で取材の怖さ

 1人で取材することで、怖い目にも遭いました。

 台風と高潮が一緒になり、港が水没したときのことです。

 2時間前に撮影した映像をテレビが全国放送で繰り返し流し、それをみた本社デスクが、地方デスクに「あの写真を撮ってこい」と、しつこく指示をしました。 

 写真部のカメラマンは、悪天候の中、遠方からやってくるとのことで、到着の目処が立ちません。私は、一眼レフカメラを濡れないようにビニールで覆って、雨の中へと出ていきました。

 ところが、港の照明は消えていて真っ暗。いつもなら、あと20メートル先くらいまで護岸が見えるのですが、足元から遠くまで、真っ黒な水面が続いています。デスクに報告をしましたが、「なんとか撮れ」と怒鳴るばかり。

 そこに、他の新聞社の記者が、私と同じミッションを背負ってやってきました。

「これ、下手したら死ぬな」

 その記者が言いました。あと10メートル先に、船のロープをつなぐ柱が見えます。2人で話し合い、協力することにしました。

 ここで撮れるとすれば、水に浸かっている柱くらい。柱をフラッシュで当てて、その先に続く真っ黒い海面を撮ることにしました。

 海水がスーッと引いたら、私たちは海中に落ちてしまいます。ライフジャケットはありません。

 2人で手を繋いで、1人が写真を撮影している間は、別の1人が近くの物につかまりました。

 その後、写真部のカメラマンが到着。撮影不能と本社に電話を入れると、ミッションは打ち切られました。

もしテレビ記者だったら

 「もしこれがテレビの取材だったら」と、一緒に取材した記者とその後、話し合いました。

 2人でいれば、海中に転落する可能性は低くなるかもしれません。また、デスクに対しても、2人で取材不可能を伝えたら、考え直してもらえたかもしれません。

 一方で、映像命のテレビです。「取材不能だったら、他にどんな映像を撮るか」をすぐに考えて、動き出さなければならないでしょう。

 しかも、新聞は深夜に締め切りがありますが、テレビは定時にニュースがあります。それはそれで大変です。

 15年くらい前だと思います。ある新聞社の男性記者が、豪雨を取材しているときに行方不明になりました。消防の人も川に流され、遺体で見つかったというほどの状況。記憶が間違っていなければ、取材は1人でした。その後も見つかっていません。

 メディアの違いはあるかもしれませんが、命だけは優先して欲しいと思います。

新聞記者

Posted by かく企画